2014年12月
SAICM-OEWG 2についての
IPENの手短な見解


情報源:IPEN Quick Views of OEWG 2 December 2014
http://ipen.org/sites/default/files/documents/IPEN-Quick-Views-OEWG2-10-Dec.2014-EN.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年12月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/ipen/OEWG_2/IPEN_Quick_Views_OEWG_2_Dec_2014_jp.html


 下記は、OEWG2 (訳注)における議題に関するいくつかの見解表明のまとめである。
 (訳注:2nd meeting of the Open-ended Working Group, Geneva, 15-17 December 2014  (SAICM-OEWG 第2回会合 ジュネーブ 2014年12月15日〜17日))

■2020年以降

 2020年以降、SAICM の主な焦点は実施に注がれるべきである。すなわちそれらは、現在までに達成されたことの上に構築する取組みであるが、それらは実際の有害曝露をかなりの規模で削減し最小にすることにもっと注力される。OEWG 2 では:
  • 2020年以降の SAICM の将来は、アフリカ地域によって要求されたように ICCM4 の議題に勧告されるべきである。
  • SAICM ビューローと事務局は、ICCM4 による検討用に、SAICM の将来と2020年以降の適切な化学物質管理に関する政府間協力を決定するためのプロセスの要素を含むオプション文書を作成すべきであり、特に下記を含む:
    • SAICM を拡大すること、及び2020年以降の化学物質管理に関する国際会議の将来の会合を開催すること。
    • 2015年から2020年までの間のOEWG会合の必要性。
    • 2020年以降の適切な化学物質管理を促進するための他のオプション。
    • 化学物質と廃棄物のための資金調達についてのオプションに関する国連環境計画(UNEP)事務局長の協議プロセスに立脚しつつ、バーゼル、ロッテルダム及びストックホルムの各条約にカバーされないが、化学物質の安全性にとって重要な活動を含んで適切な化学物質管理の資金調達を討議すること。
    • SAICM がどのようにより広いバーゼル、ロッテルダム及びストックホルムの各条約の協働(synergies)プロセスに適合するかを討議すること。
    • SAICMへの政治的な約束がどのように全ての利害関係者の中で強化され得るかを討議すること。
■全体的な方向性とガイダンス(OOG)
  • 包括的方針戦略(Overarching Policy Strategy : OPS)の実施の進捗は、実際の有害曝露を実際に最小にするという結果を出すことができる SAICM 関連の実施活動はまだ始まったばかりなので、ギャップ(目標とのへだたり)についての記述を含むべきである。
  • 不法な取引に関する実体ある進捗が未達成であることについては、かなりのギャップであるとして強調されるべきである。
  • 資金調達とその係り合いは、進行する新たな中心的活動であるべきであり、QSP(クイックスタートプログラム)を置きかえるために2020年までにSAICMが自前の資金メカニズムを持つかどうかの問題を含むべきである。
  • 中心的活動(b)は、非化学的代替とエコロジカル農業を含む安全な代替と代替技術の目録の確立を含むべきである。
  • 中心的活動(c)は、化学物質関連条約に合致しSAICMと矛盾のない環境にやさしい技術の移転を含むべきである。
  • 新規の政策課題の実施のための特定の措置が中心的活動(d)に加えられるべきである。
  • SAICM ナショナル・フォーカルポイントは、国内の SAICM 非政府組織(NGO)ポイントと率先して活動すべきである。
  • 2020年まにSAICMのための主要なリスク削減を達成するためには、鉛塗料の製造、輸入、上市及び使用を禁止しつつ、全ての国で管理手段を適切に持つことである。
■ICCM4 のための準備

 ICCM4(第4回国際化学物. 質管理会議)の議題は下記の項目を含むべきである
  • SAICMの将来及び2020年以降の適切な化学物質管理に関する政府間協力のためのプロセスに関する討議と決議。
  • 2020年までSAICM実施を導くためにOOG はどのように使用され得るか。
  • 有害性の高い農薬を廃止するための世界的連合の確立への合意。
  • 途上国と移行経済国にとって挑戦であることを示す戦略的アプローチの実施に関連する実際的な課題の討議と決議。
■有害性の高い農薬(HHPs)

