ENS 2001年3月5日 妊娠適齢女性の10人に1人が危険なレベルで水銀に汚染
情報源:Environment News Service (ENS)
WASHINGTON, DC, March 5, 2001
Mercury Poses Risk to One in 10 U.S. Pregnancies
http://ens-news.com/ens/mar2001/2001L-03-05-06.html
掲載日:2001年3月7日

 アメリカでは、妊娠適齢女性の10人に1人が子宮内の水銀汚染のために神経系に障害を持つ新生児を出産する危険性があることが先週発表された政府の研究によりわかった。

 「このアメリカ疾病管理予防センター(CDC)の研究報告によれば、アメリカで毎年生まれる375,000人の赤ちゃんが、母胎内で水銀に曝されたことにより、神経系に障害を持つ恐れがあることになる。少なくともアメリカの妊娠適齢女性の10%の体内に、アメリカ環境保護局(EPA)が安全であるとしているレベルを超えた水銀が蓄積しており、その女性の数は約600万人に達することになる」と“水銀政策プロジェクト”の専務理事であるミカエル・ベンダーは語った。
 この研究報告は“罹患率と死亡率週報(Morbidity and Mortality Weekly)”2001年3月2日号に掲載された。

 「この新しい研究は、今まで考えられていたよりもはるかに多くの女性がメチル水銀に曝されている危険性があることを示している。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、直ちに市場の水産物の水銀汚染を検査し、安全でない魚類は市場から取り除くよう緊急の措置を取るべきである」と公益法人科学センター食品安全部長、キャロライン・スミス・ダワールは述べた。

 水銀は、火力発電所や廃棄物焼却場、産業装置などから大気汚染物として大気に放出される。そして大気から海や湖、川に広がり、魚を通じて人間や野生動物の体内に取り込まれる。

 「高濃度の水銀汚染は、通常の人よりもかなり多くの魚を食べる人々に限られるのもであると、従来は考えられていた。これらの新しい研究により、水銀汚染はもっと広範囲にわたっており、魚を大量に食べる人々に限ったことではないということが分かってきた」とアメリカ野生生物連合の5大湖天然資源センター水質管理プロジェクト マネジャーであるアンディー・ブークスバウムは述べた。

 水銀の大気放出による水質汚染のために、40の州の公衆衛生当局は、人々、特に妊娠適齢女性と幼い子どもは水銀に汚染された魚類を食べることを制限するか、やめるよう警告している。1月中旬に、アメリカ食品医薬品局(FDA)は消費者への新しいガイダンスを発行し、妊娠中の女性はサメ、メカジキ、サバ、タイルフィッシュ(深海の食用魚)の様な魚類を食べないよう警告した。
 しかし、一般会計検査院はその1ヶ月後に、FDAの管理は十分でないと批判した報告書を出した。
 FDAは、魚類や他の海産物から検出される水銀であるメチル水銀の自主規制値を1ppmと設定した。この自主規制値には法的な強制力はなく、従ってFDAはその検査を実施しておらず、強制力をもって海産物に適用しようとすることもなかった。

 コンシューマー・リポート誌は先月、同誌独自の検査の結果、サンプルのメカジキの半数がFDAの自主規制値を超えていたと報告している。

 バーモント、ニュージャージー、ミネソタ、コネチカット、メーン、そしてつい最近加わったニューハンプッシャーの6州もまた、妊娠中の女性は缶詰のマグロを週に1〜2缶以上は食べないよう警告している。
 「この研究結果は、女性の体内の水銀濃度は、これから生まれてくる赤ちゃん達にとって安全な値をはるかに超えているということを示している。我々は、我々自身のためにも、また子ども達のためにも、このように警告を発している水銀汚染を抑制するよう、行動を起こさなくてはならない」と環境団体シエラ クラブ(Sierra Club)中西部事務所のエリック・ユーラムは述べた。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の報告書は下記にて入手可能です。
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5008a2.htm

さらに詳細については水銀政策プロジェクト(Mercury Policy Project)のウェブサイト:
http://www.mercurypolicy.org
アメリカ野生生物連合(National Wildlife Federation)のウェブサイト:
http://www.nwf.org を参照下さい。

(訳:安間 武)

化学物質問題市民研究会
トップページに戻る