2015年9月
IPEN の ICCM4 に関する
クイック・ビュー


情報源:IPEN, September 2015
IPEN Quick Views of ICCM4
http://ipen.org/sites/default/files/documents/
IPEN%20Quick%20Views%20ICCM4%2021%20Sept%202015%20EN.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年9月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm4/IPEN/IPEN_Quick_Views_ICCM4.html

 下記は、 ICCM4 における論点に関する、いくつかの IPEN の見解の概要を述べたものである。

2020年以降
  • ICCM4 は、将来の SAICM 及び/又は、化学物質の安全に関する 2020年以降の政府間の多様な利害関係者協力組織のための他のメカニズムを検討するために会期間プロセスを立ち上げるべきである。

  • ICCM4 は、UNEA2 (2016) 及び UNEA3 (2018) と背中合わせで(back-to-back)、二つの会期間計画会議を開催することができるであろう。そしてこれらの会議は 2019年の OEWG3 に情報提供できるであろう。
    訳注:UNEA(UN Environment Assembly (UNEA) ) 

  • ICCM5 におけるハイレベル・セグメントは、提案を検討し、適切な化学物質管理のための合意された2020年以降の組織面での仕組みを採択し、着手することができるであろう。

  • SAICM は、全ての諸国に重要であるが、発展途上国及び移行経済国にとって特別の価値がある。

  • 化学物質及び廃棄物により引き起こされる脅威は、2020年には終わららないであろう。そして化学物質の安全は新たに合意される SDGs (Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の実施の本質的な要素である。
毒性の高い農薬(HHPs)
  • ICCM4 は、”持続可能な農業を促進する”ためのSDGs 目標#2 (訳注1)及び”生態系の維持に役立つ持続可能な食料生産システムを確実にする”ためののターゲット4 の実施を支援するために、毒性の高い農薬(HHPs)を廃止するための世界連合を創設すべきである。

  • 毒性の高い農薬(HHPs)を廃止するための世界連合は、2006年FOA理事会の 毒性の高い農薬(HHPs) の段階的禁止の要求を実施するのに役立つ。

  • 多くの途上国及び移行国において通常の農薬使用条件は、しばしば、農民と生態系の健康に著しい危害を及ぼす源である。そのことが2013年及び2014年の SAICM 地域会合の期間中に140か国以上が毒性の高い農薬(HHPs)の懸念を表明した理由である。

  • 鉛塗料を廃絶するための世界連合は、現場で実際の利益を獲得する達成するための手段を提供しつつ、事務局の負荷を最小にするためのモデルとなっている。

  • 付託事項を含む毒性の高い農薬(HHPs)についての更なる情報は、ICCM4 文書 INF29 及び INF31 を参照のこと。
包括的なガイダンス(OOG)

 包括的なガイダンス(OOG)に関する ICCM4 決議は、下記を含むべきである。
  • ほとんどの諸国で、化学物質の製造、使用、及び使用後の処分の現状のパターンに関連する人の健康と環境に及ぼす著しい有害影響を実際に最小にすることに対して非常に限定された進捗しか得られていないことにもまた、留意しつつ、

  • しかし、ほとんどの発展途上国と移行経済国にとって、関連する政府機関、政府間組織、及び公益利害関係者はまだ、彼らの適切な化学物質管理責任を適切に実施するための十分なリソースにアクセスすることができないことに留意しつつ、

  • 化学物質の製造、使用、及び使用後の処分の現状のパターンに関連する人の健康と環境に及ぼす有害影響の実際の最小化を目指す強固なリスク削減目標を達成するために、適切な化学物質管理のための彼らの現状の能力(6つの核となる活動分野の実施に関連する全ての強化された能力を含む)を利用するよう利害関係者らを励まし、

  • 2020年までのひとつの重要なリスク削減目標は、鉛塗料の製造、輸入、市場投入、及び使用を禁止している全ての諸国が適切に管理ツールを持つことであることに同意し、

  • 特に、SAICMクイックスタートプログラム信託資金への拠出の終了に鑑み、戦略的アプローチを実施するために適切なリソースが現在、利用できないという懸念に留意し、

