SAICM/ICCM.2/10/Add.1 2009年4月6日
第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)
SAICM 新規の政策課題 Annex IV
塗料中の鉛に関する決議案と取り決め事項案


情報源:
International Conference on Chemicals Management Second session
SAICM/ICCM.2/10/Add.1 / 7 April 2009
SAICM: emerging policy issues Annex IV
Lead in paint
http://www.saicm.org/documents/iccm/ICCM2/meeting%20documents/
ICCM2%2010%20Add1%20emerging%20issues%20actions%20E.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月8日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm/ICCM_Lead_in_paint.html

Annex IV 塗料中の鉛 (訳注:ファシリテータ:IFCS、アメリカ)

塗料中の鉛

説明

1. 非公式な事務局計画グループ支援者らによって用意された指針にしたがい、提案される行動は塗料中の鉛に特化している。塗料中の鉛は顕著な暴露源であるが、同じく顕著な暴露源かもしれないバッテリーやおもちゃのような他の製品中の使用もある。したがって何人かの貢献者は、提案される行動は、他の暴露源からの人の鉛への暴露も含むよう広げられるべきであると提案した。会議は、その審議において提案される行動の範囲の修正を検討したいと望むかもしれない。

2. 提案される行動は、第2回会議において化学物質安全常任委員会アドホック作業部会によって提出された提案に基づき、共同ファシリテータによって作成された。この課題に関する準備作業実施中に共同ファシリテータが受領したコメントは、適切な場合には本提案を修正するために利用した。

3. 提案されたパートナーシップは、持続可能な開発に関する世界サミットの期間中にクリーン燃料と自動車を推進するために形成され、非常に効果的であったパートナーシップ、及び国連環境計画によって確立された世界水銀パートナーシップ[14]をモデルとして利用するであろう。

決議案

塗料中の鉛の使用の廃止に関する持続可能な開発に関する世界サミットの実施計画パラグラフ57に含まれる措置の実施を推進するための世界パートナーシップ

 会議は、

 塗料中及び他の人への暴露源の鉛の使用を廃止し、特に子どもの鉛への暴露を防止し、監視と調査及び鉛中毒の治療を強化するために、持続可能な開発に関する世界サミットの実施計画パラグラフ57[15]でなされた約束を想起しつつ、

 第6回政府間化学物質安全性フォーラムで採択された塗料中の鉛の廃止のためのダカール宣言[16]を認識しつつ、

 国連環境計画の下に確立されたクリーン燃料と自動車のためのパートナーシップによる自動車燃料中の鉛の世界的な廃止に向けて達成されている進捗を認識しつつ、

 持続可能な化学物質管理を達成するための能力における一方の先進国と、他方の途上国及び移行経済国との間のギャップと矛盾に関し、パートナーシップ、技術協力、及び財政的支援を通じて、後者の特別なニーズに対応し、適切な化学物質管理と非化学物質の代替を含むより安全な代替製品とプロセスの開発を強化することにより、それらを埋める方向へ働くために、国際的な化学物質の管理に関する ドバイ宣言[17]での約束を想起しつつ、

 また、クリーン・プロダクション、特に懸念ある化学物質の情報に基づく代替及び及び非化学物質への代替を含む環境的に適切なより安全な代替の開発と実施、及び更なる革新を推進し支援することを目指すために、戦略的アプローチの包括的方針戦略パラグラフ 7(d) を想起しつつ、
  1. 塗料中の鉛の廃止を推進するための調和のとれた行動を支援するための世界パートナーシップは、持続可能な開発に関する世界サミット実施計画パラグラフ57の実施、及び、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチの実施の両方に重要な貢献をするであろうことに同意し、

  2. 国際化学物質会議の賛助の下に、また本決議の appendix に記載されている取り決め事項にしたがい、塗料中の鉛の廃止を促進するための世界パートナーシップを確立することを決定し、

  3. 政府、地域の経済的統合組織、政府間組織、他の国際的組織、産業又はビジネス組織、非政府及び市民社会組織、及び大学研究機関を世界パートナーシップに参加するよう促し、

