従来考えられていたよりも低レベル
天然及び人工のホルモン関連物質の生殖機能への長期的な影響
さらなる調査が必要(NIEHS)/プレスリリース 01/25/01

FOR RELEASE May 14, 2001 NIEHS PR #01-11
There appear to be effects below the traditional low effect' level:
More Study Recommended on Long-Term Reproductive Effects of
Traces of Both Natural and Man-Made Hormone-Like Chemicals
http://www.niehs.nih.gov/oc/news/ntprepro.htm
掲載日:2001年5月20日



 学会、政府、及び産業界の科学者からなる米専門家委員会は、いくつかのホルモン関連物質が従来のテストでは影響がないとされてい非常に低いレベルであっても、実験動物の身体機能に影響をを及ぼすことを示す確かな証拠があるという結論を出した。

 しかし同専門委は、他の確かな実験においてはそのような低レベルの用量での影響を見い出すことができないないこともあったが、なぜそのような異なった結果が出るのか理由はわからない、と報告した。

 36人の委員からなる同専門委は、“環境ホルモン”あるいは“内分泌攪乱物質”とされる化学物質はもっと詳細な調査と更なる研究が必要であると述べた。エストロゲン(女性ホルモン)やテストステロン(男性ホルモン)などのホルモンは天然にも存在する。一方、化学的に合成されたホルモン様物質は、包装資材やプラスチックなどの生活用品などに含まれるものもあると述べた。

 米環境健康科学研究所(NIEHS)の一機関である国家毒性計画(NTP)は、同専門委に審議を諮問した米環境保護庁(EPA)へ正式に勧告書として出す前に、科学者、産業界、及び消費者による60日間以内のコメントを求める報告書案を発行した。コメントがあっても報告書が変更されることはないが、それらのコメントは報告書に添付される、と専門家委員会を指揮するNIEHSのロナルド・メルニック博士は述べた。

 いくつかの研究で長年にわたり論争のあった事柄なので、政府側及び産業界だけではなく、広く世界中の環境専門家と科学者に対して審議を依頼したとメルニック博士は述べた。

 NIEHSとNTPの会長であるケニス・オールデン博士は、「この種の審議としてはおそらく初めてのことであるが、専門家委員会はほとんど全ての諸研究から生データを入手できた」と述べ、さらに、「ほとんど100%の科学者がこの審議に協力してくれたので、すでに発表されている論文の結論だけに頼るのではなく、生データの統計的な再分析を行うことができた」と述べた。

 同専門委は、安全ヘルメットや衝撃耐性めがねのレンズや食品用容器・包装等、広い範囲の製品に使われているビスフェノールAへの低レベルでの暴露について、さらなる調査が必要との確証を得た。同専門委内の小委員会は、低レベルのビスフェノールAに暴露したいくつかの実験ネズミには前立腺重量が増加したというような身体変化の確かな証拠があったが、他の研究事例では低レベルでの影響は見られなかったので、それらと整合性をとるために、小委員会としては低レベルのビィスフェノールAへの暴露の影響が決定的で再現性があると主張することはできなかったと述べた。

 同専門委は、影響が有害であるかどうかについて十分に吟味するに至らず、また諮問したEPAもそれを求めてはいなかったが、同専門委は、女性ホルモンであるエストロゲンや殺虫剤メトキシクロルなど、他のいくつかの女性ホルモンに低用量で暴露したネズミや他の実験動物に、前立腺重量が増加したり雌の生殖器官が変化することを認めた。

 いわゆる男性ホルモンであるテストストロンやアンドロゲン及び抗アンドロゲン関連の化学物質に対し、5種類の調査が勧告された。これらの化学物質には殺菌剤であるビンクロゾリンなどがあるが、妊娠中のラットが曝露すると、その子孫は雄、雌共に生殖器官に変化が生じる。

 同専門委は、EPAはテストを計画する専門家達の最良の意見を取り入れた後、産業界に対し新製品についてはEPAの承認を得る前にテストを実施させるよう“ガイドライン”を改めるべきであるとした。
 同専門委は、今後追加実施されるべき多世代にわたっての調査において、もし生殖に関する問題が実験動物の子あるいは孫に現れたなら、異なった曝露の用量範囲を使用してもかまわないと述べた。
 同専門委はさらにEPAに対し、そのようなテストにおいては、実験動物の種類と年齢(月齢)に留意すべきとした。

 現状の規制では、調査は3又は4つのレベルで実施し、各レベルの用量は他のレベルよりも2〜4倍低い値とすることになっている。実験動物に影響が出ない最大の用量を以て“影響なし”としていた。しかし、同専門委はその用量よりもっと低い値でも影響がでることを示す生データがあるので、従来の調査方法は再考する必要があるとしている。

 NTP報告書の全文は下記ウェブサイトで入手可能である。
http://ntp-server.niehs.nih.gov/htdocs/liason/LowDosePeerFinalRpt.pdf

 NIEHSは国立健康研究所(National Institutes of Health)の一つであり、NIEHSとNTPはアメリカ厚生省(U.S. Department of Health and Human Services)の一部門である。

(訳:安間 武)



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る