子ども達の健康に関する会議報告書
子ども達の健康に対する環境汚染の脅威:アジアの展望

著者:David O. Carpenter 他
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 108, Number 10, October 2000
(NIEHS 月刊誌「環境健康展望」2000年10月号)
Children's Health: Meeting Report
Environmental Threats to the Health of Children : The Asian Perspective
http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/2000/108p989-992carpenter/carpenter-full.html#sum
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2000年9月22日

1.はじめに
2.アジアで子ども達はどのように環境汚染に曝されているか
3.アジアで環境汚染が引き起こす疾病
4.リスク評価とリスク・コミュニケーションの問題
5.まとめ

1.はじめに

 アジアには、世界の他の地域と同様に、環境汚染が引き起こす子どもの健康に対する深刻で重大な問題がある。2000年4月9日〜11日にフィリピンのマニラで、アジア太平洋地域の子ども達の健康に対する環境汚染の脅威についての年2回の会議の第1回目が開催され、15カ国から120人以上が出席した。
 この会議の目指すところは、子ども達の健康に影響を与える環境について西太平洋沿岸各国が持つ固有の問題点を明らかにし、環境の悪化に対し子ども達が影響を受けやすいということを広く知らせることにあった。公開討論を通じて、この地域の各国政府が独自に取り組んでいる子ども達の健康に対する環境汚染の脅威への対策についてお互いが理解し、この問題に対する各国の連携を促進することができた。

 アジアにおいても世界の他の地域と同様に、環境の良し悪しが子ども達の健康に対する重要な決定要因となる。貧しい子ども達、特に最貧国の貧しい子ども達が最も環境汚染のリスクに曝されている。貧しい子ども達は最も被害を受けやすく、社会の底辺に放置されている。劣悪な環境は、社会的な圧迫と栄養不良とともに、子ども達の正常な発達とって越えがたい障害となっている。劣悪な環境によって最も影響を受けているのは5歳以下の子ども達である。安全な飲み水と汚染されていない食物が不足しているということが特に深刻である。子ども達は伝染性病原体や汚染物質に曝されることにより免疫が低下して、重い下痢や伝染病に苦しみ、やがて死んでいく。

 健康不良の元凶が貧困にあるということは世界中どこにおいても明らかである。貧しい人々は汚染のない水や食糧を得ることが出来ず、予防注射やきちんとした健康管理を受けることが出来ず、病気にならないために必要な知識を得ることも出来ないからである。
 この会議で最も強く印象付けられたことの一つは、カンボジアからの参加者によるビデオ上映であった。プノンペンのゴミ捨て場で食べ物や、その他売って食べ物を得ることが出来るものを捜す子ども達の姿が映しだされた。写真-1、2はそのビデオの1コマである。この少女のように子ども達は1日中、悪臭を放つゴミの中を探し回っている。家のない子ども達はゴミの山の上に古い布やテントの切れ端を4本のポールで支えて作った囲いの中で寝泊まりしている(写真-2)。


写真-1
プノンペンのゴミ捨て場で
食物や売れるものを捜す少女


写真-2
プノンペンのゴミ捨て場の
ゴミの山の頂上に作られた
子ども達の”家”

 これらの子ども達は汚染された水や食べ物に曝されているだけでなく、ゴミの山に生息するネズミや他の有害生物から感染する病気は言うに及ばず、病原体を媒介する蚊に刺されてマラリヤやデング熱に冒される被害も受けやすい。
 かつて大量虐殺の行われたカンボジアでは、多くの家のないストリート・チルドレンがいる。アジア各国の主要都市のゴミ捨て場でも、同じような痛ましい光景が見うけられる。

 カンボジアからの参加者は、子ども達の性的搾取−通常外国人への児童売春から実際の人身売買に至るまで−について語ってくれた。奇形が物乞いとして効果があると信じている大人達によって奇形をもたらす薬を飲まされている子ども達もいる。