  4. 世界パートナーシップの目標と目的を達成することは十分な人的、財政的及び現物のリソースを必要とし、したがってすべての政府、政府間組織、及び民間部門を含む非政府組織をそのようなリソースを自主的に提供するよう促すことの必要性を認識し、

  5. [国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ事務局]、[国連環境計画技術産業経済部門化学物質分野]に、利用可能なリソースの範囲で、世界パートナーシップに協力することを要請し、

  6. 世界パートナーシップにその作業の進捗を将来の国際化学物質管理会議に報告することを要請する。


原注

[14] http://www.chem.unep.ch/mercury/partnerships/new_partnership.htm
[15] Report of the World Summit on Sustainable Development, Johannesburg, South Africa, 26 August-4 September 2002 (United Nations publication, Sales No. E.03.II.A.1 and corrigendum), chap. I, resolution 2, annex.
[16] SAICM/ICCM.2/INF/5.
[17] SAICM/ICCM.1/7, annex I.


Appendix
塗料中の鉛

塗料中の鉛の使用の廃止に関する持続可能な開発に関する世界サミットの実施計画パラグラフ57に含まれる措置の実施を推進するための世界パートナーシップのための取り決め事項案

1. 下記の取り決め事項は、持続可能な開発に関する世界サミットの実施計画パラグラフ57[18]の実施を支援するための塗料中の鉛の使用を廃止するための世界パートナーシップのためのものであり、その実施計画は次のように述べている。
 参加者は、鉛ベースの塗料及び他の人への暴露源の鉛を廃止し、特に子どもの鉛への暴露を防止し、監視と調査及び鉛中毒の治療を強化することに同意する。

2. 世界パートナーシップは、国際化学物質管理会議の賛助の下に設立される。

全体目標

3. 全体目標は、鉛を含む塗料を通じて鉛への子どもの暴露を防止することにより実施計画パラグラフ57の実施を推進し、塗料中の鉛への職業的暴露を最小化することである。

目的

4. 広範な目的は、鉛を含む塗料は子どもの鉛暴露をもたらすので、その製造と販売を廃止し、最終的にはそのような塗料からのリスクをなくすことである。具体的な目的は次の通りである。

(a) 政府当局及び規制官、民間産業、製造者、消費者、労働者、労働組合、健康介護業者に対し、塗料中の鉛の有毒性について及び技術的により優れより安全な代替品の入手可能性について意識の向上を図ること。

(b) 塗料中の鉛の使用によるリスクを削減し排除するための適切な防止に基づくプログラムの設計と実施を促進すること。鉛廃止のプロセスが塗料製造において実施される時には、労働者の健康[及び雇用][19]を保護する規則にかなった移行を確実にする措置が取られなければならない。

(c) 鉛を含む塗料を製造し市場に出し続ける塗料製造者に対し、彼らの塗料から鉛を廃止することが可能なように支援をすること。

(d) 子どもの鉛暴露をもたらす可能性のある用途のための鉛を含む塗料の製造、輸入、販売及び使用を停止するために、適切な国の規制の枠組みの確立を推進すること。

(e) 適切な場合には、消費者が鉛を加えられていない塗料やコーティングを認識することを助けるために、新たな塗料製品の国際的第三者認証を推進すること。

(f) 家庭内ダストのような家の中や周囲、さらには鉛を含む塗料が存在する児童施設や学校などの潜在的な鉛暴露を特定し削減するための指針を提供し支援を推進すること。

メンバーシップ

5. 世界パートナーシップは、政府、非政府、公共及び民間を問わず様々な組織間の自主的で共同的な関係であり、そこでは全ての参加者は塗料中の鉛の使用を廃止するという全体目標を達成するために組織的に協力して働くことに同意すること。

6. 世界パートナーシップは、パートナシップの目標を支持する政府、政府間組織、市民社会組織及び民間セクターの代表に対して開かれている。それはまた、パートナーシップの目標に向けて働くことに同意するどのような他の組織または個人に対しても開かれている。

