学校の環境汚染で被害を受ける
−学校環境問題に関するカナダのウェブサイトの紹介−


情報源:Environmental Health Perspectives
Volume 110, Number 6, June 2002
Reading, Writing, and Surfing

http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/2002/110-6/forum.html#read
掲載日:2002年6月12日



 毎日、あなたの子どもは、頭が痛い、吐き気がする、咳がでる−といって、学校から帰ってくる。帰宅後、数時間経つと子どもの気分は良くなる。学校の室内空気汚染が疑わしいとすれば、どのようなことに目を向ければよいのであろうか? そしてその原因が見つかったなら、どのように改善すればよいのであろうか?

 このような問題が両親や教師及び学校理事会のメンバーを毎日悩ませている。このような問題に答えるために、カナダの団体である”汚染探針(Pollution Probe)、技術と健康基金(Technology and Health Foundation)、オンタリオ教育安全協会(the Education Safety Association of Ontario )等が共同で対話形式のウェブサイト HealthySchools.com を立ち上げた。

 よく知られている室内汚染物質としてカビ、香水やクリーニングの臭気、合板の机から徐々に揮発する有機成分等があるが、これらがしばしば学校での健康問題の原因となる。

 ”技術と健康基金”の理事長ブルース・スモールは「どのような集団でもその構成要員の少なくとも15%は化学物質過敏症である。このことは学校の生徒や職員にも当てはまる。特に子どもは体重当たりの空気吸い込み量が大人に比べて大きいので、汚染物質による影響は大きい。室内空気汚染は、予算や要員不足のために十分保守されていない空調設備によって、更に悪化する」と述べている。

 HealthySchools.com は学校の環境問題に自ら取り組もうとする教師や両親及びその他の人々のために各種の実用的な情報を提供することを意図して構築された。
 カナダの学校は州の管轄下にあるので、学校の室内環境品質改善のための費用は政府からは一切でない。「学校理事会は問題解決のための建設的な解決策を探さなくてはならない。HealthySchools.com はユーザー自身が解決のためのマニュアルを作り上げることができるようにデザインされている」と”汚染探針(Pollution Probe)”のマネージャーであるサンドラ・シュバルツは述べている。

 このウェブサイトは、特定の学校の事例紹介、アメリカ環境保護局(EPA)の Tools for Schools などへのリンク、室内空気汚染の共通的な項目や塗料の放出特性など幅広い話題を提供するトピック・ページなど、7つの異なる領域に分かれている。特定の事柄を探している人はキーワードによりウェブサイト全体を検索することができる。

 ウェブの構築者たちは、このウェブサイトは小冊子や紙ベースの情報とは違って、室内空気質に関する情報に多くの人々が簡単にアクセスでき、また内容の更新も容易であるとしている。「どのような学校もコンピュータを1台は持っている」とスモールは述べた。このウェブサイトはまた室内空気質に関する情報を統合して提供する場としてデザインされている。「世の中には多くの有用な情報があるので、我々はそれらにも焦点を当てることとした」とスモールは述べた。
 HealthySchools.com はアメリカ環境保護局やニューヨークのヘルシー・スクールネットワークなど多くの関連情報にリンクを張っている。

 HealthySchools.com は公式なガイドラインだけではなく、個人的な体験を生の形で掲載している点でもユニークである。「このサイトは連邦政府の情報から地域の情報まで幅広く掲載している。学校の理事会は、両親が何を考えているのか、子ども達がどのような経験をしているのかについて知ることができる。また”我々が何をなしたか”だけではなく、”何をしていないか”について知ることができることも有益である」とシュバルツは述べた。

 そのような知識があれば、各個人は、学校環境に関しわずかな出費で大きな改善を図ることができる。「低臭気のクリーニングに変えるだけで、一夜にして学校の室内空気を改善することができる」とスモールは述べている。例えば、ある学校では古くなった空調システムを取り替えることはコスト的に難しいので、管理者はわずかなコストで既存の空調システムを自身の手で更新した。

 HealthySchools.com の構築者達は現在も情報の更新を行っており、ウェブへの訪問者が自身の事例や体験を提供してくれることを待ち望んでいる。

(訳: 安間 武)


化学物質問題市民研究会
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