ENS 2002年9月6日
EU 塩素製造に使用した水銀の後始末に取り組む
情報源:Environment News Service (ENS)
BRUSSELS, Belgium, September 6, 2002
Europe Faces Up to Chlorine Mercury Legacy
http://ens-news.com/ens/sep2002/2002-09-06-03.asp
掲載日:2002年9月8日



 最近提出された欧州委員会(EC)の報告書は、旧式となった欧州の水銀電極法塩素製造プラントの段階的な閉鎖に伴って出る余剰水銀を安全に処理するために、欧州連合(EU)は3億3千万ユーロの予算を必要とするであろうと警告した。
 閉鎖の時期については議論があるが、最後の装置が閉鎖されるのは”少なくとも10年以内”であると同委員会は述べた。

 昨年、欧州環境協議会(EU Environment Council)は、余剰水銀が市場に出回り、環境問題を引き起こす恐れがあると指摘していた。オランダの環境大臣、ジャン・プロンクの提唱に基づき同協議会は、閉鎖に伴う法律的及びそ他起こり得る結果について、欧州委員会に対し分析するよう要求していた。

 今回、欧州委員会(EC)より出された報告書では、12,000〜15,000トンの余剰水銀処理を行うための3つの選択肢を提示している。すなわち、
 1.余剰水銀の再利用/最終的にEUの域外へ
 2.中間保管
 3.長期的最終保管
である。

 同委員会は、特にどの方法を選択すべきとは示さなかったが、環境の観点からは最終保管が最良の選択であると述べている。

 再利用が最も安く、産業界からも受け入れられやすい。閉鎖したプラントから出る水銀は、まだ操業を続けるプラントに引き継がれる。閉鎖が進んできたら、余剰水銀は世界市場に出されて取引され、厄介な問題はEU域外に送り出される。
 長所としては、新たな水銀を得るための無制限な採鉱を抑えることができるとしている。

 水銀の中間保管はややコストがかかるが、汚染を引き起こさないよう、社会が監視することができる。

 最終保管は持続可能な方法である。欧州連合(EU)における塩素製造関連の水銀が環境に排出することをとめることができ、世界に対し範を垂れ、世界の水銀汚染削減の動きに拍車をかけることができる。

 しかし、EUには現在、保管する収容力がなく、スウェーデンの試算によれば、最終的には水銀1kgあたり15〜22ユーロのコストがかかる。これは10%のコストアップとなり、塩素工業界の試算によれば、水銀電極法プラントからの移行には31億ユーロのコストがかかるとしている。
 この追加コストは、産業界がその移行に反対しているために出てきた金額であろうと、同報告書は述べている。

 法的には、EU参加国は、余剰水銀が廃棄物であるかどうか個々にクラス分けし、廃棄物ならEU及び国際廃棄物輸送制限機構に諮らなくてはならない。これによりプラントが水銀を売却する際の歯止めがかかる。

 同委員会は、水銀をロッテルダム協定の危険物輸出に関する事前協議に含めることを勧告している。

 ヨーロッパ塩素産業会(Eurochlor)のアルシーン・セイズは、同報告書の多くの点について同意すると述べた。水銀を再利用すれば、新たな採鉱による環境破壊を防げるので、それが合理的で合法的な解決方法であり望ましい。使用済み水銀を保管してしまうという処置では、水銀に対する他のどこかで発生する需要を抑制することはできないと述べた。
 現在、水銀電極法プラントにより、EUの約半分の塩素が製造されている。汚染のより少ない技術へ移行することが、欧州統合汚染防止及び監視(IPPC)指令によって1996年から義務づけられており、1990年には、非拘束ながらオスパー(Ospar)勧告が承認されている。

 IPPC法の下に、当局は2007年までに非水銀技術に基づく排出許可を発行しなければならないが、実際には個々の地域の状況を勘案することとなっている。
 ヨーロッパ塩素産業会(Eurochlor)は、このことにより水銀電極法の新しいプラントは2030年頃まで操業することを許されるであろうと述べている。

 一方、環境派はオスパー勧告で合意された2010年までとするよう働きかけている。実際の期限がどうなるかは加盟国が2つの法律文書をどのように解釈するかにかかっている。

(訳: 安間 武)



化学物質問題市民研究会
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