7. 下記のようなグループからの参加が期待される。

(a) 下記を含む国家政府からの代表。
  1. すでに国内での塗料中の鉛の使用を廃止したが、まだ廃止していない国と経験を共有し、支援したいと望む国。
  2. 鉛を含む塗料が販売されている国。
(b) 関連する政府間組織からの代表(世界保健機関、国連環境計画、国際労働機関、国連産業開発機構、国連訓練調査研究所など)。

(c) 鉛産業及び塗料とコーティング産業からの代表。

(d) 塗料とコーティングを製造する国際的及び国内の会社、及び関連する産業団体。

(e) 国際的及び国内の医療、住宅、及び公共健康組織。

(f) 関連分野の専門性を持つ大学研究機関。

(g) 環境健康問題に取り組み、地域または国レベルで公衆支援とキャンペーン又は防止プログラムの実施経験を有する国際的及び国内の非政府組織の代表。

(h) パートナシップの効果を促進するための地方、国、及び国際的レベルの労働組合。

”鉛塗料”の作業用定義のための指針

8. 次の基準が、”鉛塗料”の定義の作業ベースとして用いられる。

(a) 用語”鉛塗料”は、いかなる用途の塗料、ワニス、ラッカー、防汚剤、エネメル、うわぐすり、プライマー、又はコーティングをも含む。

(b) 鉛は、塗料、ワニス、ラッカー、防汚剤、エネメル、うわぐすり、プライマー、又はコーティングに加えられる。

(c) 総鉛濃度は製品の総非揮発性部分に対する重量パーセントまたは乾燥塗膜の重量パーセントとして定義される。

活動

9. パートナーシップ活動は下記を含む。

(a) 建物に以前に塗られた鉛塗料からの著しい暴露を含んで、塗料中の鉛に対処する行動
  1. 鉛の健康に及ぼす影響に関する情報交換

  2. 子どもと成人のための鉛塗料の暴露経路に関する情報交換

  3. 他の国の集団の血中鉛レベルの分布を見積もるための研究の設計と実施における技術的専門性の供給

  4. 人の血中への鉛の広がりを見積もるために健康を監視するよう国に働きかけること

  5. 人の血中への鉛の広がりを見積もるために健康を監視するための能力構築と情報の共有

  6. 血中鉛の高品質なラボテストを開発し維持するための能力構築と訓練の提供

  7. 環境中の鉛の広がりを見積もるために監視するよう国に働きかけること(例えば、水、土壌、動物)

