ヘルス・ケア・ウイズアウト・ハーム (Health Care Without Harm) から
ブッシュ大統領への書簡

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
情報源:US Intervention in EU Chemical Policy (Appendix 1)
Published by Clean Production Action, September 2003
http://www.cleanproduction.org/library/USIntervention.pdf
掲載日:2003年9月14日


2003年9月9日
大統領ジョージW.ブッシュ
The White House
1600 Pennsylvania Avenue NW
Washington, DC 20500
親愛なる大統領、

 我々は、環境健康専門家、医師、看護婦(士)、子どもの健康擁護者、環境団体、及び地域共同体を代表して、REACH (Registration, Evaluation, and Authorization of Chemicals) とも呼称される欧州連合の化学物質政策改革案を脅かそうとするアメリカ政府の行為に対し深い懸念の意を表明するためにこの書簡を差し上げる。我々は、あなたが、あなたの政権内の主要な高官たちに連邦政府の金を使ってこの重要な法案をつぶそうとする試みを止めさせ、公衆の健康に利益となる化学物質政策の進歩的な改革案を支援する方策を探させるよう要求する。

 アメリカ政権は、国務省、商務省、アメリカ通商代表部、及びアメリカ環境保護局(EPA)を通じて、欧州の改革案に反対して積極的にロビー活動を行っている。我々は、特にアメリカ政府の立場がアメリカの化学製造業界の偏狭な利益のみをを密接に反映し、危険な化学物質からアメリカとヨーロッパの公衆を守る政策を確実にしようと活動している公衆健康と環境の擁護者だけでなく、環境によりよい、より安全な化学物質から利益を得る他の産業を除外していることに問題があることがわかった。

 最近のアメリカ、カナダ、及びヨーロッパの科学的証拠は、テストも規制もされていない化学物質が人の体の組織や母乳に蓄積していることを示している。また毒物学的発見により、ある化学物質は非常に低用量の暴露でも、先天的障害、生殖障害、及び神経系障害を含む非常に深い繊細な影響を生じることがわかった。我々は特に一般大衆の中で測定されている広範囲な化学物質について懸念を持っている。ある物質については水銀のように、その毒性は疑いの余地がない。また、他の物質については、適切な毒性テスト・データが簡単に入手できない。これらの物質に公衆が暴露し続けているので、人間の健康と環境を守るために、広範な安全性テストが明らかに必要である。

 REACH の下で提案されている化学物質管理システムは、アメリカ及びヨーロッパの現在のシステムの多くの欠陥に目を向けている。ご存知のように、アメリカの手ぬるい化学物質規制は、今日、市場に出回っている化学物質の95%は健康と環境に対する潜在的な影響に関する基本的なテスト・データがないという情況を生み出した。

 REACH は、まず最初に、年間 1トン以上製造される叉は使用される既存及び新たな化学物質の健康に関するデータを要求し、これらにより空白の情報を埋めることから始める。REACH は、難分解性で環境中に蓄積する化学物質に加えて、発がん性、突然変異誘発性、及び生殖毒性を有する本質的に有害な化学物資を制限し、ある場合にはその使用を禁止する。ある特定の化学物質が市場で使用されても安全であることの証明を製造者に求めることは常識であり、化学物質管理として当然なされていなければならなかったことである。

 アメリカ政府と化学産業界は、REACH で提案される化学物質のテストにかかるコストは産業界にとって重荷になると主張している。しかし、最新のヨーロッパ理事会の推定によれば REACH 改革の全コストは40億ユーロ(約5,000億円)叉は欧州連合の化学物質の年間総売上のわずか0.1%であるとしている。これは環境保護のための投資としては非常にささやか金額であり、特に、医療、汚染管理、及び化学物質による汚染浄化に数十億ドルを費やすことと比較すればなおさらである。

 アメリカ政府と化学産業界の RREACH に対する反対は、また、お粗末な環境汚染管理に起因する人間の被害と病気の計り知れないコストを無視するものである。金銭的なコストだけでも驚くべきものがある。アメリカでは、マウント・シナイ医学校の科学者たちが、環境汚染に起因する子どもたちの鉛中毒、ぜん息、がん、及び神経行動障害にかかる年間コストは549億ドル(約6兆5,900億円)と算出している。EU では、環境長官マルゴット・ウォールストロームが、REACH は、がんに関して年間2,200から4,300症例削減するとともに、医療費に関しては今後30年間で200億〜600億ドル(約2兆4,000億〜7兆2,000億円)が節約できると算出している。

 我々は、アメリカ政府がアメリカの消費者及びビジネス界に潜在的な利益をもたらすことを認め、EU の化学物質政策改革を妨害することを止めるよう強く求める。我々は現政権が、アメリカ環境保護局、アメリカ通商代表部、商務省、及び国務省を通じて、NGO やビジネス界を含むアメリカ国民に将来を見据えた化学物質政策に関するパブリックコメントを求め、21世紀の新たな経済的現実を用意することを要求する。

 本件についての問い合わせ
Charlotte Brody, R.N., Executive Director
Health Care Without Harm
1755 S Street NW Suite 6B
Washington DC 20009
202-234-0091

あなたの対応ををお待ちしています。

敬具

(以下署名 数10人、及びCCのあて先20強については訳省略)

(訳: 安間 武 /化学物質問題市民研究会)


化学物質問題市民研究会
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