国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)
第3回準備会合 付属書V 世界行動計画 (エグゼクティブ・サマリー) 情報源:SAICM/PREPCOM.3/5 General 19 October 2005 Annex III Draft Global Plan of Action 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2005年12月18日 付属書V 世界行動計画エグゼクティブ・サマリー 第3回準備会合によって合意された本文 訳注: 第3回準備会合で合意に達しなかった項目はカッコ([])付きで、又は脚注(原注で)、又はアスタリスク(*)(テーブル中の項目)で、示されている。 付属書(Annex) 世界行動計画ドラフト/エグゼクティブ・サマリー 1. 国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチの世界行動計画は、ハイレベル宣言と包括的方針戦略に述べられている公約と目的を遂行するために関係者によって取られるかもしれない(may be)作業領域と関連する[自主的]活動によって構成されている。 これらは、2020年までに化学物質は人間の健康と環境に及ぼす有意な有害影響を最小にする方法で使用され製造されるという持続可能な開発に関する世界首脳会議ヨハネスブルグ実施計画(原注4)で述べられた公約を再確認するものである。 原注4: Report of the World Summit on sustainable Development, Johannesburg, South Africa, 26 August - 4 September 2002 (United Nations publication, Sales No. E03.II.A.I. and corrigendum) chap. I resolution 2, annex. 2. このエグゼクティブ・サマリーは、政策策定者に世界行動計画の構造と戦略的アプローチの目的を達成するためにとることができる行動リストの概要を示すことを目的としている。 世界行動計画の中で、作業領域と関連する行動は、指名される主体者、目標とタイムフレーム(原注5)、進捗の指標、及び実施状況とともに、SAICMの包括的方針戦略中に含まれ目的の5つのカテゴリー、すなわち、リスク削減、知識と情報、ガバナンス、キャパシティ・ビルディングと技術援助、及び不法な国際的取引にグループ分けされている。 本エグゼクティブ・サマリーの目的として、2つ以上のカテゴリーに出てくる横断的措置を表現するために、”一般的な実施の改善”という追加の小見出しが設けられた。 原注5:ひとつの代表団は目標とタイムフレームの蘭は削除することを推奨した。 3. このエグゼクティブ・サマリーは二つのテーブルについて記述する。第一のものは、テーブルAであり、作業領域と関連する行動をのサマリー・リストである。第二のものは、テーブルBであり、作業領域と関連する行動、指名される主体者、目標とタイムフレーム(原注5)、進捗の指標をもっと詳細に示したものであり、上記第2項でリストされた目的の5つのカテゴリーに対応して、5つの分離したセクションに記述されている。サマリー・テーブルでは作業領域はひとつの主要なカテゴリーにリストされているが、詳細テーブルではいくつかの目的の下に現われるかもしれない。このテーブルの中で、ある行動についてはアスタリスク(*)が付けられているが、それはそれらについては合意に達しておらず、戦略的アプローチの実施の一部としてさらなる検討が求められることを示している。主体者、目標とタイムフレーム、進捗の指標、及び実施状況の蘭はSAICM第3回準備会合で討議されず、戦略的アプローチの実施の一部としてさらなる検討を保証するものである。 4. 目的の様々なカテゴリーは対応する作業領域とともに密接に相互関連している。このようにして、人の健康と環境を化学物質の不適切な管理から守るために多くのリスク削減行動が必要である。これらのリスク削減行動の多くは、化学物質に関わる全ての分野における化学物質、ガバナンス(制度的調整、規制の枠組み、及び世論を含む)、及びライフサイクルを通じての適切な化学物質管理に関連する一般的実践に関する我々の知識と情報における広範な改善によって支えられる必要がある。さらに、開発途上国及び経済移行国の行動支援において意味があり時宜を得たキャパシティ・ビルディングと技術援助が、化学物質の不適切な管理によって引き起こされる人の健康と環境へのリスクの削減において本質的な改善をもたらすために重要である。 5. 世界行動計画はまた、世界、地域、国、及び地方レベルの全ての関係者に対し、適切な化学物質の管理を支援する行動の現状を評価すること及びそのような管理におけるギャップに対応する優先度を特定することを含んで、ガイダンスとして機能する。優先度とタイムフレームは、例えば、国毎の化学物質管理の現状や措置を実施するためのキャパシティを反映して、国によって異なるであろうことが強調される。国の状況と戦略的アプローチの目的と整合して、化学物質の適切な管理のための適切で包括的な能力を築き維持するために柔軟なプログラムを採用することが期待される(原注6)。 原注6:多くの代表団は、ここでの又は他の場所での可能性ある保留条項の価値を認めた。議論されたが合意されなかった文章は:”さらに、SAICMは、既存の(国内又は)国際的な法的義務に対し、置き換える/矛盾する/違反する/影響を与えることを意図していないということを認めつつ” である。 6. [原注7] 原注7:多くの国は、ここでの項として次の記述を支持した。”