IISD ICCM-4 Highlights 2015年9月30日
適切な化学物質管理のための2020年目標の達成に向けての実施:
新規政策課題 及びその他の懸念ある課題、並びに既存の新規政策課題 (部分訳)


情報源 IISD Reporting Services ICCM-4 Highlights, 30 September 2015
Implementation towards The Achievement of The 2020 Goal of Sound Chemicals Management
EPIs and Other Issues of Concern and Existing emerging policy issues
http://www.iisd.ca/vol15/enb15234e.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年10月6日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm4/IISD/IISD_ICCM4_Highlights_30_September_2015.html


新規政策課題及びその他の懸念ある課題


■懸念ある課題としての毒性の高い農薬(HHPs)に関する提案

 IPEN は、SAICM/ICCM.4/CRP.4 は世界的な廃止目標を設定し、適切な化学物質管理のための組織間プログラム(IOMC) 組織の関与を通じて多様な利害関係者の参加を確実にしつつ、世界連合を創設することを提案していると述べた。インドネシアは最良の慣行を共有し、データのギャップを埋め、関連利害関係者を関与させつつ、関連する持続可能な開発目標(SDGs)を考慮することを促した。中国は農薬産業が毒性の高い農薬(HHPs)のリスク管理にもっと責任を示すことを求めた。アメリカは、毒性の高い農薬(HHPs)のリストを開発するとする SAICM の結果を支持できない、又は廃止に賛同できないと述べた。アフリカグループ、フィリピン、ドミニカ共和国、ペルー及びメキシコは提案された決議案を支持した。アルゼンチンは、毒性の高い農薬(HHPs)を規制するための国家主権を強調した。アフリカグループは、既存の国際条約の中での協力を強化し、スマートな農業の開発に関する焦点を絞り込んだ行動を求めた。ベトナムは、アフリカグループとともに不法な取引に注意を払うよう勧告した。

■既存の新規政策課題(EPIs)

 事務局は、文書、SAICM/ICCM.4/9-11, INF/14, INF/16-20, INF/25, INF/27 及び CRP.5-6 を紹介した。

塗料中の鉛

 世界保健機関(WHO)は、意識向上キャンペーンと市民社会との協力を強調しつつ、そして国が規制の枠組みを確立するか又は強化するよう促しつつ、”鉛塗料を廃絶するための世界連合”の活動を討議した。

 IPEN は決議案 SAICM/ICCM.4/CRP.6 紹介した。EU、メキシコ、アメリカ、フィリピンは世界連合によりなされた作業を歓迎し、フィリピンは同連合に参加することへの関心を表明した。アメリカは、日本に支持されて、アメリカの決議案(SAICM/ICCM.4/CRP.12)に言及した。ブラジル、中国、ペルー、フィリピン及びその他が塗料中の鉛を廃止するための国家の取組みの概要を示した。

 EU はさらなる規制的行動を求めた。国際化学工業協会協議会(ICCA)は、諸国と地域を喜んで支持すると述べた。ペルーは、地域の当局と産業が塗料中の鉛を廃絶するもっと多くの措置をとるよう促した。スイスは、アメリカの提案をIPENの提案に織り込むことを示唆した。メキシコは、ある製造プロセスを標準化するよう促した。

製品中の化学物質

 UNEP は文書 SAICM/ICCM.4/10 and 11 を紹介した。日本はサプライチェーンに沿って製品中の化学物質に関する情報を伝達する新たな国家計画を強調した。ノルウェー、EU、アメリカ、国際化学工業協会協議会(ICCA)、IPEN、及びメキシコは、 SAICM/ICCM.4/10 で提案されたプログラムを支持した。アメリカは SAICM/ICCM.4/10 中の決議案の変更を提案し、ICCA 及び米国国際ビジネス評議会(USCIB)とともにその計画について事務局に反対した。ICCA は、プログラムの成功は、柔軟性、既存の取組みの容認、及び全ての利害関係者の参加に依存すると言及した。フィリピンは、化学物質に関する情報の開示のための要求は途上国と先進国で同じであるべきと述べた。IPEN は、透明性及び途上国への資金的支援の重要性を強調した。インドネシアは全ての利害関係者、特に産業にとって魅力あるものとするようプログラムを改善するよう求めた。中国はプログラムは漸進的で自主的なものであるべきと強調した。