 アジアでは、特に開発の進んでいない国々では、子ども達が劣悪な環境に曝される原因となるような問題がたくさんある。例えば、劣悪な環境に曝されることによる危険性についての教育、対策、理解が特に欠けている。各国には環境保護の法律があるが、実際には十分に実施されていない。
 政府の担当官は、人材や設備の不足、指示の不徹底等により、しばしば無力感に陥る。環境汚染物質への曝露基準の多くは西欧からそのまま移入されたもので、簡単に無視される。また、働く者の中には環境汚染に曝されることは自分たちの宿命であり、仕方がないこととして受け入れる態度を示す者もいる。

 環境上危険な職場、例えば塗料/顔料工場等での作業における児童労働が特にインドで、しかし他の多くの国々でも、しばしば問題となる。さらにアジアには家族が父親の職場(作業場)に一緒に住み込むという習慣があり、これにより子ども達も父親の職場の劣悪な環境に曝される。
 しばしば農薬の使用が不適切で、表示ラベルさえないことがある。役所同士が協力をせず、いがみ合っている。西欧諸国では受け入れられないようなリスクが許されることがしばしばある。特に生産現場における環境被害が顕著である。例えば溶接工は防護眼鏡を持たず、産業排水は子ども達が水浴びをする川に直接放流される。


2.アジアで子ども達はどのように環境汚染に曝されているか

 飲料水の汚染は先進国においてさえも時には主要な環境衛生の問題となることがある。しかし、アジアの多くの国を含む発展途上国では、これは国民の健康に関する重大な問題である。これらの発展途上国では、伝染性の病原体によって汚染された飲料水により下痢を起こし、毎年400万の幼児や子ども達が死亡している(1)。子ども達は汚染された飲料水を飲んで伝染病や寄生虫や下痢に悩まされるが、医療看護がしばしば十分でないために、子ども達は死んでいく。飲料水の汚染はこれらの国々の首都でも問題であるが、水処理設備もない地方では特に深刻である。多くの地域では汚水が、飲料水や洗濯に使われる河川に直接排出されている。

 バングラディシュでは地下水が天然の砒素によって汚染されている。何年か前に国連の機関が、安全な飲料水を供給できるようにと苦労して、多くの深い井戸を掘った。当時、バングラディシュでは主に地表の水が飲料用に使用されていた。これらは砒素は含んていないが伝染性の病原体によって汚染されており、下痢や伝染病の原因となっていた。不幸なことに、井戸水が砒素(発癌性がある)を含んでいるかどうかのテストは行われなかった(2-4)。後に、全部ではないが、多くの井戸には非常に高濃度の砒素が含まれていることが分かった。その結果、2,500万人の人々が癌の危険に曝され、90万人が皮膚癌にかかったと考えられている。砒素への曝露は今日に至るまで続いている。
 規模はこれほど大きくはないが同様なことが中国やチリの一部でも起こっている(5)。
 砒素は有毒であり、体内のケラチン組織(皮膚、爪、髪の毛)に蓄積し、皮膚に多くのひび割れができる過角化症を引き起こす(4)。子ども達だけに限られたことではないが、飲料水中の砒素の問題は世界中の多くの地域で深刻なものとなっており、子ども達が砒素に曝されると、成人してから癌に罹る危険性がある。

 鉱山の廃水が入江や小川や湖にしみ出すことによる汚染もある。フィリピンのある鉱山では400億トンの鉱山廃水を海に放流していた。これにより100マイル(訳者注:約160km)沖合の魚の水銀濃度が高くなった。そのような行為はしばしば取締りもなく行われ、当局が住民に魚を食べないよう警告しても、耳をかたむけないことが多い。時には魚の水銀やカドミウムや鉛の濃度が規制値の4〜30倍も高いことがあるが、これらの魚は食用として市場で売られている。

 アジアの多くの国々で子ども達は、農薬、溶剤、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)、ダイオキシンなど多くの有機化合物にひどく曝されている。インドネシアでは、DDTは公式には数年前に使用が禁止されたにもかかわらず、実際には現在でも農業で使用されていると伝えられている。危険で残留性のある多くの農薬が、しばしば不法に使用され続けている。

