ChemSec ChemSec 2009年5月16日
SAICM:必要な達成からはほど遠い

情報源:International Chemical Secretariat(ChemSec)
16 May 2009 Geneva, Switzerland
SAICM falling short of vital achievements
http://www.chemsec.org/news/283-saicm-falling-short-of-vital-achievements

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2009年6月13日


 一週間の交渉の後、第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)は5月15日にジュネーブで、いくらかの進捗は示したが、2020年までに環境と人の健康への化学物質有害影響を最小にするというSAICMの目的からははるかに遠い。

 ICCM2の主要な点は、現在までのSAICM実施を評価することであり、SAICMの長期的な財政を検討し、また、いわゆる喫緊の政策課題(ナノテクノロジー、製品中の化学物質、塗料中の鉛、電子廃棄物)に目を向けることである。いくらかの”前進”は見られたものの、喫緊の政策課題に関する最終的な決議は全て、期待からはほど遠いものであった。

 肯定的な面では、ICCM2 の全ての代表者らは、適切で受け入れられる長期的な持続可能な資金メカニズムが化学物質の安全を達成するために重要であるということに同意した。代表者らは開発援助に焦点を当てたが、より大きな潜在的資金源は、年間3兆ドル(約300億円以上)の総売上がある世界的な化学産業である。

 しかし、その資金を持っているにも関わらず、化学産業は、諸国が化学製品を管理することを支援するために直接SAICMに資金提供することをICCM2で繰り返し拒否した。

 莫大な売上と規模にも関わらず、産業は彼等が製造する製品からの危害の緩和に貢献する責任を感じているようには見えないと− ケムセック(ChemSec)代表のアンソフィー・アンダーソンは述べている。これらの製品は相当な有害影響を与え、そのために我々全てが金を支払っている。しかし、まず第一に責任がある産業は踏み込んで彼等の責任を真に負うことをしない。

 製品中の化学物質に関する情報についての政策の分野では、エンドユーザーと消費者を含むサプライチェーンを通じての情報の必要性に焦点が当てられた。推進派は、多くの国の公衆の懸念にこたえて消費者製品中の化学物質に関する情報を増やすよう主張した。作業部会に対して製品中の化学物質に関する情報の流れを改善するための可能性あるシステムを報告するようよう要求がなされた。しかし、化学産業の代表らはアメリカとともに、データベース、規制及び産業イニシアティブについてすでに存在する情報だけに範囲を狭めた。

 ケムセック代表アンソフィー・アンダーソン:必要なことは、情報に基づいた選択をし、製品中の化学物質の有害影響から自分自身を守るための情報要求を与えるために、会社にも消費者にも等しく情報を提供する構造とシステムの開発である。SAICMの結果はこの様なことを提供しない。

  SAICM の製品中の化学物質に関するサイドイベントで、ChemSecはパネルで発表した。プレゼンテーションで、ChemSecの上席政策顧問ナルドノ・ニンプノは、会社が自社で取り扱っている物質や製品中にどのような化学物質が使われているのかについて見つけようとしたときに、サプライチェーン中でほとんどの会社が自分自身でしばしば気がつくでたらめな状況について述べた。ナルドノ・ニンプノによれば、スカンスカ(Skanska)、ソニー・エリクソン(Sony Ericsson)、ブーツ(Boots)のような正しく持続可能な選択をしようとする会社がケムセックのビジネス・グループ中に存在する。しかし、しばしば個々の関係者が自身のシステムについて取り組もうとしても、それは煩わしく、高くつく。そうではなくて、情報は、川下の化学物質の安全を保証するために、川上で利用可能なようにされなくてはならない。ケムセックは、この重要なSAICMイニシアティブが、有害物質の上流での廃止を確実なものにするために重要な包括的情報システムを達成することに拍手喝采する。

 世界中の開発途上国における電子廃棄物の流れを食い止めるために、アフリカ地域の53か国とペルーが製造者責任に目を向け、寿命に近い電子機器が有害廃棄物として投棄されるようになることを防止するために、作業共同プログラムを提案した。しかし、ICCM2 の最終結果は、電子製品のライフサイクルを特定し評価するためのワークショップを開催し、2012年の ICCM3 で勧告をするということになった。

  IPEN 共同代表であるジャミズ・カティマ教授の言葉は、発生源の送り側と受取り側諸国間の積極的な共同行動の代わりに、ICCM2 はたったひとつのワークショップを与えただけであった。代表者らはこのただひとつのワークショップを計画している間に、我々の海岸には数百万トンの有害電子廃棄物が送り込まれるであろう。

 ナノ・テクノロジーに関する喫緊の懸念に関し、今までに国際的な合意が表明されているにも関わらず、ICCM2 の結果は後退した。2008年9月に71か国政府が、予防と工業的ナノ物質を含む消費者製品の表示を勧告する決議に合意した(訳注1:ダカール宣言)。しかしジュネーブでは、主にアメリカの圧力の下に、この会議の行動の要点は単に、情報提供など限定された領域にのみ、対応することとなたった。

 喫緊の政策課題、塗料中の鉛に関して、代表者らは、世界中で塗料中の鉛を除去するというNGOの提案を承認した。目標は3年以内に達成されるべきことである。

 ジュネーブにおける控え目な達成では、SAICMを2020年目標を達成するための高いレベル押し上げていない。ICCM2 はプロセスを前進させたが、その実施は遅く一様でもはない。代表者らは、SAICMがその真の能力にこたえることを確実にするための政治的意思の観点から、何も確信させことはなかった。。適切な構造と資金に支えらたこの意思は、国際的な化学物質管理の分野において前進するために重要である。


注:  国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ Strategic Approach to Chemicals Management(SAICM)は、持続可能な開発に関する2002年ヨハネスブルグサミット(WSSD)において合意された目標;すなわち、2020年までに化学物質が人の健康と環境への有意な悪影響を最小限にするような方法で使用され、製造されることを確実にすることを達成するために、適切な化学物質管理を促進するための政策の枠組みとして確立された。

ケムセック発表資料


訳注1



化学物質問題市民研究会
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