2010年11月25-29日 SAICM実施に関するアフリカ地域会合
ナノテクノロジーと工業用ナノマテリアルに関する
参加者による決議


情報源:Resolution on nanotechnologies and manufactured nanomaterials
by participants in the African regional meeting on implementation of
the Strategic Approach to International Chemicals Management,
Abidjan, Cote D’ivoire, 25 - 29 January 2010
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/region/SAICM_AF_Nano_Resolution_100129..pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
Translated by Takeshi Yasuma
Citizens Against Chemicals Pollution (CACP)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年2月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/region/SAICM_AF_Nano_Resolution_100129.html

訳注:2010年1月25日〜29日までコートジボアールのアビジャンでSAICM実施に関するアフリカ地域会議及び関連ワークショップ(ナノ及び化学物質)が開催されました。この会議において参加者により「ナノテクノロジーと工業用ナノマテリアルに関する」が採択されました。会議に参加した国際NGOネットワークIPENは次のように述べています。
 SAICMプロセスでナノに対応することになったのは非常に重要なマイルストーンである。それは、ナノテクノロジーとナノマテリアルの国際管理を導くべき重要な原則に言及しており、さらに非常に重要なことはOEWGとICCM3への報告書の作成プロセスはもちろん、その内容にも触れていることである。


2010年11月25-29日 SAICM実施に関するアフリカ地域会合
ナノテクノロジーと工業用ナノマテリアルに関する参加者による決議

 2010年1月25〜29日にコートジボワールのアビジャンで開催された国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)のアフリカ地域会議への参加者らは;

 化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成するというヨハネスブルグ・サミット実施計画の第23章に示された包括的な目標を心に留めつつ、

 潜在的な便益と機会と共に、工業用ナノマテリアルとナノテクノロジーによって及ぼされるハザード、リスク及び倫理的、社会的問題を認めつつ、

 工業用ナノマテリアルの環境中での広範な拡散を許す前に、ナノテクノロジーの安全面に目を向ける必要性を認めつつ、

 工業用ナノマテリアルの危険性に対する子ども、妊婦、老人の特別な脆弱性を認めつつ、

 アフリカ諸国が持つかもしれない工業用ナノマテリアル及びそのような物質を含む廃棄物の安全な取り扱いを確実にすることの必要性を考慮しつつ、

 ナノマテリアルが適切な法的/行政的枠組の考慮を含む包括的な地球規模の対応を正当化しつつ、新たに出現している地球規模の懸念の問題を示していることを認めつつ、

 ヒトと環境リスクに関する適切なデータ、国家の法的/規制的、叉は包括的な地球規模の枠組みが欠如しているにも関わらず、ナノマテリアルの製造と使用が急速に増大していることを懸念しつつ、

 ナノマテリアルに関する第6回政府間化学物質安全性フォーラムのダカール声明を想起しつつ、

 "政府とその他の利害関係者に、特に開発途上国と移行経済国に関連する問題を含むナノテクノロジーと工業用ナノマテリアルに焦点を合わせた報告書を開発し、第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)の第1回会合における作業部会(OEWG)でその報告書を利用可能とする"よう要請した第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)で採択されたナノマテリアルに関する決議 II/4 Eをさらに想起しつつ、

 OECD/UNITARワークショップ、及びナノテクノロジーと工業用ナノマテリアルに関連する課題についてのアフリカ諸国の意識向上と情報共有という、その重要な目的を歓迎しつつ、

1.決議II/4 Eで言及されている作業部会(OEWG)とICCM3への報告書は下記の開発と勧告を含むべきことを勧告し、

(a) 全ライフサイクルを通じてのナノテクノロジーと工業用ナノマテリアルの問題への対応における予防的アプローチの重要な役割

(b) 意識を向上し、全ての利害関係者に情報に基づく意思決定に備えるための工業用ナノマテリアルのライフサイクルに関連する使用とリスクについての情報に対する公衆の容易なアクセス