  • 国連環境計画(UNEP)事務局長、化学物質適正管理のための機関間プログラム(IOMC)の組織の長、そしてSAICM 事務局に対して、関連政府機関、政府間組織、及び公益利害関係者らが 6つの核となる活動分野を十分に実施し、化学物質の製造、使用、及び使用後の処分の現状のパターンに関連する人の健康と環境に及ぼす著しい有害影響を実際に最小化するために必要なリスク削減活動の全範囲を担うことを可能にするために、十分な規模でリソースを動員することを目指す追加的な取り組みを追求するよう要請する。
製品中の化学物質(CiP)
  • 化学物質適正管理のための機関間プログラム(IOMC)文書SAICM/ICCM.4/INF/17 ”The business case for knowing chemicals in products and supply chains (製品とサプライチェーン中の化学物質を知るためのビジネス事例)”は、全ての国連言語に翻訳され、広めらるべきである。

  • UNEP は、労働組合及びその他の労働者組織を含む公益 NGOs は、 CiP プログラム実施を目指すパイロット・プロジェクトへの参加を招待されるようにすべきである。
CiP に関する ICCM4 決議は下記を含むべきである。
  • より安全な化学物質の推進力は透明性に由来し、企業秘密情報(CBI)は、健康と安全情報は秘密とみなされるべきではなく、懸念ある化学物質について主張されるべきではないという重要な化学物質の安全原則を損なうべきではないことを認めつつ、

  • 労働者は、製品の製造、リサイクル、及び処分の間、化学物質により影響を受ける主要な利害関係者グループであり、彼らは作業する化学物質についての完全な情報を必要としているこをと認めつつ、

  • 国家によっては規制がない又は規制に矛盾があるということが、特に発展途上国及び移行経済国における CiP 情報システムに含めるべき化学物質の選択に困難を生じさせるということを認めつつ、

  • 発展途上国及び移行経済国において法律は、製品中の化学物質問題に効果的に対応するよう適切に制定されていないかもしれないが、特に化学物質と製品は途上国及び移行経済国の両方でますます多く製造され使用されているので、情報開示要求は先進国における基準と異なるべきではないということを勧告し、

  • 諸国に対して、製品中の化学物質の問題に効果的に対応するために、懸念ある化学物質に関して新たな情報が利用可能となった時には、国の法律制定と施行、監視、及び管理の促進を継続することを勧告し、

  • 会社に対して、ハザード特性に基づき、彼らの製品及びサプライチェーン中の懸念ある化学物質の特定と開示により、法的に制限される物質リストの範囲を超えて率先して対応することを促し、

  • 最高レベルの開示は、人の健康と環境を守るために全ての国で共有されるべきであり、製品中の化学物質を開示することはもちろん、製品及びサプライチェーン中の化学物質を知ることに対する増大する要求に対応すべきことを認め、

  • 消費者は、もっと持続可能な製品を求めており、彼らは以前より情報を持っており、彼らの期待は高くなっているので、 法的要求を越えての製品中の化学物質に関する情報の開示における消費者の重要な役割を認め、

  • 製品中に見出される化学物質に関して、それらの健康影響、安全な取り扱い、及び処分の指示を含む詳細な情報を提供する改善された製品ラベルの必要性を認め、

  • 労働者の安全に寄与するために、労働者用の製品中の化学物質プログラムとガイダンスの適用をさらに開発すること。
製品中の鉛

 ICCM4 決議は下記を勧告すべきである。
  • SAICM にとって2020年までのひとつの重要なリスク削減目標は、鉛塗料の製造、輸入、市場への投入、及び使用を禁止している全ての諸国が適切に管理ツールを持つことである。

  • 2017年末までに少なくとも80の途上国及び移行国で、消費者市場に鉛塗料が存在するのか又は存在しないのかに関する追加データが生成され、公的に利用可能となるようにべきである。

  • UNEP の世界鉛塗料廃絶連合(GAELP)は、その小冊子”国の鉛規制の枠組み要素(Elements of a national legal and regulatory framework)”を推敲し、塗料中の鉛に関する国の規制管理を開発することに関心を持つ政府の使用のためのガイダンス文書を発行すべきである。

  • 世界鉛塗料廃絶連合(GAELP)は、連合の目的を達成することを目指す活動にもっと多くのパートナーが参加し関与することを可能にするメカニズムを確立すべきである。

