ChemSec 2006年2月7日
SAICM:化学物質交渉 沈没せずに救助される

情報源:International Chemical Secretariat(ChemSec)
ChemSec News & Events, 7 February 2006
SAICM: Chemicals negotiations salvaged


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年2月8日


 異常な深夜に及ぶ交渉の後、撃沈攻撃を受けていたSAICMプロセスは最終的には救助された。3日間の交渉の後に、そのプロセスは最終日の最後の土壇場で暗礁に乗り上げたかのように見えたが、参加代表団は、参加団体の承認が得られる妥協案を通すための努力を行い採択された。

 アメリカ代表団による激しいキャンペーンの後、全ての決議は満場一致で採択されねばならなかったので、最終的な結果はアメリカの承認を得るために大きな妥協を含むこととなった。

 公式の交渉は公式議題の最後に暗礁に乗り上げたので、様々な地域、政府間組織、及び非政府組織を代表する代表団からなる”救助部隊”がこのプロセスを救うために指名された。最終日の2月6日(月)深夜、救助部隊は妥協案を提示し、その妥協案は異常な深夜の総会で協議された。

 最終結果のひとつは、適切な資金調達入手の必要性の問題を扱うことができると開発途上国によりみなされた合意である。”クイック・スタート(Quick-start)”のために約束された資金調達と組み合わせて、資金調達を今後の交渉のための緊急課題であると強調していた主に欧州連合加盟諸国も新たな妥協を受け入れた。

 しかし、妥協案はSAICMをさらに弱体化させることとなった。例えば、スコープ(対象範囲)、予防原則、その他アメリカの要求に応じるための主要な論点として:
  • 予防原則は、残念ながら、SAICMは1992年のリオ宣言の引用を”考慮する”と言及するに留まった。
  • スコープが狭められ、国内の規制が食品と医薬品をカバーしている場合には、それらをSAICMから除外する可能性を与えた。
  • SAICM実施のタイム・フレームに関し、アメリカは次回の会議を2011年まで延期することを主張したが、最終的には次回会議 ICCM2 は2009年に開催されることで合意した。
 ドバイの交渉に参加した Chemsec 代表パール・ロザンダーは次のように述べている。”合意された妥協案では、リオ宣言は引用されているだけである。この予防原則に関する言及の仕方は非常に弱く、1992年になされた合意に従っていない。しかし、我々はSAICMの全体を救うために妥協にいたるよう努力した。”

 既に報告されているように、多くのヨーロッパ諸国は、”クイック・スタート”プログラムに対して1,000万ドル(約11億円)出すことでSAICMを支援することを約束している。しかし、SAICMを本気で実施するためには、他の政府や世界銀行や地球環境ファシリティ(GEF)などのような大きな機関からの、さらなる貢献が求められる。資金調達の問題はまだ解決されていない。

 ドバイでシャンペンのボトルを開ける理由はないとパール・ロザンダーは述べている。アメリカは環境保護を推進するよりも商業的利益を守ろうとしている。それにも関わらず、SAICMは動き出したし、我々は世的界戦略を達成した。

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