EHP 2005年5月 子どもの健康
公衆の健康と脳の発達に及ぼす
メチル水銀毒性の経済的影響
概要紹介(Abstract)


情報源:Environmental Health Perspectives Volume 113, Number 5, May 2005
Children's Health Article
Public Health and Economic Consequences of Methyl Mercury Toxicity to the Developing Brain
Leonardo Trasande, Philip J. Landrigan and Clyde Schechter
http://ehp.niehs.nih.gov/docs/2005/7743/abstract.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年5月17日


Abstract
 メチル水銀は発達神経毒素である。その暴露は主に人工(70%)と天然(30%)の発生源からの水銀に汚染された魚を妊婦が食することによる。1980年代を通じてアメリカ環境保護局(EPA)は、特に人工発生源からの排出の41%を占める火力発電所からの排出削減に成果を上げていた。しかし、EPAは最近、汚染削減にかかるコストが高いことを理由に排出削減を緩和することを提案した。
 アメリカの火力発電所からの水銀排出規制にかかるコストを視野に入れながら、我々は、これらの発電所からの水銀に帰するメチル水銀の毒性に関わる経済コストを算出した。我々は環境要因細分モデル使用し、分析を神経発達影響−特に知的発達障害に限定した。
 疾病管理予防センターの全国血液水銀データから、毎年、316,588人から637,233人の子どもたちの臍帯血に、知能(IQ)低下に関連するレベルである5.8 μg/L以上の水銀が含まれていることがわかった。
 結果として知能低下は、その子どもの生涯にわたる経済的生産性の損失を引き起こす。この失われた生産性は、メチル水銀の毒性がもたらす主要なコストであり、それは年間、87億ドル(約9,000億円)に達する。このうち、毎年13億ドル(約1,370億円)がアメリカの火力発電所からの水銀排出に帰する。
 この莫大な損失はアメリカの経済的な健康・安全性を脅かすものであり、水銀汚染規制の議論において考慮されるべきである。

Key words: children's health, cognitive development, cord blood, electrical generation facilities, environmentally attributable fraction, fetal exposure, lost economic productivity, mercury, methyl mercury, power plants. Environ Health Perspect 113:590-596 (2005). doi:10.1289/ehp.7743 available via http://dx.doi.org/ [Online 28 February 2005]


化学物質問題市民研究会
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