(c) ナノテクノロジーの応用が市場に出される前に、毒性学的及び生態毒性学的データを含む包括的なハザード評価を提出することを求めるノーデータ・ノーマーケット原則

(d) 消費者、特に開発途上国の消費者に、製品ラベル及び適切ならウェブサイト及びデータベースを通じて潜在的なリスクについて知らせるために、工業用ナノマテリアルの内容についての適切な情報を提供する製造者の必要性

(e) アフリカ地域における市民社会組織の重要な役割、及び、特に脆弱なグループ、たとえば子ども、妊婦、老人に対するナノマテリアルの潜在的なリスクを効果的に評価する能力を開発することを含んで、工業用ナノマテリアルに関連する意思決定に効果的に参加出来るよう彼らの能力を強化する必要性

(f) リスクを最小化するために工業用ナノ物質の輸入と使用を受け入れる又は拒否する諸国の権利

(g) 特に開発途上国及び移行経済国における ナノマテリアルの倫理的、社会的リスク及び便益

(h) 世界行動規範に導く国家行動規範のような暫定的措置を含んで、工業用ナノマテリアルの安全な管理を達成するために必要な規制の枠組みの要素

(i) 全ライフサイクルを通じてナノマテリアルの持続可能性評価の側面

(j) 工業用ナノマテリアルを含む廃棄物の安全な取り扱い

(k) 廃棄物処理業者を含む全サプライチェーンを通じて工業用ナノマテリアルを取り扱う労働者及び使用者への情報

(l) 工業用ナノマテリアルに関連する労働安全衛生プログラムと措置を開発するときに労働者と彼らの代表との協議

(m) ナノマテリアルを含むヘルスケア製品で治療される患者はもちろん、ナノマテリアルに暴露する労働者のバイオモニタリングの取り組み

(n) ナノマテリアルとそれらを含む製品のラベリング及び包括的な公的登録制度の創設を含む消費者の知る権利と選択する権利

(o) ナノマテリアルの処分及び工業用ナノマテリアルを含む廃棄物の取り扱いのための、開発途上国及び移行経済国、特に後発開発途上国における国家能力構築を確実にするためのメカニズムと最良の実施方法

(p) ナノテクノロジーと工業用ナノマテリアルに関する意思決定及び政策決定への健康分野の関与

(q) ナノマテリアルに関連する問題に関して彼らの政府に助言するための地域の能力を構築することを目的とした開発途上国と移行経済国における研究機関によるナノマテリアルの研究の取り組み(IPEN 注*

(IPEN 注*)この条項(1.q)の最終的な表現は採択直前の総会でわずかに修正されており、最終的に発表される決議には非常にマイナーな表現の修正があるであろうことに留意いただきたい。

2. ナノマテリアルを含む廃棄物はそれらを適切に管理する能力が欠如する国に送り込まれることはないことを求め、

3. OEWG及び第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)のためのナノテクノロジー及び工業用ナノマテリアルに関する報告書は、意見の相違点及び合意点の両方を含むことを勧告し、

4. OEWG及び第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)のための報告書を開発するために全ての国連地域からの代表からなる多種利害関係者作業部会を創設することを強く促し、

5. 開発途上国及び移行経済国政府代表、健康分野代表、労働組合代表及び公益NGOsの支援を含んで、財政的資源及び現物支給を提供するよう、その立場にある政府と組織に要請し、

6. 工業用ナノマテリアルのリスクに関連する科学、技術、司法、及び規制に関する政策の専門性を構築するために開発途上国及び移行経済国を支援する財政的支援を考慮したパートナーシップを確立するよう諸国と組織に要請し、

7.暴露を受ける集団(ナノマテリアルを含むヘルスケア製品により治療される患者はもちろん、労働者など) のバイオモニタリングの取り組みのための財政的支援を考慮したパートナーシップを確立するよう諸国と組織に要請し、

8. ナノ粒子とナノマテリアルの製造、使用、輸送、処分に関して安全な実施を確保するために法的条項を規定し施行するよう諸国に働きかけ、

9. ヒト健康と環境に対する潜在的なリスクに関する効果的な研究戦略を開発し、資金を供給し、共有するための活動を刑事句するよう国際社会に働きかけ、

10. これらの勧告を実施するためにどのように政府を支援するかを検討するよう政府間期間及び他の関連組織に働きかける。



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