アメリカ女性の母乳中のポリ臭化ジフェニールエーテル(PBDEs)
情報源:Our Stolen Future New Science 2003-0807
http://www.ourstolenfuture.org/NewScience/oncompounds/PBDE/2003/2003-0807schecteretal.htm
Schecter, A, M Pavuk, O Papke, JJ Ryan, L Birnbaum and R Rosen 2003
Polybrominated diphenyl ethers (PBDEs) in U.S. mothers’ milk
Environmental Health Perspectives doi:10.1289/ehp.6466
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年8月17日



参考資料 The Basics of Polybrominated Diphenyl Ethers (PBDEs)

 シェクターらの報告書によれば、彼らはテキサス州の母親の母乳中に比較的高濃度のポリ臭化ジフェニールエーテル(PBDEs)を検出した。測定された濃度は、アメリカで最近実施された、乳房組織中、及び、妊婦と臍帯血中のPBDEsに関する他の調査と同等のものである。それらはヨーロッパの最近の母乳中のPBDEs濃度と比較すると約100倍高いものもある。

 ヨーロッパに比べてアメリカ女性の母乳中の濃度が高い決定的な理由については、今後の組織的な調査を待たなくてはならないが、それは多分、様々な消費者製品に含まれる臭化難燃剤の使用の違い、特にヨーロッパでは最近、それがPBDEsへの暴露を減少する方向に動いていることと関連していると考えられる。

 アメリカでも最近、政治家がPBDEへの暴露を減少することを考慮し始めているが、2003年8月現在、禁止政策をとっているのはカリフォルニア州 (2003年8月10日付けNYタイムズ紙報道 −カリフォルニア州難燃剤中のPBDEを禁止) だけである。

何をしたか?

 シェクターらは、テキサス州の2カ所(オースチンとダラス)のヘルス・センターで、ボランティアから母乳を入手した。母乳のサンプルはPBDEの濃度を測定するために、世界保健機関(WHO)の2カ所の研究施設、カナダとドイツ、に送られた。47人から合計13種の異なるPBDE類が得られたが、47人の中で職業上で暴露した人はほとんどいなかった。

何がわかったか?

 右の図が示すように、10人の女性(全サンプル数の21%)が100ppbを超えるPBDE濃度であり最高濃度は419ppbであった。15人(32%)が50ppbを超えていた。

 科学者たちは、PBDEの濃度と測定した女性の年齢には何らの関連性も見出さなかったし、人種の違いによるPBDE濃度の差もなかった。

 下の図に示す通り、シェクターらによるテキサスでの調査は、最近ヨーロッパで実施された調査よりも際立って高く、また、最近のカナダのデータよりも幾分高い。カナダの濃度は、最近10年間で急に高くなっていることが分かる。


何を意味するか?

 47人のテキサス女性の調査は、アメリカのPBDE濃度はヨーロッパのそれに比べて10〜100倍高いということを示す科学的証拠の重要な一部をなす。母乳中のPBDEs濃度の測定調査はアメリカでは初めてのことである。

 このような体内のPBDE濃度を高くする暴露の原因はまだ特定されていない。PBDEsは様々な消費者製品で広く使われておリ、多くの場所で食物、屋内のホコリ、下水の汚泥中などで検出されている。スウェーデンの濃度はPBDEsの使用が禁止されたことによって減少しているようである。シェクターらの調査報告が Environmental Health Perspectives の Online 7 August 2003 に掲載されたのと時を同じくして、カリフォルニア州政府はカリフォルニアでのいくつかのPBDEsの使用を禁止する法案に署名した。

 PBDEsの一番の問題は、少なくとも動物実験で示されるように甲状腺機能をかく乱し、それにより脳の正常な発達を阻害することである。PBDEsの人間への影響を検証した疫学的な研究報告はまだ発表されていない。PBDEの体内濃度は劇的に増大しており、一方、我々は人間の神経系行動異常、例えば自閉症、注意欠陥多動症などの増加を目の当たりにしている。このことが同時に起きていることについて、間違いなく調査が必要である。

(訳: 安間 武 /化学物質問題市民研究会)


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る