2012年8月14日 パブリックコメント
「SAICM国内実施計画(案)に対する意見」

掲載:化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載日:2012年8月14日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/iken/2012/120814_public_comment_SAICM_NIP.html

参考資料:
平成24年7月17日「SAICM国内実施計画(案)」に対する意見の募集について(お知らせ)
SAICM国内実施計画(案)

環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課 御中

件名:「SAICM国内実施計画(案)に対する意見」
氏名:化学物質問題市民研究会 担当者:安間武
住所及び郵便番号:〒136-0071
東京都江東区亀戸 7-10-1 Z ビル 4階
電話番号:03-5836-4358
FAX番号:03-5836-4358


意見1:実施項目毎の達成数値目標、達成期限、達成の検証方法
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
1.基本的考え方(1)目標@WSSD2020 年目標の達成 (19ページ)
<意見>
”具体的な施策”は、漫然とだらだら記述するのではなく、明確に実施項目をリスト化し、各項目毎に達成数値目標、達成期限、達成の検証方法が明記されなくてはならない。これら数値目標、期限、検証方法が示されていないものは”計画”とは呼ばない。2006年にSAICMが採択されてから6年以上経過しているのに、日本では国内実施計画ができていない。達成数値目標、達成期限、達成の検証方法が示された具体的な国内実施計画を作成し、パブリックコメントにかけるべきである。


意見2:最小化の定義と検証方法
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
1.基本的考え方(1)目標@WSSD2020 年目標の達成 (19ページ)
<意見>
くり返し引用されている「予防的取組方法に留意しつつ、・・・化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す」に関し、全体的にも、具体的な個別の施策にも、「最小化」の定義、なぜその施策が「最小」であるといえるのかが記述されていない。全ての実施項目について、上記の意見1「実施項目毎の達成数値目標、達成期限、達成の検証方法」で述べた数値目標、期限、検証方法に加えて、それぞれの実施項目における「最小化」の定義、その施策が「最小」であることの根拠を記述すべきである。


意見3:総合的な化学物質安全管理/規制の法体系構築
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
1.基本的考え方(1)目標
A「包括的な化学物質対策」の確立と推進(19ページ)
2.具体的な取組事項(20ページ)
<意見>
省庁毎の縦割り行政に基づく個別の化学物質管理を見直し、産業用化学物質、農薬及び消費者製品を含む総合的な化学物質安全管理/規制が行なえる法体系の構築を早急に行なうべきである。そのために、現状の個別の化学物質管理を見直し、総合的な化学物質安全管理/規制が行なえる組織と法体系を構築することを「2.具体的な取組事」(20ページ)の筆頭項目として追加すべきである。化学物質安全管理/規制は、化学産業を推進する省庁から独立した高い透明性を持つ組織が実施すべきである。


意見4:既存の法の見直し
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
2.具体的な取組事項 (1)科学的なリスク評価の推進(21ページ)
<意見>
化学物質審査規制法、農薬取締法、労働安全衛生法など、既存の法について、その法に基づくリスク評価が”著しい悪影響を最小化”とすることになるのかどうか、見直しを行なうべきである。もし”最小化”にすると言い切れるなら、その根拠を示すべきである。悪影響をもっと小さくする代案があるならそれを示し、早急に法改正を行なうべきである。


意見5:化学物質過敏症に対応するリスク評価
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
2.具体的な取組事項 (1)科学的なリスク評価の推進(21ページ)
<意見>
非常に低レベルの化学物質への曝露で身体的に反応して苦しむ化学物質過敏症が大勢いる。このような化学物質過敏症対応のリスク評価について記述すべきである。


意見6:化学物質過敏症に対応する法体系の確立
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
2.具体的な取組事項 (2)ライフサイクル全体のリスクの削減(22ページ)
<意見>
わが国の化学物質過敏症に対応する現状の化学物質管理行政は、大づかみには、農水省(農薬)、国交省(建物)、厚労省(屋内環境、労働環境、家庭用品)、環境省(屋外環境)、文科省(学校)によるバラバラの縦割行政であり、その悪弊が長年指摘されているにもかかわらず、一向に改善されていない。
上述「意見3:総合的な化学物質安全管理/規制の法体系構築」の一環として、総合的な化学物質過敏症の法体系を早急に確立する具体的計画を明記すべきである。


