IPEN Press Release 2015年10月2日
世界会議(ICCM4)は有害化学物質への行動を再度約束するも
最も影響を受ける国々への資金提供は終了させる


情報源:IPEN Press Release, 2 October 2015
World Conference Re-Commits to Action on Toxic Chemicals,
but Lets Funding for Most Impacted Countries Expire
http://ipen.org/sites/default/files/documents/
IPEN%20ICCM4%20Final%20media%20release%202nd%20Oct%202015_0.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年10月3日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm4/IPEN/IPEN_151002_Press_Release_ICCM4.html

 【ジュネーブ】世界及び国の化学物質問題に目を向ける世界的国際会議(ICCM4)の代表者らは、2020年までに適切な化学物質管理を全うするための重要な行動をすると再び約束したが、最も影響を受ける国々の活動を支える資金供与プログラムを終了させることを許した。この会議に参加している年間売上げ 4兆ドル(約500兆円)の化学産業もまた、化学物質管理と危害のコストのための彼らの公平な負担を支払うという新たな申し出はしなかった。世界の化学産業への0.1%という非常に小さな課金でも年間40億ドル(約5,000億円)以上の基金を生み出すであろう。

 SAICM の第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)は、いくつかの重要な化学物質問題への行動をとることに合意したとIPENの共同議長オルガ・スペランスカヤは述べた。”しかし、5年間の資金供与の空白はそれらの実施を極めて難しくするであろう。早急に資金供与を実施する必要がある。政府、財務機関、政府間組織、及び化学産業界はそれぞれの公平な負担を支払わなくてはならない”と、彼女は加えた。

 現在の問題には、毒性の高い農薬(HHPs)、製品中の化学物質についての情報、鉛塗料の廃絶、ナノテクノロジー、医薬汚染物質、内分泌かく乱化学物質等がある。

 ICCM4 におけるひとつの重要な成果は、極めて有害でがんや発達障害の発生率の増大に関連している世界最悪の農薬と取り組む戦略である。ICCM4 の決議は、これらの物質が国連の合意の中で包括的な方法で対応されるであろうということを初めて示したものである。代表者らは、より全体論的なアグロエコロジー・アプローチを強調することにより持続可能な農業に向けて大きなな一歩を踏み出した。”エチオピアでは、”毒性の高い農薬(HHPs)は農民を害し、土地を汚染している”と農薬行動ネクサスのタデッセ・アメラは述べた。”これからは、我々は農薬で我々自身を害するのではなく、人の健康、我々の土地、そして我々の水を敬うような方法で食料を生産するために、この新たな戦略で活動を開始する必要がある”。

 世界の130か国以上からの政府、産業、公益団体、労働組合、そして健康専門家の代表者らが今年の第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)に参加した。ICCM4 は国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の実施組織体であり、国連環境計画(UNEP)によりコーディネートされている。

ICCM4 で採択された明確な行動

 毒性の高い農薬(HHPs): 代表者らは HHPs は、特に途上国及び移行国における人の健康と環境を害するということを確認した。ICCM4 は HHPs に対して協調のとれた行動をとり、HHPs の代替としてアグロエコロジー[原注1]を促進し、規制能力を強化することを強調した。

 2020年以降の国際化学物質管理: 代表者らは、プロセスが終了する2020年以降の化学物質管理への国際的な協調を継続するための計画の開発を委ねた。

 製品中の化学物質についての情報: ICCM4 は、会社が、懸念ある化学物質のための国の法律と基準の両方を利用して、彼らの製品中とサプライチェーン中の有害化学物質を特定し、開示するよう勧告した。代表者らは、情報開示に関する参加型のパイロット活動を開始するよう勧告し、途上国においても等しく情報開示を利用可能とする必要性を示した。

 電子機器中の有害化学物質: 代表者らは、機器製造会社に対して、労働者らが取り扱う又は暴露する化学物質に関する健康と安全情報を労働者に提供し、寿命の尽きた製品の引き取りプログラムの実施を検討するよう勧告した。ICCM4 はまた、よりグリーンな電子製品を促進する購入イニシアティブの必要性を示し、産業に対してより安全な製品を作るよう求めた。

 内分泌かく乱化学物質: 化学物質製造者を除き会議の参加者らは、内分泌かく乱化学物質は人間と野生生物を害することができるということ、及び暴露を低減することは重要な焦点であるということに合意した。代表者らは途上国及び移行国により特定された必要に対応することに同意した。

 塗料中の鉛: ICCM4 は2020年までに塗料中の鉛を廃絶するという目標を確認した。

 ナノテクノロジー: 全ての利害関係者には、ナノテクノロジーに関する意識向上、能力構築、及び情報共有活動; 持続した資金調達の要求; クリアリングハウスの仕掛けを開発することの奨励; 及び便益と有害性の両方についての情報を含める任務がある。

 医薬汚染物質: ICCM4 において環境的に残留性のある医薬汚染物質は、政策策定者及びその他の利害関係者の間に認識を向上させる意図をもって、特別の SAICM 焦点領域になった。

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 IPEN は、有害物質を廃絶するために活動する 100か国 700以上の公益組織の世界的ネットワークである。Website:www.ipen.org | twitter:@ToxicsFree | email:ipen@ipen.org

原注1: アグロエコロジー(Agroecology)は、持続可能な農業の基礎であり、農民による民主的で地方分権的な意思決定を奨励し、採算的な農業のための現実的で、低コストで、生態系に基づく技術を具体化する。



化学物質問題市民研究会
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