喫煙が関節をはれ上がらせる
情報源:Environmental Health Perspectives
Volume 110, Number 12, December 2002
Smoking Inflames Joints
http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/2002/110-12/forum.html#smok
掲載日:2002年12月8日



 喫煙が及ぼすリュウマチ様関節炎への影響について長年研究しているデッレック・マッテイは特に女性に対し「喫煙しないように」と忠告している。

 イギリスのストーク・オン・トレントにあるスタッフォードシア・リューマチ・センターの上席科学者であるマッテイは最近の研究で、もし女性が現在は喫煙していなくても過去に喫煙履歴があると、喫煙履歴のない女性に比べて、リュウマチ様関節炎のひどい症状になる可能性がかなり高いとしている。喫煙女性が他の多くの人々と同様、”ある遺伝子”を持ち合わせていない場合には、特にこのことが当てはまる。

 「これは重要な研究である。この研究により喫煙がリュウマチ様関節炎に関与していることが確認された」とアトランタのジョージア関節炎基金の医療部長ジョン・キッペルは述べた。彼は、リュウマチ様関節炎の症状の程度には、ある遺伝が関与しているというマッテイの示唆は、この疾病がどうして起こり、どのように進行するかを理解する上で重要であるとした。

 マッティらは『リューマチと関節炎』誌2002年3月号で、喫煙がこの疾病の症状をひどくする理由は、喫煙とリュウマチ様関節炎とグルタチオン S-トランスフェラーゼM1酵素(GSTM1)との相互関係にあると述べている。この酵素は、例えば、たばこに含まれるような環境毒素を、毒性の弱い親水性の物質に変えて、新陳代謝し体外に排出し易くする働きがある。しかしこの酵素GSTM1は、全ての人々のうち半分しか持ち合わせていない。女性喫煙者に都合が悪いことは、GSTM1遺伝子を持ち合わせていなくてリュウマチ様関節炎にかかると症状が悪化するということである。

 研究者達は、164人のリューマチ様関節炎女性のうち、GSTM1遺伝子を持っている女性を特定するためにオポリメラーゼ (訳注:DNA, RNA 形成の触媒となる酵素)連鎖反応法を使用した。また、リューマチ・ファクター、血中の免疫組織、及びリューマチ様関節炎患者の骨液について彼女等を検査した。リューマチ様関節炎患者の80%はリューマチ・ファクターに対し陽性であり、そのリューマチ・ファクターはその疾病の症状と関連性がみられた。
 GSTM1遺伝子による障害の程度(ラーセン・スコアー)を調べるために放射線検査を、また、日常生活を行う上でどの程度の障害があるかを評価するために健康問診を実施した。

 調査の結果、58.5%の女性がGSTM1遺伝子を持っていなかった。また51.3%の女性が喫煙履歴がなく、29.9%の女性が現在喫煙者であった。GSTM1遺伝子がなく過去に喫煙者であった、あるいは現在喫煙者である女性のリューマチ・ファクターは、GSTM1遺伝子がなく喫煙履歴もない女性のリューマチ・ファクターに比べて、約3倍高かった。
 GSTM1遺伝子がなく喫煙履歴のある患者のラーセン・スコアー及び健康問診スコアーは、GSTM1遺伝子がなく喫煙履歴もない患者のそれらよりも明らかに高かった。

 「喫煙とGSTM1遺伝子の欠如は、リューマチ・ファクターと強い関連性があり、問診と放射線検査結果からも、リューマチ様関節炎の症状が進み、症状も重いということが確認された」とマッテイは述べた。

 しかし研究者達はたばこ中のどの毒素が問題なのか、どのように作用するのかは特定できなかった。彼らは現在、これらについて調査することとしており、また、2次喫煙がリューマチ様関節炎と関係があるかどかについては調査中である。「今回の調査からは、2次喫煙がリューマチ様関節炎の症状の悪化と関係あるかどうかわからない。現在調査中である」とマッテイは述べた。

(訳: 安間 武)


化学物質問題市民研究会
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