作業領域中に含まれるどのよう行動についても途上国にる実施は、増加するコスト、必要な技術移転、及び必要なキャパシティ・ビルディングに対する先進国による新たな追加的な財源を通じての明確な準備が条件である。”しかし、多くの国は、包括的指針方針の財政的検討で扱われるのが最良である考えた。 7. 一般的に、下記活動が優先されるべきである。 (a) 適切な化学物質管理のキャパシティの先進国と発展途上国及び経済移行国との間のギャップを狭めることに注力すること (b) 既存の協定と作業領域の実施を支援すること (c) 既存の協定と作業領域の中で現在、対応が取られていない問題を目標とすること (d) 発がん性・変異原性・生殖毒性((CMRs)及び残留性・生体蓄積性・有毒性(PBTs)物質、内分泌かく乱物質、及び水銀、カドミウム、鉛のような重金属など、特に有害な物質への曝露の最小化又は削減を目標とすること 非合理的又は管理できないリスクを人間の健康及び環境に及ぼす化学物質又は化学的使用、及び非意図的な化学物質の排出は、科学ベースのリスク評価に基づき、及び、より安全な代替の入手可能性及びその効率とともにコスト便益を考慮に入れて、2020年までに最早、そのような用途のためには製造又は使用されず、非意図的な排出からのリスクは最小化されるということを確実にすること。 評価と関連調査に対し優先度の高い化学物質のグループは、残留性・生体蓄積性・有毒性物質(PBTs)、高残留性・高生体蓄積性物質、発がん性又は変異原性の化学物質又は有害影響を特に生殖系、内分泌系、免疫系、又は神経系に与える化学物質、残留性有機汚染物質(POPs)、水銀及び世界的な懸念あるその他の化学物質、大量に製造又は使用される化学物質、広く散布的に使用される物質、及び国内レベルで懸念あるその他の化学物質かもしれない(might be)。 (e) 非合理的又は管理できないリスクを及ぼす目標化学物質 (f) 化学物質の健康と環境リスクに関する適切な科学ベースの知識の生成を促進し、全ての関係者が入手できるようにすること。 8. 多くの作業領域について、最も効果的であるためには協調のとれたやり方で行うことが重要である。したがって、全ての関係者が世界的に優先度の高いことがらに対して適切な協調的行動をとることが重要である。それらには下記がある。 (a) 脆弱なグループを含む関係者と協議して行動の優先度のための計画を開発すること含んで、化学物質問題をより広い開発議題に統合すること。 (b) 健康、安全、職業安全衛生、及び環境に関する既存の関連国際条約の批准と実施を促進すること。 (c) 環境と健康及び化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)及び汚染物質排出移動登録(PRTRs)のような化学物質からの保護のための既存の国際的に認められた標準,ツール、及びアプローチの実施を督励すること。 (d) 水銀や世界的懸念の他の化学物質からのリスクの削減を促進、最小化を図ること。 (e) 有害廃棄物の量と毒性の削減を促すこと (f) 学物質と有害廃棄物の違法な取引防止する取り組みを推進すること。 (g) 化学物質と有害廃棄物に関する問題の全体に目を向けるために、地域及び国家センターと他の関係者との間でより大きな協力を推進すること。 (h) 高有毒性農薬を削減し段階的に廃止するために代替品を促進する(原注8)。 原注8:ある出席者らは、”必要なら”という語句をここに挿入したいと望んだが、他の出席者はその要求を支持しなかった。 (j) 全ての関連する産業において、自主的な産業界の取り組みやプロダクト・スチュアードシップを推進すること。 (k) ガソリン中の鉛の段階的廃止を推進すること。 (l) 汚染地域の修復を推進すること。 リスク削減を支援する措置 9. リスク削減目標の下に、人の健康と環境を守ることを目的とする作業領域は、特定の脆弱性を持つグループに関連する優先度の高い懸念に目を向ける行動計画の開発を含むであろう。女性と子どもの健康を守るための措置の例は、妊娠前、妊娠中、及び、幼児期、小児期、青年期を通じて、化学物質曝露を最小にすることである。労働者の労働安全衛生は国の検査システムの確立と職場における化学物質の危険をさ最小にするための適切な職業安全衛生基準の実施のような措置を通じて促進されるであろう。 評価と関連調査に対し優先度の高い化学物質のグループは、残留性・生体蓄積性・有毒性物質(PBTs)、高残留性・高生体蓄積性物質、発がん性又は変異原性の化学物質又は有害影響を特に生殖系、内分泌系、免疫系、又は神経系に与える化学物質、残留性有機汚染物質(POPs)、水銀及び世界的な懸念あるその他の化学物質、大量に製造又は使用される化学物質、広く散布的に使用される物質、及び国内レベルで懸念あるその他の化学物質を含む。 有害廃棄物の最小化は、国の計画と政策、処理業者の周知徹底と保護によって強化されるであろうが、一方、汚染されたサイトは特定され浄化されなくてはならない。汚染防止措置はガソリン中の鉛の段階的廃止を含むであろう。中毒と他の化学物質事故に対処するキャパシティが強化されるであろう。 知識と情報の強化 10. 知識と情報を強化するための措置には、教育の改善、化学物質のライフサイクルのどの段階においても有毒物質に曝露するかもしれない人々に向けた訓練と意識向上活動、及び、合法的な商業的機密の必要性を考慮しつつ、商業用の全ての化学物質の有害性に関するデータの生成と流布が含まれる。 この領域におけるその他の措置としては、健康と環境に及ぼす化学物質の影響の監視、調和の取れたリスク評価、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)を実施する取り組み、及び国の汚染物質排出移動登録(PRTRs)の展開と公表などがある。 