EurActiv 2006年12月5日
REACH 妥協案 非難の集中砲火

情報源:EurActiv, 5 December 2006
REACH compromise under fire
http://www.euractiv.com/en/environment/reach-compromise-fire/article-160203

訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年12月8日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/061205_REACH_compromise.html


論点:

 12月1日、イタリアの社会主義者ギド・サッコーニは、EUで最も議論ある法案のひとつに関し、EUで立法に関係する三つの機関である議会、理事会、及び委員会が深夜まで行った交渉の結果到達した合意・妥協案の交渉の詳細を明きからにした。

 議会の3大党派である、中道右派の欧州人民党−欧州民主党(EPP-ED)、欧州自由民主連盟(ALDE)、欧州社会主義グループ(PES)及び欧州自由民主連盟(ALDE)はすでに妥協案支持の姿勢を示していたが、11月30日の長時間議論の後妥協案に同意した。

 妥協案は12月13日の議会で投票にかけられた後にEU閣僚会議に送付され形式だけの承認を得る。

 議会におけるREACHの交渉責任者であるサッコーニは、REACH規制は化学産業界にとって金がかかりすぎるとするドイツと産業側の懸念を考慮して彼はREACHの志のレベルを下げざるを得なかったと告白した。”これ以上の妥協にいたることは不可能であったということを理解してほしい”とサッコーニは述べた。

 合意の中心的事項は最も有害な物質がより安全な物質に代替されるための条件であった。
  • 残留性及び生物蓄積性化学物質(PBTs、vPvBs)は、経済的なコストでより安全な代替が入手可能なら代替されるべきこと

  • しかし発がん性、変異原性、生殖毒性物質(CMRs)に対するは条件はもっと緩く、製造者がリスクが”適切に管理される”ことを示すことができれば認可される。このことは科学者らは、有害物質が人の体内に存在しても健康にリスクを及ぼすことはないと考えられる”閾値”を決めることができるということを意味する。
    • もしより安全な代替が存在するなら、会社は最終的にはそれらに代替できるよう代替計画を提出することが求められる。しかし、
    • もしより安全な代替が容易に入手できないなら、会社は後々の代替のために研究開発計画を作成することが求められる。生殖に有毒な物質(内分泌かく乱物質)はこの条項から除外される。新たな科学的的進展を考慮するためにREACHが発効してから6年後にこの件に関し見直しが行われる。
  • 代替の期限はケースバイケースで物質ごとに決定される。
  • 登録手続きは、産業側にもっと時間を与えるために3年から3.5年に延長された。
 生産量又は輸入量が少ない物質(年間1〜10トン)は産業側にかかるコストを下げるために完全な健康及び安全のためのテストは免除される。その数はおよそ17,000種と見積もられる。ここでもまた、発効7年後の見直しにより規制を強化するかどうか決定する。

 機密に関わるビジネス情報を保護するための努力がなされ、サプライチェーンを通じて流されるデータの保護期間が3年から6年に延長された。会社は、調剤中の完全な成分、正確な用途、製造量、及び川下ユーザーとの関係のような詳細は機密とすることが許される。

 サッコーニは認可の面では譲歩したが、ヘルシンキに設立される将来の化学物質庁に関する面では満足を得た。
  • 議会によって二人が指名される。
  • 化学物質庁の長官はプログラムの概要を示すことになる議会での審査を受ける必要がある。
立場:

 議会最大党派である欧州人民党−欧州民主党(EPP-ED)の交渉責任者であるリア・オーメンルイジテン議員は、”重要事項”についてはうまくいったと述べ、”私はこの妥協を喜んで支持する。欧州人民党−欧州民主党(EPP-ED)の提案は多くの官僚主義を取り除くために提示されたので、この指令は事務的な煩雑さが少なくなるであろう”と付け加えた。

 ”我々はまた、新規化学物質を製造するために重要な情報が登録手続きの間に全て公開されることにより長年の研究費が無駄になることがないよう、機密ビジネス情報の保護を改善した”と彼女は付け加えた。

 欧州化学工業協会、CEFICは、まだこの妥協案の詳細を分析中なのでコメントをすることはできないと述べた。

 欧州社会主義グループ(PES)としてギド・サッコーニは、交渉における妥協はバランスの取れたシステムに導き、欧州産業界の競争力を維持し、より安全な化学物質の革新と開発を促進しつつ、公衆の健康と環境の保護を高いレベルで確保するものであるとサッコーニは述べた。

 欧州自由民主連盟(ALDE)のクリス・デービス議員は、最も重要なことは会社はこれからは自分達の物質が安全であるということことを実証しなくてはならないということであると述べた。しかし、彼は交渉の進展を妨げた欧州委員会とドイツを非難した。

 ドイツはREACHを強化することを阻止するために党派の支持を得ることをうまく成功させたということを示しつつ、”過去数年間、部屋にいたならず者はドイツであった”とデービスは述べた。お互いの部局を裏切るよりは沈黙を守ることをよしとして分断された環境総局と企業総局間の葛藤を指摘しつつ、”このならず者の姉妹が欧州委員会である”とデービスは述べた。

 調停役としての役割果たさなかったと交渉を通じて非難された欧州委員会は、”妥協案を歓迎する”と述べた。”健康と環境に関し現状を大きく改善するものだ”と欧州委員会環境委員のディマスと企業・産業委員フェアホイゲンは述べた。

 議員は”ドイツ化学産業界からの激しいロビーイングで寝返った”として、議会のグリーンズは深く失望した。化学産業側に立つ裏口政治家らは理事会において特定の国、及び議会を通じて最後には切り崩しに成功した”とグリーンズは声明の中で述べた。

 ”妥協案の下で、代替計画を作成する義務は必須であるが、その計画を実施することは義務ではない。もうひとつの問題は計画起草者が製造者であり、したがって彼らが自身の利益にがそぐわない計画を立てることはありそうにない。”

 環境団体は怒り狂い、議会はこの妥協案を拒否することを要求した。”この妥協案は、がん、出生障害、及びその他の深刻な障害をもたらす非常に高い懸念のある多くの化学物質が、より安全な代替物質が入手できるにもかかわらず、市場にとどまり、消費者製品中で使用されることを許すものである。”

 WWFの有害物質プログラムの上席担当者であるニンジャ・レイネケは、この妥協案は結局はビジネス側の"自主的"規制となったとWWFは述べた。”明確なプロセスがない、代替の明確な目的がない”と彼女は述べた。

今後の展開:

2006年12月13日議会投票(過半数の賛成が必要、すなわち総投票数732のうち367の賛成票が必要)
2006年12月18日理事会の形式的な同意
2007年4月:REACH発効予定



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