 OEWG2 は、利害関係者と協議して、下記の目的を持つ有害性の高い農薬を廃止するための世界連合(Global Alliance to Phase-out Highly Hazardous Pesticides)のための提案を開発するよう国際連合食糧農業機関(FAO)に要求すべきである。
  • 有害性の高い農薬の危害と安全な代替の利用可能性について意識向上を図ること。
  • 有害性の高い農薬を特定するためのガイダンスの提供と支援を促進し(例えば 国のHHPs リストの開発支援)、それらへの暴露を低減すること。
  • 非化学的代替と持続可能な食品と繊維製品への環境的アプローチを優先する HHPs のより安全な代替に関するガイダンスを提供すること。
  • 有害性の高い農薬の製造、輸入、販売及び使用を止めるために適切な国家の規制の枠組みの確立を促進すること。
  • 農民が農業による生計を維持しつつ、有害性の高い農薬を廃止することができるよう支援すること。
■内分泌かく乱化学物質(EDCs)

 OEWG2 は、下記の要素をもった EDCs に関するプロジェクトを指導するために、ICCM4 が UNEP を招聘することを勧告すべきである。
  • 潜在的なEDCsのリストと暴露源を特定し、公的に利用可能にすること。
  • 途上国及び移行経済国においてEDCsのの監視調査を実施すること。
  • 使用、健康影響、環境汚染と人体汚染、及び非化学的代替を含む、より安全な代替に関する情報を含んで、確固とした意識向上を実施すること。
  • より安全な代用、非化学的代替、及びリスク管理を含んで、EDCs の使用削減のための利用可能な最善の慣行の事例を集め、広めること。
  • 既存の法律と規制政策にあるギャップを特定し、人の健康と環境をEDCsから守るための政策を強化すること。
  • EDCsに関する利害関係者の必要を特定するために、製品中の化学物質(CiP)プロジェクトと協働すること。
  • ICCM3 の決議 III/2 F に関連する事例研究は、農薬、織物、子ども用品、建材、電子・電気製品を含め、潜在的な EDCs と健康影響を特定し、人の暴露を報告し、既存の規制政策中のギャップを明らかにし、EDCs の代替のための利用可能な最善の慣行を強調すべきである。
  • 地域 SAICM 会合、可能性ある将来の OEWGs、及び ICCM5 においてこれらの活動に関する進捗を報告すること。
■塗料中の鉛

 OEWG2 は ICCM4 における決議のために塗料中の鉛に関する次の行動を勧告すべきである。
  • 2020年までに世界の鉛塗料廃絶を達成するために、子ども時代の鉛暴露に最も貢献しているらしい鉛装飾塗料及び他の用途のための鉛塗料への注意を優先して取組みが加速されるべきである。
  • 2017年までにいくつかの公的に利用可能なデータが少なくとも80の途上国及び移行経済国にとって利用可能となるよう、消費者市場における鉛塗料の存在又は不在に関して追加的データが生成されるべきである。
  • OEWG2 は、現在、拘束力のある法律、規制及び基準がない国に、国の鉛塗料管理措置の確立を督促すべきである。
  • SAICM ナショナル・フォーカルポイントは、鉛塗料に関連する危険性及び可能性ある国の管理措置に目を向ける関連する政府当局者、塗料産業代表、国家健康分野代表、その他の関連する国家の利害関係者を含む国の議論を促進する及び/又は立ち上げることが奨励される。
  • OEWG2 は、地域及び国家レベルで利害関係者により実施される鉛塗料廃絶に関する作業に、途上国及び移行経済国にある WHO 地域事務所及び 国のWHO事務所を関与させるようWHOに働きかけるべきである。
■製品中の化学物質

 OEWG2 は、製品中の化学物質(CiP)プログラムに含めるための次の要素を勧告すべきである。
  • 企業秘密(CBI)の主張は、重大な製品成分の収集を妨げ、製品中の有害化学物質について透明性がないために企業に相当なコストをもたらす結果となるかもしれない。プログラムは、化学物質に関する健康と安全情報は、機密とみなされてはならないことを再確認すべきである。 高い懸念のある化学物質に CBI が主張されるべきではない。すなわち全ての高懸念化学物質は報告されなくてはならない。
  • 途上国及び移行経済国における情報公開のための要件は、特に途上国及び移行経済国の両方で化学物質と製品の製造と使用が増大しているので、先進国の基準と異なるべきではない。
  • どの化学物質を目標とすべきかを決定する時に規制が中心なら、規制が弱いか又は適切な規制がない発展途上国では、会社は政府によって強制されるまで、行動を遅らせるであろう。規制と市場での需要の先を行くことにより、長期的な価値を作り出す製品とサプライチェーン中の化学物質の率先した管理が重要である。会社は、彼らの製品とサプライチェーン中の懸念ある化学物質を特定し開示することにより、規制の遵守ということを越えて動き始めるべきである。
  • 会社は、開示のためのダブル・スタンダードを作り出す発展途上国及び移行経済国の弱い法律を使用すべきではない。人の健康と環境を守るために、そして製品中の化学物質を開示すること及び製品中とサプライチェーン中の化学物質を知ることの両方に対する要求が増大していることに応じるために、最も高いレベルの開示が全ての国で使用されるべきである。
  • 健康と環境的危険性をふるい分けるための会社の使用のために、CiP プログラムによって示唆されている Partial List of Authoritative Chemical Hazard Lists に SIN リストと TEDX リストが追加されるべきである。
  • 公益 NGOs は、織物分野の CiP に関するプロジェクト及び CiP プログラム実施を目指すその他のパイロット・プロジェクトへの参加に招聘されるべきである。
  • 消費者はもっと持続可能な製品を要求しており、以前よりもっと情報を求めており、彼らの期待は高まっているので、規制の要求を越えて製品中の化学物質に関する情報の開示に果たす消費者の役割りが強調されるべきである。
  • IOMC 文書 INF12、The Business Case for Knowing Chemicals in Products and Supply Chains (製品及びサプライ・チェーン中化学物質を知るためのビジネス事例)は、全ての国連言語に翻訳され、広く普及されるべきである。
■電子機器