 カンボジアにおける調査によれば、シエム・リープ村の6才〜12才の子ども達の23%が農薬による間接的な曝露によって皮膚障害に悩まされているが、これは生活の場や遊び場、及び子ども達が農作業をする畑や水田での曝露によるものである。

 一般にアジアではPCBへの曝露についての調査がほとんどないが、これはPCBの分析測定のコストが高いことが主な原因である。米軍基地の跡地や、食用油がPCBによって汚染されたことにより引き起こされた日本や台湾の油症事件(Yushu and Yu Chem poisonings)でPCBが検出された事例がある。PCBによる汚染が広範囲にわたっていることは疑いの余地がなく、今後の調査が必要である。
 ダイオキシン類への曝露もまた、詳細に調査されていないが、裏庭のドラム缶や市のゴミ捨て場等、いたる所でプラスチックが焼却されているので、曝露は深刻であると思われる。


3.アジアで環境汚染が引き起こす疾病

 ベトナムでは、ベトナム戦争中の1960年代後半から1970年代の初めにかけて、当時の南ベトナムの広大な範囲にオレンジ剤が散布された結果、非常に大きな問題が発生している。ベトナム戦争中に、約1,900万ガロン(訳者注:約7,200万リットル)のオレンジ剤が散布された。アルオイ谷には549,274ガロン(訳者注:約200万リットル)のオレンジ剤が33,000人の居住区域に散布され、1%の人々は体に直接オレンジ剤を浴びた。
 ハンと仲間の研究者達は先天的欠損症と生殖障害に関し、オレンジ剤が大量に散布された3カ所の居住地域(ドンソン、ホンスオン、フオンラム)とオレンジ剤の散布がほとんどなかった1カ所の居住地域(ホンバン)とを比較した調査結果を報告した(6) 。
 最もひどい汚染を受けたドンソン村はアソ軍用飛行場の近くにあるが、そこでは明らかに先天性欠損症の発生率が増大している。散布前には2.3%であった発生率が散布後の数年間は6.5%に増加した。最も高い発生率を示したのは1968年と1969年であった。父親の被曝がこれらの先天性欠損症の要因のようである。北ベトナムの元兵士の子どもについての調査によれば、ひどい被曝を受けた元兵士の子どもの5%が先天性欠損症であるが、戦争中は北ベトナムにいたために被曝の少なかった元兵士の子どもについては、わずか1%の発生率であった。

 表-1及び表-2は大量にオレンジ剤が散布された3つの村の、散布の前及び後の長期間にわたる生殖障害と先天的欠損症の発生数をそれぞれ示している。オレンジ剤散布後には、死産、流産、奇胎、絨毛癌を含む生殖障害が大きく増加しており、1966年〜1967年にピークに達している。散布前の10年間(1955-1964) は生殖障害の発生率は11.9%であるが、散布後の10年間(1965-1974)の発生率は27%となっている(6)。
 先天性欠損症発生のピークは、生殖障害発生のピークより幾分遅れて1967年〜1968年である。

表-1 オレンジ剤散布の前後35年間(1930-1964)/(1965-1999)と
同前後10年間(1955-1964)/(1965-1974)のベトナムの3つの村の
妊娠および正常出産と生殖障害の発生
  1930-1964 1965-1999 1955-1964 1965-1974
妊娠数 396 5,747 253 803
正常出産数 348 4,800 226 631
生殖障害数 47 917 27 171
生殖障害と
正常出産の比
13.5% 19.1% 11.9%% 27.0%

表-2 オレンジ剤散布の前後35年間(1930-1964)/(1965-1999)と
同前後10年間(1955-1964)/(1965-1974)のベトナムの3つの村の
正常出生と先天性欠損症の出生
  1930-1964 1965-1999 1955-1964 1965-1974
正常出生数 1,423 4,310 473 610
先天性欠損症出生数 33 283 10 31
先天性欠損症出生と
正常出生の比
2.3% 6.5% 2.1% 5.0%