  8. 様々な国における塗料中の鉛レベルに関する情報交換

  9. 様々な国における塗料中の許容鉛濃度に関する国、省、州、地方の規制と法律に関する情報交換

  10. 塗料中の鉛の存在と濃度に関する表示と認可システムに関する情報交換

  11. 塗料、及びラッカー、化粧張り、粉末コーティングなどの表面処理の鉛を廃止するためにとられる措置に関する世界的な議論と技術的支援

  12. 鉛を含まない塗料の使用を支援するための財政的インセンティブの利用の促進

  13. 鉛を含まない塗料だけの使用を許可するものを含んで国の基準を確立するための指針の開発

  14. 政府に対し、政府資金を受けている建設または改修には鉛を含まない塗料だけを使用することを求めるよう促すこと

  15. 鉛塗料の密輸をいかに防ぐかを含んで効果的な国家基準の執行に関する指針及び情報を提供すること

  16. 省庁、地方当局、及び鉱山の環境健康担当官の法的執行能力を構築すること

  17. 鉛塗料を完全に廃止するための包括的な法を制定する方法を工夫することにより、途上国に国際的な支援を提供すること

  18. 鉛塗料の廃止に関連して公衆健康を保護することに焦点を当てる既存の国の法律を強化し調和させるための国際的支援に関する情報交換と支援の提供

  19. 塗料中の鉛成分を置き換えるための代替物質の利用可能性に関する知識の共有

  20. 塗料中の鉛成分の代替物質のハザード評価

  21. 地域レベルを含んで、ビジネス及び産業と協力して塗料中の鉛の製造の自主的廃止の可能性を検討すること

  22. 問屋及び小売業者に鉛塗料の販売をやめるよう促すこと

  23. 国に住宅建設における鉛塗料を見積もるために住宅調査を実施するよう促すこと

  24. 鉛塗料を特定するための簡単な分析方法を記述した指針の開発

  25. 鉛塗料のラボテストに役立つ人とラボ機器の能力構築と情報及び知識の提供

  26. 鉛塗料のためのテストについて広範な省庁の担当官を支援するための能力構築と情報及び知識の提供

  27. 鉛塗料の住宅及びその他の建物を子供や妊婦の居住に対して安全にする方法に関する情報交換

  28. 効果的な封じ込めにより、以前に建物に塗られた鉛塗料のリスクを最小化すること

  29. 子どもたちは鉛に脆弱なので、子どもたちがいる学校やその他の建物の鉛塗料の除去を強化すること

  30. 新たな塗装のために既存の鉛塗料が塗られていた表面を処理する場合にもたらされる健康リスクについて、使用者に警告するために新たな塗料の缶に警告表示をするための提案に関する意見交換

  31. 鉛塗料を含む住宅や他の建物の内装及び外装を修理または修復する場合に、居住者や作業者の暴露を最小にし、将来の暴露につながる環境への放出(廃棄物からの放出も含む)を最小にするための安全な方法に関する情報交換

  32. 全ての鉛暴露を最小にする取り組みの一部として、鉛塗料の鉛への子どもたちの暴露をいかに最小にするかに関して健康関連業業者、介護士、両親らにどのように伝えるかに関する議論と能力構築

  33. 改修業者、塗装業者、その他の業者に鉛塗料の鉛への子どもたちの暴露をいかに最小にするかについて教えることに関する情報交換

  34. 中小の事業者、特に途上国において、労働者に鉛への脆弱性と暴露を警告する措置に関する意見交換

  35. 鉛塗料の有害性に関して一般公衆の意識向上を推進するための情報交換

  36. 廃鉛塗料の安全な処分に関する情報交換

  37. 鉛塗料を含む廃棄物の管理と保管のためのアプローチの開発

10. 活動は、リード・スポンサー・アプローチにしたがい開発され実施される。各活動のリード・スポンサーは関心あるパートナーの協力の下に、作業計画、予定表、予算、及び資金調達計画を準備する。

11. 世界パートナーシップは、パートナーシップを通じてとられる活動に関する進捗を追跡する監視メカニズムを開発し実施する。

作業方法

12. 世界パートナーシップは、主に電子コミュニケーション・メカニズムを通じてその作業を実施する。戦略的アプローチの利害関係者地域会議及び、国際、地域、及び国の会議に関連した機会が利用される。

13. 世界パートナーシップは、[国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ事務局]、[国連環境計画技術産業経済部門化学物質分野]によって支援される。リソースの利用可能性にしたがい[国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ事務局]、[国連環境計画技術産業経済部門化学物質分野]は、

(a) 管理的及び事務局的支援を行う。
(b) 情報交換をはかる。
(c) 適切な場合には新たなパートナーが世界パートナーシップに参加するのを支援し、
世界パートナーシップの進捗に関し国際化学物質管理会議に報告することを促進する。

14. 議長は、世界パートナーシップの全体的調整をはかるためにメンバーの中から任命される。

リソース

15. 世界パートナーシップのメンバーとなった各組織または個人は、パートナーシップの活動の開発と実施に対するリソース(財政的または現物)又は専門性に貢献することを約束する。メンバーは、パートナシップを支援するためにリソースを提供することに関心を持つ潜在的な関連する政府又はその他の機関の寄贈者を特定するよう働くであろう。

16.予算と資金調達計画が各活動ごとにリード・スポンサー及び関心あるパートナーによって準備されるであろう。そのようなことをすべき立場の国と組織は特定されたリソースのニーズを提供することが望まれる。プロジェクト活動提案書のクイック・スタート・プログラムへの提出が行われるであろう。


原注

[18]Report of the World Summit on Sustainable Development, Johannesburg, South Africa, 26 August4 September 2002 (United Nations publication, Sales No. E.03.II.A.1 and corrigendum), chap. I, resolution 2, annex.

[19] 一人の貢献者が、戦略的アプローチの範囲を超えるので、”雇用(employment)”を削除するよう提案した。



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