REACH パブリック・コンサルテーションと影響評価の結果
情報源:Proposal for a REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL concerning the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH), Volume I Brussels, 29.10.2003 COM(2003) 644 final これは REACH 最終提案書 Brussels, 29.10.2003, COM(2003) 644 final Volume I 中の Results of public consultations and impact assessment を翻訳したものです。 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2003年11月17日 ■パブリック・コンサルテーション 欧州委員会が 2001年2月に ”白書:将来の化学物質政策戦略(COM (2001) 88 final)” を発表した後、その内容改善の必要性に関する広範な総意が見られた。欧州閣僚理事会と欧州議会は、現在使用されている化学物質の有害性、リスク、及びリスク削減方法に関する有効な情報の作成・提供に関する責任をより大きく産業界に求め、危険な物質は安全に使用されるという保証が得られる効果的な仕組みと手法を開発することについて明確に賛意を示した。 産業界は、自分たちの化学物質の安全性に対しより大きな責任を持つという新たな政策の方向性について歓迎した。同時に彼らは競争力に与える影響について懸念した。 環境 NGOs (非政府組織)及び消費者団体は、白書の内容の改善の必要性について強く支持した。 ■インターネット・コンサルテーション 2003年5月、欧州委員会は、ドラフト REACH に関し、範囲と目的ではなく、その技術的要件を含む実施可能性について検討するためにインターネット・コンサルテーションを実施することを決定した。コンサルテーションは 2003年5月15日から7月10日までの期間で実施された。応答者はインターネット上の質問書、電子メール、FAX、標準様式又は自由形式の手紙など、いくつかの方法を通じて意見を提出することができた。 全ての意見はインターネット上で公表されたが、名前は匿名を希望する応答者については記載しなかった。 (訳注:Contributions from Governments and Public Authorities から 主要国のコメントを一部翻訳紹介) 6,000通以上の明確な意見が寄せられた。そのうち42%は産業界・企業関連であり、NGO からは労働組合を含んで142通あった。 EU 加盟国からは 5カ国政府(オーストリア、アイルランド、フランス、オランダ、イギリス)及び、それ以上の数の加盟国の公共団体がコメントを寄せた。加盟予定の 3カ国(ラトビア、リトアニア、ポーランド)からの公共団体、非加盟国の政府及び公共団体(オーストラリア、カナダ、チリー、中国、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、ノルウェー、シンガポール、スイス、タイ、アメリカ)、及び、国際組織であるアジア太平洋経済協力機構(APEC)及び、経済協力開発機構(OECD)もコメントを寄せた。 寄せられたコメント全体の半分は個人からのものであった。多くが動物実験に関連する問題提起、その他、失業の脅威を表明するもの、環境と人間の健康の保護を高めること及び消費者へのより良い情報を求めるものなどがあった。 さらに、34,000の個人及び団体が署名した 2つの請願書の提出があった。 ■主要な論点 システムの範囲 ポリマー及び製品中の物質を含めることについて EU 産業界と域外の通商相手諸国から、その実施は過度で困難であるとして批判された。 全ての製造者、輸入業者、及び川下ユーザーに化学的安全性評価を求めることも白書の提案の程度を超えるものとして批判された。
産業界は注意義務(duty of care)が無制限な責任を要求することを恐れた。彼らはまた、新設予定の欧州化学品機構に異議申し立ての仕組みが不十分であることについての懸念をあげた。
産業界、いくつかの加盟国、及び多くの域外通商相手諸国は、過大なコスト、特に生産量の少ない化学物質、川下ユーザー、及び中小規模企業(SMEs)にかかるコストに関する懸念を表明した。
多くの関係者が、REACH の事務手続きが非常に煩雑で、業務の分担(加盟国及び欧州化学品機構)が非常に複雑であるという事実を批判した。彼らはまた、意思決定に当たり一貫性が保てないとの懸念を表明した。
産業界、特に川下ユーザーはビジネス上の機密の開示を強制されるかもしれないという懸念を表明していた。NGOs は成形品の化学物質組成に関し、高いレベルの透明性を主張していた。
NGOs、産業界の一部及び EU 加盟国の一部は、代替に関するより強い条項を設けるべきであると主張した。
この提案のドラフト作成に当たって動物実験を制限することが一つの指針であった。”毒性、生態毒性、及び環境に関する科学委員会(CSTEE)”は、彼らが認識している動物テストではリスクを回避するために十分な情報が得られないことを懸念し、もっと多くのテストが必要であると述べた。
提案されたシステムにより起こりうる影響について、いくつかの特別な研究が実施された。これらの研究結果は影響評価の作成に用いられた。この提案を実施していく過程で、その影響を監視し、対応していく。関係者もこの実施に招聘されることになる。 事務手続きについては、白書は、新たなシステムには REACH の運用に関し主導的役割を果たす”中心組織”の創設が必要であるとしている。当時は、その”中心組織”はヨーロッパ化学物質局(European Chemicals Bureau (ECB))のイスパラにある合同研究センターの一部を拡張して、新たな業務を遂行することが考えられていた。 しかし、その後、ECB を拡張しても、新システムにより大幅に増大する業務に効果的に対応することはできないという厳しい指摘があった。従って、欧州委員会は企画化調査を実施した。全ての要素を注意深く検討した結果、欧州委員会は、提案 REACH システムの効果的な実施には独立した機関が本質的であるとの結論に達した。従って、提案では新たな”欧州化学品機構”を設置することとした。 専門家投入の効率性、連続性、最適性を考えると、新機構の設置場所はイスパラが最もふさわしいと考えられる。
■専門家の確保と投入 白書の発行の後、欧州委員会は広く専門家について調査した。これは、諸会議、関係者のワーキンググループ、担当者間の折衝の過程で実施された。2001年及び2002年に欧州委員会が召集した8つの技術ワーキングが特にこの点で考慮された。関連する専門家との協議はドラフト作成の過程で実施された。 |