意見7:微量な化学物質による健康影響の懸念
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
2.具体的な取組事項 (3)未解明の問題への対応(25ページ)
<意見>
化学物質過敏症については、病名登録が2009年にすでになされており、多数の患者の存在が明らかになっている。知見の収集・整理、調査研究は続けていただきたいが、その段階は既に過ぎている。患者への対応が何も無いに等しい、この間の行政の不作為を反省すべきである。患者の実態全国調査と診断・治療体制の確立に早急に取り組むべきである。


意見8:家庭用品の規制
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
2.具体的な取組事項 (4)安全・安心の一層の増進(26ページ)
<意見>
家庭用品に関する事故情報は、重大事故だけではなく、幅広く情報を収集して公表すべきである。また、再発防止のための措置を業界に任せるのではなく、行政として的確に、厳しく講じるべきである。有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律で定められている物質数は20物質とあまりにも少なくて、機能しているとは言えない。見直すべきである。


意見9:室内濃度指針値
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
2.具体的な取組事項(6)今後検討すべき課題(27ページ)
<意見>
室内濃度指針として13指針値が決められた時は、引き続き検討が行われることになっていたにもかかわらず、その後まったく手が付けられないまま今日に到っている、全くの怠慢である。ドイツの例に見習い、50物質を目標に早急に制定すべきである。


意見10:農薬等が生態系へ与える影響及びバイオサイド
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
2.具体的な取組事項(6)今後検討すべき課題(27ページ)
<意見>
農薬が使用者に与える影響については不十分ながら考慮されているが、使用者以外の周りの住民等への影響についてはまったく考慮されていない。その結果、農地に隣接する住宅地での農薬散布による被害が深刻となっている。現在、通知があるが、通知ではまったく実効力に欠けているのが現状であり、法的に規制すべきである。 生態系への影響についても必要だが、それ以前に人間への影響についてまず考慮すべきである。早急に取り組まれたい。


意見11:ナノ製品の管理について
<該当箇所>
第3章 具体的な施策の展開 ― 国内実施計画の戦略
2.具体的な取組事項 (3)未解明の問題への対応 ナノ材料(25ページ)
<意見>
安全性が確認されていないにもかかわらず、ナノ材料及びナノ関連製品を市場に出すことが許されている。これは、安全性の確認されていない化学物質が数万種も市場に出て、REACHをはじめとする世界の化学物質政策に大きな影響を与えた在来化学物質の状況の再来である。
「予防的取組方法に留意しつつ、・・・人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産される・・・」ためには、下記が実施されなくてはならない。

(a)安全性の確認されていないナノ材料及びナノ関連製品は市場に出すことを許さない。
(b)市場に出す場合には、安全性に関わる”所定”のデータを提出する。
(c)安全性に関わるデータなしに既に市場に出ているものについては、所定の期限までにデータを提出させる。
(d)所定の期限までに提出のないもの、又は安全性に問題があることが判明したものは、直ちに市場から回収する。
(e)ナノ材料を使用する製品にはその旨表示させ、消費者に情報に基づく購入の選択ができるようにする。
(f)上記の(a)〜(e)項を包含する総合的なナノ物質管理体系の構築を国内実施計画の中で示すべきである。


意見12:ナノEHS政策の策定について
<該当箇所>
同上(25ページ)
<意見>
ナノ材料の製造、使用、廃棄の各段階で放出されるナノ物質から人の健康と環境を守るための、ナノの環境・健康・安全(EHS)に及ぼす潜在的な悪影響に対応するための国の基本方針及び具体的政策(省庁毎の個別政策ではない)が国民に示されていない。日本では国のナノEHSに対する基本方針と具体的施策のパブリックコメントは、承知する限り、一度も行なわれていない。欧米ではナノ施策に関する様々な提案がなされ、パブリックコメントが実施されている。


意見13:ナノ材料影響の不確実性とナノ材料の定義
<該当箇所>
同上(25ページ)
<意見>
ナノ材料の健康及び環境への影響の不確実性や、ナノ材料の定義が確立されていないことを理由に、ナノ政策の確立を遅らせてはならない。
ナノ材料の健康及び環境への影響が不確実な場合には、「予防的取組方法に留意しつつ、・・・人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産される・・・」ために、そのようなナノ材料は市場に出すべきではない。
ナノ材料の定義は、少なくともナノ政策の策定作業用に暫定的に決めることができるし、事実多くの国がそのようにしている。

以上


当研究会関連情報
2007年 化学物質問題市民研究会 SAICM 実施計画策定の公開と市民参加の要望/それに対する環境省の回答  (今回のパブリックコメントの提出書類ではありません)



化学物質問題市民研究会
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