  • SAICM 国家(ナショナル)フォーカルポイントは、鉛塗料に関連する危険と可能性ある国の管理措置に対応するために、政府担当官、塗料産業代表、国の保険分野の代表、及びその他の関連利害関係者を含む国家討議を促進し及び/又は立ち上げること。

  • 世界保健機関(WHO)は、地域及び国レベルで利害関係者らによって実行される鉛塗料廃絶に関する作業に途上国及び移行国にある WHO 地域及び国の事務所を関与させること。

  • 国連環境計画(UNEP)と国連工業開発機関(UNIDO)は、国レベルで利害関係者により実行される鉛塗料に関する作業に、途上国及び移行国にある事務所と国家クリーン生産センター(NCPCs)を関与させること。
電子機器

 SAICM における電気・電子製品のライフサイクル中の有害物質に関する作業は大部分が未完成であり、特に電子機器ライフサイクルの中流及び上流部で顕著である。ICCM4 文書 INF18 は作業を行う上で有用な内容を含んでいるが、全体的な調整計画の欠如が実施上の本質的な困難をもたらしている。包括的な目的は、電気電子機器(EEE)及びそれらの製造プロセス中の有害物質の削減と廃絶を優先付けるべきである。

 ICCM4 決議は下記を勧告すべきである。
  • 2016年までに、製造中に使用される化学物質を含んで電子・電気製品中の人の健康と及び/又は環境に対して懸念ある化学物質のリストを作成し、それらを SAICM ウェブサイトに掲載すること。

  • 電気電子機器(EEE)の製造プロセス中の有害物質を最小化するために、2020年までに2〜3の国連地域で少なくとも5か国により電気電子機器(EEE)中の有害物質を削減し、代替し、廃絶するための行動に対応する政策文書を採択するようにすること。

  • 2020年までに2〜3の国連地域で少なくとも5か国が電気電子機器(EEE)の製造中に使用される化学物質に関する健康と安全情報を収集し、労働者が取り扱っている又は暴露している化学物質のための情報にアクセスできることを確実にするために企業秘密情報(CBI)主張を決するための多様な利害関係者団体を活用するできるように情報システムを確立する。

  • 2020年までに、製品及び製造中に使用される化学物質及び材料の毒性削減に基づくよりグリーンな電気電子機器(EEE)を奨励する10か国でグリーン製品の購入取組みを実施する。

  • 2016年初頭に、サプライチェーンにおけるぜい弱なグループ及び関連する利害関係者のために電気電子機器(EEE)中の有害化学物質について、周知、情報、教育及びコミュニケーションを促進する。

  • 2020年までに10か国で電気電子機器(EEE)の無料引き取りプログラムを開発し実施する。

  • 2020年までに5つの途上国及び移行国において、雇用データとともに出生障害及びがんの登録制度を確立する。

  • 2020年までに5つの途上国及び移行国のそれぞれの中に少なくとも1社、産業衛生及び生物指標監視プログラムを確立し実施する。

  • 電気電子機器(EEE)の労働者安全問題に目を向けるよう国際労働機関(ILO)を促す。

  • 事務局に対し、2011年3月29日〜31日にウイーンで開催された電気・電子製品のライフサイクル中における有害物質に関する国際ワークショップの報告書(SAICM/ICCM.3/INF/2)を拡散するよう求める。
内分泌かく乱物質 (EDC)

 ICCM4 決議は下記を勧告すべきである。
  • UNEP/WHO 報告書 ”内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版を歓迎し、その主要な懸念[原注1]を認めつつ、

  • 国連環境計画(UNEP)に対して利用可能なリソースの下に下記を実施するよう要請する。

    1. EDCs と潜在的な EDCs のリストを作成し、UNEP ウェブサイトで利用可能となるようにし、もっと多くの情報が利用可能となったら現状のリストを更新する。

    2. 製品、食品、水、農薬、及び廃棄物に含まれるものを含んで、途上国及び移行国における優先度の高い EDCs と暴露源を特定する。

    3. 2020年までに 4 つの国連地域で 3〜5 の途上国及び移行国、合計 12〜20 か国で EDCs の監視調査を実施する。

    4. 途上国及び移行国を目標にした、非化学物質代替を含んで、使用、影響、汚染と人体への負荷、及びより安全な代替を含む EDCs に関する意識向上資料を作成し、拡散する。