電気・電子製品のライフサイクル内の有害物質

 国連工業開発機関(UNIDO)は文書 SAICM/ICCM.4/INF/18 及び 27 を紹介した。アフリカグループは、彼らの決議案((SAICM/ICCM.4/CRP.10)を紹介した。IPEN は、その提案を支持し、太平洋諸島諸国が直面している電子廃棄物の投棄についての具体的な問題を認識する必要性を強調した。中国、日本、メキシコ、責任ある技術の国際キャンペーン(ICRT)、及び持続可能な開発のための国際労働財団(SUSTAINLABOUR)は、その提案を支持した。アラブ諸国を代表してエジプトは、もっと多くの情報交換、及び財政的及び技術的支援を求めた。アメリカは、UNIDO の最新版に注目し、全ての SAICM 利害関係者にその作業計画案を送付することを支持した。EU はその作業計画案を支持したが、製品中の化学物質に関する作業と関連付けることを強調し、二つの課題に取り組む組織間の密接な調整と協調を促した。スイスは、SAICM における利害関係者の調整を強調し、既存の作業の上にさらなる取り組みを構築することを勧告した。IPEN は利害関係者の連携を求めた。

ナノテクノロジーと工業ナノ物質

 タイは、訓練、意識向上、および規制的ガイダンスに関する行動を強調しつつ、ナノテクノロジーとナノ物質の適切な管理に関する決議案を紹介した((SAICM/ICCM.4/CRP.11)。マレーシアはその決議案を支持した。国連訓練調査研究所(UNITAR)は、UNITARのものに加えて、他の関連ガイダンスを参照するよう提案した。コロンビアは情報交換、研究ネットワークの拡張、及び多様な利害関係者の連携の必要性を強調した。

 イランは、新規政策課題(EPI)としてのナノテクノロジーを支持したが、規則又は規制を設定するには早すぎると指摘した。EU は提案された活動とスケジュールを支持し、提案されている製品中の化学物質プログラムと密接に連携することを勧告した。国際化学工業協会協議会(ICCA)は有害なナノ物質を特定する作業を支持し、重複した研究を警告した。

 国連訓練調査研究所(UNITAR)は、ナノテクノロジーとナノ物質に関する新規政策課題(EPI)最新版を紹介した(SAICM/ICCM.4/INF/19)。ロシア連邦は、ナノテクノロジーとナノ物質のための国家データ貯蔵庫(repository)に関して報告した。ブラジルは、ナノのためのリソース要求の観点から情報クリアリングハウスに関するさらなる議論を求めた。インドは、国際的な規制ガイダンスは受け入れないかもしれないと言及した。メキシコと日本はその提案を支持し、日本は影響の評価と測定に関するもっと多くの知識の必要性を強調した。国際環境法センター(CIEL)は、決議案は活動規模を拡大する現実的な方法を提案しており、地球環境ファシリティ(GEF)に対して新規政策課題(EPIs)決議の実施のための支援を継続するよう要請した。ペルーはもっと情報を広めるうよう求めた。

内分泌かく乱化学物質(EDCs)

 UNEP は文書 SAICM/ICCM.4/INF/20 を紹介した。バングラデシュはその決議案(SAICM/ICCM.4/CRP.5)を紹介した。ケニア、オマーン、セネガル、及び IPEN はその決議案を支持した。ノルウェーと EU は、”内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版”報告書を歓迎し、多様な利害関係者の協力を強調した。

 国際化学工業協会協議会(ICCA)は、明確な科学的証拠と規制のレビューなしに EDCs をリストすることに反対した。日本は UNEP に対して EDCs に関する情報共有を改善するよう要請した。内分泌学会(ENDOCRINE SOCIETY)は、その来たるべき科学的声明(訳注1)は EDCs を国際的な問題であると認識し SAICM に適切な勧告を含んでいると言及した。フィリピンは、消費者製品中の EDCs のリストを編集することに関心を示した。インドは、EDCs の影響についての知識が限定されているなら、EDCs への行動は時期早尚であると述べた。ケニアは、UNEP に EDCsを調べる研究所のリストを提供するよう要請した。

■その他の懸念ある課題

過フッ素化合物(PFCs)

 事務局は文書 SAICM/ICCM.4/9 を紹介した。経済協力開発機構(OECD)は文書 SAICM/ICCM.4/INF/21 を紹介したが、それは OECD/UNEP 世界過フッ素化合物グループ(OECD/UNEP Global PFC Group)の改訂作業プログラムを含み、さらなる同グループへの参加が歓迎され、必要であると述べている。中国はグリーンピースとともに、短鎖過フッ素化合物(PFCs)は長鎖過フッ素化合物により代替されるべきではないと強調し、会社の企業秘密と人々の健康と安全に関連する事柄についての人々の知る権利の必要とのバランスをとるために、同グループは産業との関係を強化する必要があること強調した。アメリカ、メキシコ、バーゼル・ロッテルダム・ストックホルム(BRS)条約事務局、及び日本はその作業プログラムを支持した。EU は短鎖過フッ素化合物をもっと強調するよう求めた。

 議長レスヤンペは全ての新規政策課題を含むよう新規政策課題(EPI)コンタクト・グループへの委任を拡張した。


訳注1
内分泌学会プレスリリース 2015年9月28日 化学物質への曝露は糖尿病と肥満のリスク上昇に関連する 内分泌学会が内分泌かく乱化学物質に関する科学的声明を発表


化学物質問題市民研究会
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