EurActiv 2007年1月23日
化学物質政策 REACH レビュー

情報源:EurActiv, 23 January 2007
Chemicals Policy review (REACH)
http://www.euractiv.com/en/environment/chemicals-policy-review-reach/article-117452

訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年2月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/070123_REACH_review.html


 長い間の熱い議論の果てに、EU議会は、産業側に彼らの製品が市場に出される前に安全であることを立証することを求めて、ヨーロッパにおける化学物質の承認方法を見直す広大な提案に同意した。化学物質の登録、評価、認可( Registration, Evaluation and Authorisation of CHemicals (REACH))と呼ばれるこのシステムは、人の健康と環境に対して化学物質をより安全なものとすること、及び産業の革新を鼓舞することを目指すものである。2007年6月に発効する。

最新の状況と今後の予定

 2006年12月13日:議会投票
 2006年12月18日:理事会合意
 2007年6月:REACH発効
 2008年6月:欧州化学物質庁運用開始、事前登録開始
 2018年6月:低生産量物質(1-10トン)の登録終了

背景

基本的な社会経済的事実
 化学産業はEUでは三番目に大きな製造産業であり、170万の直接雇用と300万以上の間接雇用を生み出している。EUは世界の化学物質の31%を生産している (アメリカは28%)。

化学物質にはどのような問題があったのか?
 化学物質の問題は1981年以前に市場に出された約10万種の化学物質(既存化学物質)の99%に関する知見の一般的な欠如である。これは、1981年以前は市場に出すために厳格な健康安全テストが必要ではなかったためである。
 アスベストのようないくつかのよく知られた化学物質はすでに禁止されていたが、欧州委員会はがんや白血病のような疾病発生の増加は化学物質に関係があるのではないかと信じている。ヒトと動物の血液検査は毒性が知られている有害物質で汚染されていることが示され、それらはどのような経路で体内に入り込んだのか、それが健康に及ぼす影響はどの程度なのかについての疑問が提起された。

論点

 このシステムの下では、”既存”と”新規”の全ての化学物質は11年間にわたって健康と安全に関して検証されることになる。
 このシステムの中心は化学物質の製造者と輸入者は彼らの物質を市場に出す前にそれらが安全であることを証明するこことが要求されていることである。従来のシステムでは、市場に出ている物質が脅威を及ぼすことを立証することは当局に求められていた。(立証責任の移行)
 ヘルシンキに設立される新たな化学物質庁は申請を認可又は拒絶する業務を行う。登録をしないとその物質はEUで製造又はEUへの輸入をすることができなくなる。

登録

安全の審査と登録は二つの広範な基準に基づいて三段階で行われる。
  • 年間の製造量又は輸入量:
     1000トン以上は3年以内
     100〜1000トンは6年以内
     1〜100トンは11年以内

  • リスク:高懸念物質は最初の三年以内に優先的に評価される。これらは、CMRs(発がん性、変異原性、生殖毒性)、PBTs(残留性、生物蓄積性、毒性)、vPvBs (高難分解性、高生物蓄積性)、及び”同等の懸念あるその他の物質”である。
     最後の土壇場で、登録手続きの最初の段階は、産業側にもっと準備期間を与えるために3年から3.5年に延長された。
 さらに、登録手続きを可能な限り簡素化するために次の規則が合意された。

  • グループ申請:一物質一登録(OSOR)原則により会社は化学物質庁に同類の物質を登録する時には共同でコンソーシアムを形成して安全性データを提出することを求められる。この必須原則から抜けること(オプトアウト)はデータの開示が商業的利益を損ねる又は彼らの知的所有権を侵すことを証明できた場合にのみ許される。
  • 1-10トン範囲:少量生産・輸入物質(年間1-10トン)は産業側にかかるコストを軽減するために健康安全テストを全て実施することは免除された。その数は約17,000種と推定される。見直し条項として採択の7年後にこの規制を強化するかどうか決定することとなった。この免除はヒトの健康と環境に特定の懸念を及ぼさない化学物質にだけ適用されると言われている。
  • 10-100トン範囲:会社は、もし当該物質によって及ぼされる健康リスクが”適切に管理される”ことを証明することができるなら安全テストの免除(棄権オプション)を申請することができる。

認可

 最も有害な物質がより安全な代替物質に代替されるべき条件をめぐって、閣僚理事会と議会との交渉において最も激しい議論があった。最終的な合意は:

  • PBTs と vPvBs は、許容できる社会経済的コストでより安全な代替が入手できるなら代替されるべきこと。このことはその物質を市場からなくすことによる健康と環境への利益は、その物質を市場に残しておくこと(例えば、雇用又は代替の難しさという観点)に勝るということを意味する。
  • 発がん性と変異原性化学物質(CMRs)については規制がもう少し緩く、もし製造者がそれらが及ぼすリスクが”適切に管理される”ならその物質は認可される。このことは、科学者らは、ヒトの体内におけるその物質の存在が健康リスクを及ぼすとみなされない”安全閾値”に合意することができるということを意味する。
    • もしより安全な代替が存在するなら、会社は最終的に代替する代替計画を提出することが求められる。
    • もし、より安全な代替が容易には入手可能でないなら、会社は将来の代替のための研究開発計画を作成することが求められる。
  • しかし、生殖に有害な物質(内分泌かく乱物質)はこの条項から除外された。この規制が発効後6年間、この課題に関する新たな科学的進展を考慮して検証を行う。
  • 代替の期限は物質毎にケースバイケースで決定される。
  • 免除は研究開発で使用される化学物質についても与えられる。
  • 安全性データはサプライチェーンを通じて流されるので、微妙なビジネス情報の機密保護のための配慮がなされ、データ保護期間は3年から6年に延長された。
  • 会社は、ある物質の調剤の完全な構成成分、正確な用途、生産量、川下ユーザーとの関係などの詳細な機密を保持することが認められる。