    5. 2020年までに、より安全な代替、非化学物質代替、及びリスク管理を含んで、20 の EDC の使用を削減する最良の実施事例を収取し拡散する。

    6. 2020年までに、農薬、布製品、子ども用品、建材、及び電気・電子製品を含んで決議 III/2 F に対応する事例研究を完成し、潜在的な EDCs と健康影響を特定し、人の暴露を報告し、既存の規制政策中のギャップを明らかにし、EDCs の代替における利用可能な最良の実施を強調する。

  • UNEP と WHO に対して、アフリカ、アジア太平洋、ラテンアメリカとカリブ海の SAICM EDC 地域決議の(a)〜(g)項を含む途上国及び移行国の状況と必要性を目標にした地域の情報をもった EDCs に関する報告書を利用可能なリソースの下に開発するよう要請する。
ナノ(Nano)

ナノに関する ICCM4 決議は下記を勧告すべきである。
  • 例えば、適切なクリアリングハウスのメカニズムを通じてナノテクノロジーと工業ナノ物質の適切な管理に関する情報交換を図りつつ、

  • SAICM 事務局により準備された適切な情報の編集に基づき、工業ナノ物質の適切な管理のための国際的な技術及び規制のガイダンスと訓練資料を開発しつつ、

  • 異なる手段を通じて情報へのアクセスへの支援と向上を増大するよう勧告し、

  • 化学物質適正管理のための機関間プログラム(IOMC)の関連組織、特に 世界保健機関(WHO) と国際労働機関(ILO )はもちろん、国連訓練調査研究所(UNITAR)と経済協力開発機構(OECD) を含む全ての戦略的アプローチの利害関係者に対して、関連する国際化学物質管理会議(ICCM)決議と SAICM の世界行動計画(GPA)活動の実施への継続的な関与を求める。
財源(Finances)
  • ICCM4 は、特に SAICM クイックスタートプログラム信託資金への拠出の終了に鑑み、戦略的アプローチを実施するために適切なリソースが現在、利用できないという懸念を表明すべきである。

  • 世界の化学物質産業は、年間約 4.1 兆ドル(約 480兆円)の総売上高を記録している[原注2]。もし世界の原価償却スキームが年間 41億ドル(約4,800 億円)とするなら、化学物質製造産業の総負荷は同産業の年間総売上高の0.1%という、同産業の規模と比較して非常に少額であり、一方援助国政府が提供できる金額よりかなり大きな金額である。

  • SAICM 準備会合において援助国政府代表は、国際開発支援の諸機関は、SAICM 実施のための相当な資金を提供できるという期待をかき立てた。このことはまだ、相当な規模では実現しておらず、さらに追求する必要がある。

  • 特別プログラムは約1,300万ドル(約16億円)の約束を受けたが、それは、公益市民社会組織のための資金調達を除外することにより、特に SAICM の多様な利害関係者アプローチから逸れている。

原注1
 人と野生生物の健康は、正常に生殖し発達するための能力に依存する。このことは健康な内分泌系なしには不可能である。多くの内分泌関連の疾病と障害は増加の傾向にあり、EDCs に起因する疾病リスクは著しく過小評価されているかもしれない。野生生物の個体数は、内分泌かく乱により、成長と生殖に有害影響を受けている。ラボでの非常に多数の研究が、化学物質曝露が人と野生生物における内分泌障害に寄与しているという見解を支持している。EDCs への最も敏感な暴露時期は、胎児の発達期から思春期のような重要な発達期間である。様々なメカニズムによって暴露を低減することに焦点を当てることが重要である。暴露を低減するための政府の行動は、限定されたものではあったが、特定の場合には有効であった(例えば、鉛、クロリピリホス、トリブチルスズ、PCBs 、及びその他のいくつか のPOPs)。これは人と野生生物における障害の発生頻度を低減するのに寄与した。

原注2
 United Nations Environment Programme (2012) Global Chemicals Outlook


訳注1持続可能な開発目標(SDGs)/IGES による日本語訳
目標2.飢餓の終焉、食糧安全保障と栄養の向上の達成、持続可能な農業の促進



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る