 鉛、水銀、PCB、農薬等、神経への毒物の影響は簡単には定量化出来ないが、これらへの曝露はアジア地域の多くの国々の子ども達の健康に対する非常に大きな脅威となっている。これらの曝露は、知能指数(IQ)の低下や注意力の欠如等に関連しているが、通常は症状が目に見える病気を直ぐに引き起こす様なレベルではないので、社会はなかなか関心を示さない(7)。それにもかかわらず、社会集団における多くの個人の知能指数の低下は、それが例え1人当たり5ポイントの低下であったとしても、集団全体としては莫大な影響があり、その集団の生産性や競争力を低下させる。
 鉛や水銀の汚染濃度が高まり、農薬やPCBやダイオキシンの汚染が広まっているが、その全体の影響は個々の汚染物質の影響の加算的または相乗的なものであろう。

 フィリピンでは大気汚染が子ども達の健康に対する主要な問題となっている。大気汚染の問題は屋内のタバコの煙によるものと屋外での交通によるもの(60%)及び工場によるもの(40%)とがある。クリーン・エアー法がつい最近、フィリピンで制定されたが、それによれば、加鉛ガソリンの使用は2001年の初頭までに全廃される。
 しかし、子ども達の体内鉛濃度は高く、それはガソリン中の鉛だけではなく、広い範囲にある鉱山での採掘現場や鉛電池再生工場からの鉛汚染によるものである。新生児でさえ、しばしば10 g/dL以上の鉛濃度のことがある。水銀、カドミウム、銅による被害もまた大きな問題である。
 市街地の大気汚染は、シンガポール(8,9)、香港、台湾、ウランバートル(10)等の大都市で大きな問題となっている。

 喘息は、アジア地域の全ての国で増加しているが、特にアジアの先進国において、子ども達の健康を脅かしている。アジア各国における喘息の分布はアメリカで見られる分布とは幾分異なっている。アメリカにおける喘息の発生率は特に都市スラムの貧困層で高いが、アジアにおける喘息の発生率は日本やオーストラリアのような豊かな国において高く、貧しさよりも豊かさに関連している。富める国シンガポールでは5人に1人の子どもが喘息である(12)。他の5人に1人の子どもも喘息の兆候があるが、公式には病気と診断されていない(13)。世界では8.4%の子ども達が喘息に罹っている。

 喘息の研究における現在の主要な課題は、喘息発作の引き金となる大気汚染とアレルゲン(訳者注:アレルギーを起こす物質)が、喘息の原因となる気管支の過剰反応を促進する要因となるかどうかということである。
 ”小児期の喘息とアレルギーに関する国際調査(International Study of Asthma and Allergies in Childhood)による研究によれば、国民総生産(GNP)とその国の喘息発生率は直接的な関係がある。
 リスク要因の特性としては、伝染性がないこと、種類が少ないこと、免疫性があること、食事での脂肪酸の摂取、新生児の身長/頭囲の比、等がある。アレルゲンと大気汚染が喘息の罹患率と死亡率に関係しているということを強く示す証拠はあるが、それらが喘息の原因であるという明確な証拠はない(10)。ウィルス、刺激物、アレルゲン等の喘息誘導物質の取り込まれるタイミングが重要な要因かもしれないが、いったん取り込まれた後には、これらの要因が発作の引き金となる。

 環境中の様々な物質(鉛、水銀、ニッケル、ディーゼル排ガス中の微粒子、タバコの煙、ダイオキシン、PCB、農薬等)が免疫系に異常をきたし、その結果、子どもの病気を引き起こす重要な役割を果たしている。免疫性が低下すると伝染病の発生が促進されるが、逆に免疫性が異常に高まると過敏症や自己免疫症になる。子どもの伝染病は通常、環境に関連する病気とは見なされないが、実は、免疫機能を低下させる環境要因に、しばしば直接的に関係している。