化学物質庁

 議会は認可に関する権限を与えたが、将来の化学物質庁をヘルシンキに設立すること関する合意を得た。
  • 議会によって二人のメンバーが指名される。
  • 化学物質庁の長官は議会で彼の政策の概要を説明し議会の審査を受けた後に認証される。

その他の局面

  • システムの範囲
    • ポリマーは登録から免除された。
    • 成形品中の物質に関する登録要求は緩和された。
  • 産業に対する”一般注意義務”条項は、会社が際限のない責任要求が求められることを恐れたので、もっと明確に定義された。
  • コスト低減化を図るために、化学物質の下流側産業ユーザーが安全評価報告書を作成する責任は著しく制限された。

立場

 提案された規制の経済的影響に関し、欧州委員会、産業、及びNGOsは非常に異なった算定を行った。欧州委員会は全体の経済影響を11年間で約23億ユーロ(約3,600億円)(化学案業界の年間売り上げの0.05%)であると算定したが、その数値については産業側によるドイツのBDIとフランスのマーサーによって実施された調査により激しく異議を唱えられた。一方、NGOsは産業側にかかるコストを公衆健康の社会的コスト削減と環境に及ぼす影響の低減と比較した。

 最終的な合意に関しては、反応は混在している。欧州化学工業連盟(CEFIC)の理事長アラン・ペロイは、REACHの認可に有害物質の代替に関連して不必要な要求が加えられたことは遺憾であると述べた。
 ”それは明らかにコストに加算される”と代替が”規制と管理のアプローチ”によって統治することができるというのは”錯覚”であると非難するペロイは述べた。最後の結果はビジネスの”法的不確実性”であり、その結果、投資と革新の縮小となるとペロイは警告した。

 欧州技術協会 Orgalimeは、REACHは携帯電話のような消費者製品に含まれる多くの化学物質を使用する会社のサプライチェーン全体に変更を余儀なくさせるであろうとし、”同等に機能し信頼性のある新たな供給者を見つけることは必ずしもやさしい伊湖とではない”と Orgalime事務局長アドリアン・ハリスは述べた。

 欧州ユーロメタックス(Eurometaux)のガイ・シランは金属産業で使用される主要な原料はREACHの下ではより高価なものになると警告した。彼は天然に産する鉱石などの物質はREACH草稿で定義された分類に相応しくないと指摘した。”金属は元素であり、従来の人工の物質ではない”とシランは指摘した。”合金は単純な調剤のように実際には振舞わない。”

 しかし、UNICE(使用者団体)、CEFIC、Eurometaux、Orgalimeのコメントの全てが否定的なものではない。彼らはREACHのある局面は”正しい方向に動いている。”
 ”会社は、年間10トン以下の製造・輸入される物質の化学と的安全報告書を作成する必要がなくなった。これはよいニュスーであり、特に中小企業にとってよいことだ”彼らは述べた。

 ”他の例は、不当な競争相手から情報を保護するために物質名の機密保護を要求するかもしれない”データ保護”に関連することである。”

 中小企業団体は、少量生産量物質の安全評価を削除することによって中小企業にとって煩雑な手続きを容易になものにした努力は評価する。しかし全体としては、その結果には”全く失望した”と中小企業団体 UEAPME は述べた。

 欧州労働組合連合(ETUC)は、製品が安全であることを証明する立証責任が明確に製造者に移行したことを歓迎した。”産業側は彼らの化学物質を市場に出す前にその安全性に関する情報を提供しなくてはならないということは明らかな進展である”とETUCのジョウエル・デカイロンは述べた。

 環境団体は、この合意に疑問を持っている。肯定的な点としてグリーンピースとWWFは次の事実を歓迎した。
  • 会社は大量に生産又は輸入される(年間10トン以上)化学物質の安全性を証明する責任があるということ
  • 残留性及び生物蓄積性のある化学物質について、もしより安全な代替が存在するなら代替するメカニズムができたということ
  • 公衆は製品中の化学物質の存在に関する情報を質問することが許されること
 しかし、否定的点として、彼らは”重要な抜け道”があると指摘した。それらには下記が含まれる。
  • 発がん性物質と出生障害及び生殖障害をもたらす化学物質の安全要求が緩和されたこと
  • 少量輸入物質(年間10トン以下)には”意味のある安全データ”が求められていないこと
  • ”高懸念”化学物質について、ヒトの健康に脅威を与えないと考えられる”安全閾値が定義することができる場合、”製造者が”適切に管理”できると証明することができれば、市場に出すことが許されること


化学物質問題市民研究会
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