 SAICMにおける電気・電子製品のライフサイクル内での有害物質に関する作業は、特に電子機器のライフサイクルにおける中流部分と上流部分がかなり未完成である。この議題に関する次なるステップは下記に関して検討し行動すべきである。
  • この議題に関する ICCM3 の決議後、2年経過するが、その実施は大幅に遅れているように見える。
  • 電子廃棄物に関する協働アプローチを定義するための国連工業開発機構(UNIDO)の会合は、公益NGOを全く参加招聘しなかった。
  • ICCM2 により義務付けられ、2011年にウイーンで開催されたこの議題に関する国際的ワークショップからの広範な勧告は大幅に無視されている。これらの勧告は、電子機器のライフサイクルの上流、中流、下流部分に目を向けており、32の政府、産業、及び公益NGOs からなる多様な利害関係者により作成された。作業の重複を避けるために、前進するこの議題に関する作業の中で取り入れられ、利用されるべきである。
  • 電子機器のライフサイクルの全ての段階において化学物質について公衆の知る権利がこの議題に関する将来の作業に含まれるべきである。
  • 電気製品及び電子機器のライフサイクル内の有害物質に関する来たるべき世界ワークショップは公益NGOsを含むべきである。
■ナノテクノロジーとナノ物質

 SAICMの脈略におけるナノテクノロジーとナノ物質に関する作業は、特に化学物質の適正管理のための国際機関間プログラム(IOMC)の全ての組織の完全な関与と、ナノ物質普及の潜在的なリスクを効率的に管理するために全ての国を支援するためのガイダンス資料の開発に関連して、まだ限定されている。ナノ特定の世界行動計画(Global Plan of Action / GPA)活動と以前の決議を考慮して、SAICM 利害関係者は次のことを目指すべきである。
  • 全てのIOMC 組織の関与を、特に既存のWHOイニシアティブに関連付けることにより増大し、(継続するUNITAR と OECD の活動に加えて)ILOを参加に招へいすること。
  • ナノテクノロジーの安全な管理と開発のための法的及び技術的な世界ガイダンスの開発のために、既存の法的及び技術的な管理ガイダンス及び管理イニシアティブを集めること。
  • ナノ物質とナノ物質を含む製品の世界目録を開発すること。
  • 最も暴露を受ける集団(特に労働者)とともに、ナノ物質を含む廃棄物の安全な管理に適切な注意が払われることを確実にすること。
■健康分野の関与

 相乗作用を増大させるために、戦略中の6つの活動が SAICM 新規政策課題に関連付けることができる。例えば:
  • ナノ物質の製造、電子機器、及び電子廃棄物リサイクルにおける職業的健康に関する作業のために電子的医療追跡ツールを開発し実施すること。
  • 鉛中毒を防止し治療すること。
  • より安全な代替と化学物質曝露による疑いのある又は知られている職業的健康ハザードのベースとして、製品中の化学物質に関する情報を提供する病院の化学物質政策の枠組みを開発し実施すること。
  • 職業訓練と開発は農薬中毒と水銀及び鉛暴露を含むべきである。
  • 内分泌かく乱化学物質に関する作業への米・内分泌学会(The Endocrine Society)の関与。
■持続可能な開発目標(SDG)
  • 目標とターゲットは再開されそうにないので、SDGにおける化学的安全性に目を向ける措置は、指標に関する討議に目が向けられるべきである。
  • SDG 指標は、本質的に世界的であるべきであり、目標として維持されるべきである。


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る