4.リスク評価とリスク・コミュニケーションの問題

 多くのアジア諸国において、適切なリスク・コミュニケーションにとって障害となることとして、専門家の不足、資金が十分にないこと、ばらばらな国の組織、政治的信頼性の問題、そして何よりも、問題を平易な言葉で皆に伝える能力の欠如が挙げられる。しかし、”電子世代”はリスク・コミュニケーションとして新しい機会を提供している。科学者は正確で理解しやすい情報を公開し、ジャーナリストは科学的な情報を理解するために必要な知識を身に付けることが重要である。
 効果的なリスク・コミュニケーション技術は自然に備わるものではなく、知識や準備、訓練、実践によって得られるものである。
 地域社会が関わっている場合には、地域住民との信頼関係が非常に重要である。地域社会の既存の組織を受け入れることも必要である。被害を受けた住民達の話をよく聞き、彼らの感情と気持ちをくみ取ること、そして、例えば教会区のような地域の組織がリスク・コミュニケーションに重要な役割を果たしているということを認めることが重要である。

 アジアだけでなく、世界中で行われている従来のリスク評価には問題がある。従来のリスク評価では、もっぱら、健康で若い成人男性を対象としており、子どもや他の特定の世代については考慮が払われていなかった。
 従来のリスク評価ではほとんど常に、単一の化学物質に対する曝露を取り扱っていたが、子ども達は単一の化学物質に曝されるというようなことはない。複数の化学物質に対する曝露には、少なくとも加算的なリスクがあり、さらに2つあるいはそれ以上の化学物質によって加算的リスクより大きくなる相乗的リスクが生じるという、いくつかの証拠もある。

 今日使用されている化学物質の半分も、その毒性についてのテストが行われていない。さらに、子どもや発達組織に対する毒性テストが実施されたものはさらに少ない。いくつかの理由により、毒性学だけではリスク評価を行う上で十分ではない。毒性学だけでは子宮内の曝露について適切に評価できない、生物種間での推定を正確に行うことができない、発達の各段階での影響を理解することができない、そし適切なモデルを持ち合わせていない。
 曝露がそのまま放置されることはほとんどないので、疫学だけでもやはり十分ではない。
 曝露に対する評価は、特に子ども達に対してうまく機能しない。それはしばしば多くの異なった種類の化学物質に対する低レベルの曝露であり、発達にともなって様々な曝露を受けるからである。
 これら全ての問題に対処するために、リスク評価を行う上で、データに関する提供と分析と所有を分かち合い、分野を越えて協調することが必要である。

 我々が子ども達の環境汚染物質への曝露を減らすことができるならば、子ども達の健康に対するリスクを減らすことが出来る。しかし、このことに精力を傾ければ傾けるほど、社会や産業界や医療介護や政府の規制や政治家達の中に存在する問題点が見えてくる。


5.まとめ

 まとめとして言えることは、子ども達の環境への曝露についての地域及び世界に関する整理された多くのデータを入手し、これらの曝露と疾病との関係を明確にする必要があるということである。
 環境汚染物質への曝露と子ども達の病気との関係を理解するために、地球規模の戦略的な疫学調査を行うことは非常に有意義なことである。これを実現するために、環境改善のための推進から健康への影響まで、環境に関するあらゆる角度からの考慮が必要であり、これによって子ども達の環境に関わる健康が改善される。

 最後に、より良い予防方法を開発するためには、栄養学、伝染病、環境汚染物質への曝露、及び遺伝的な疾病素因に関するメカニズムと相互作用について、より理解を深めなければならない。西太平洋岸地域の子ども達の健康に環境が与える脅威は、他の世界の子ども達への脅威と異なるものではないが、この地域固有の状況として 取り組むべき特定の課題についても忘れてはならない。

 ハノイ公衆衛生大学のレ・フン・ラム教授が次のような閉会の挨拶を行い、出席者に深い感動を与えた。
 「我々は今日、ここでしたように、今後も一緒に集い、我々の知識、経験、そしてお互いの支援を共有し合わなければなならい。この会議は、21世紀の新しい展望を指し示すことにより子ども達の健康に対する我々の責任を全うするよう、各国政府、市民社会、プライベート・セクター、そして全ての国際的な科学者団体に呼びかけるものである。新しい展望、それは全ての子ども達が健康な生活と汚染のない環境を手にすることである」

(訳:安間 武)