ガバナンス:制度、法律、及び政策の強化 11. 戦略的アプローチのガバナンス目標の中心は、化学物質と有害廃棄物を取り扱う既存の国際条約を批准し実施するために国内法を検証する措置と国家及び国際レベルで化学物質の安全政策と活動に関する調整と共用作用を改善する措置である。 そのような国際条約には、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約、国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約、労働者保護に関するILO条約などがある。 その他の中核的領域は、特に女性を含んで、全ての関係者の化学物質のライフサイクルの管理への参加を確実にする措置である。 開発援助、持続可能な開発、及び貧困削減のための戦略に化学物質管理を統合する措置は、化学物質安全活動のための資源のより効果的な方向性を補強するために重要である。 ガバナンスのカテゴリーに入るその他の措置として、緊急事態発生の備えと化学事故への対応のためのシステムの開発、保護地域内での化学物質使用に関する法の制定、化学物質の製造と使用によって引き起こされる人の健康と環境へのダメージに関連する法的責任と補償の開発、及び化学物質と有害廃棄物の不法な取引の防止と摘発などが含まれる。 キャパシティ・ビルディングの強化 12. キャパシティ・ビルディングの措置には、整合のとれた方法で、また、戦略的計画、リスク評価と管理、テストと研究、及び不法取引の管理を含んで化学的安全に必要な全ての範囲にわたって地方、国、地域レベルで戦略的アプローチの体系的な実施を支援するための必要な技能を供給するための要員の訓練が含まれる。調整を確実にするためにキャパシティ・ビルディングに関するメカニズムの情報交換がなされるであろう。 不法な国際的取引への対応 13. 化学物質と有害廃棄物の違法な取引を防止し摘発するために、化学物質と有害廃棄物の国境を越える移動に関する国際的協定のより効果的な適用の方向への取り組みを含んだ国家、地域、及び世界レベルでの活動が必要である。 一般的な実施の改善 14. 作業領域のリストは、一般的な化学物質管理の実施を改善する多くの活動を含み、それらは入手できる最良の技術と最良の環境的実践に従ったよりクリーンな製造方法の開発と実施のような措置を必然的に伴う。 同様に、非化学的代替物の使用を含むより良い農業も促進される。 製品の安全な製造と使用のための改善された企業の社会的及び環境的責任に関連する措置には、産業のレスポンシブルケア・プログラムや国連食糧農業機関(FAO)の農薬の流通及び使用の管理に関する国際コードのような、自主的な取り組みのさらなる開発と実施などが含まれる。 訳注:関連する国際環境会議・宣言 日本語訳及びオリジナルを参考までに示します。 ■1972年 国連人間環境会議UNCHE(ストックホルム) ・国連人間環境会議(ストックホルム会議:1972 年)人間環境宣言(環境省訳) ・Declaration of the United Nations Conference on the Human Environment ■1992年 リオ宣言 ・環境と開発に関するリオ宣言 (環境省訳) ・Rio Declaration on Environment and Development (United Nations Environment Programme) ■1992年 アジェンダ21 ・アジェンダ 21行動計画(日本政府版) ・アジェンダ21行動計画 ・Agenda 21 (United Nations Environment Programme) ・Agenda 21 by Information Habitat: Where Information Lives - http://habitat.igc.org/index.html ■リオサミット関連資料/CASA ■2000年 バイア宣言 (Salvador da Baha, Brazil, 15 - 20 October 2000) ・Bahia Declaration on Chemical Safety ■2002年 持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット) ・持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)外務省 ■2002年 ヨハネスブルグ宣言 ・持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言(仮訳)(外務省) ・Johannesburg Declaration on Sustainable Development ■2002年 ヨハネスブルグ実施計画 ・持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画(和文仮訳)(外務省) ・Johannesburg Plan of Implementation (HTML) ・Plan of Implementation of the World Summit on Sustainable Development (PDF) ■WSSD リオからヨハネスブルグへ/CASA ■2000年 国連ミレニアム宣言 ・ミレニアム宣言(外務省訳) ・United Nations Millennium Declaration ■国際環境法・環境条約の解説 ・Maurice Strong と1972 国連人間環境会議UNCHE(ストックホルム) ・ローカルアジェンダ21 策定状況及びその内容等に関する調査報告書((財)地球・人間環境フォーラム) ・ストックホルム、リオ、そしてヨハネスブルク (松下和夫 京都大学大学院教授) |