報告者
David O. Carpenter,1
Fook Tim Chew,2
Terri Damstra,3
Le Hung Lam,4
Philip J. Landrigan,5
Irma Makalinao,6
Genandrialine L. Peralta,7
William A. Suk,8
  1. School of Public Health, University at Albany, Rensselaer, New York, USA
  2. Faculty of Medicine, Department of Pediatrics, National University of Singapore, Singapore, Republic of Singapore
  3. WHO-IPCS/IRRU, National Institute of Environmental Health Sciences, Research Triangle Park, North Carolina, USA
  4. Hanoi School of Public Health, Hanoi, Vietnam
  5. Center for Childrens' Health and the Environment, Department of Community and Preventive Medicine, Mt. Sinai School ofMedicine, New York, New York, USA
  6. National Poison Controls and Information Service, Philippine General Hospital, University of the Philippines College of Medicine, Manila, Republic of the Philippines
  7. Environmental Engineering, National Engineering Center, University of the Philippines, Quezon City, Republic of the Philippines
  8. Division of Extramural Research and Training, Office of Program Development, National Institute of Environmental Health Sciences, Research Triangle Park, North Carolina, USA

References and Notes

  1. WHO. The World Health Report 1995. Bridging the Gaps. Geneva:World Health Organization, 1995.
  2. Chen CJ, Chiang YC, Lin TM, Wen HY. Malignant neoplasms among residents of a Blackfoot disease-endemic area in Taiwan. Cancer Res 45:5895-5899 (1985).
  3. Smith AH, Hopenhayn-Rich C, Bates MN, Goeden HM, Hertz-Picciotto I, Duggan HM, Wood R, Kosnett MJ, Smith MT. Cancer risks from arsenic in drinking water. Environ Health Perspect 97:259-267 (1992).
  4. Chan PC, Huff J. Arsenic carcinogenesis in animals and in humans: mechanistic, experimental and epidemiological evidence. Environ Carcinog Ecotoxicol Rev C15:83-122 (1997).
  5. Abernathy CO, Liu Y-P, Longfellow D, Aposhian HV, Beck B, Fowler B, Goyer R, Menzer R, Rossman T, Thompson C, Waalkes M. Arsenic: health effects, mechanisms of actions, and research issues. Environ Health Perspect 107:593-597 (1999) .
  6. Hung TM, Cau HD, Dung PR. Preliminary Result of Study on the Effects of Herbicides and Defoliant on Environment and Human Health Status of People Living in Aluoi Valley, Vietnam. Hanoi:National Committee for Investigation of the Chemicals Use during the Vietnam War (10-80 Committee), 2000.
  7. Rogan WJ. Environmental poisoning of children-lessons from the past. Environ Health Perspect 103(suppl 6):19-23 (1995).
  8. Chew FT, Ooi BC, Hui JKS, Saharom R, Goh DYT, Lee BW. Singapore's haze and acute asthma in children. Lancet 346:1427 (1995).
  9. Chew FT, Goh DYT, Ooi BC, Saharom R, Hui JKS, Lee BW. Association between ambient air pollution levels with acute asthma exacerbation among children in Singapore. Allergy 54:320-329 (1999).
  10. Guo YL, Lin Y-C, Sung F-C, Huang S-L, Ko Y-C, Lai J-S, Su H-J, Shaw C-K, Lin R-S, Dockery DW. Climate, traffic-related air pollutants,and asthma prevalence in middle-school children in Taiwan. Environ Health Perspect 107: 1001-1006 (1999).
  11. White MC, Etzel RA, Wilcox WD, Llogy C. Exacerbations of childhood asthma and ozone pollution in Atlanta. Environ Res 65:56-68 (1994).
  12. Goh DYT, Chew FT, Quek SC, Lee BW. Prevalence and severity of asthma, rhinitis and eczema in Singapore schoolchildren. Arch Dis Child 74:131-135 (1996).
  13. Chew FT, Goh DYT, Lee BW. Under-recognition of childhood asthma in Singapore: evidence from a questionnaire survey. Ann Trop Paediatr 19:83-91 (1999).

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