![]() ケムセック(ChemSec) 2009年2月 SIN Reporter 1 2009年春季号 情報源:The International Chemical Secretariat SIN Reporter 1, Spring 2009 http://www.chemsec.org/downloads/?filename=sin_reporter_1.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2009年2月25日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ChemSec/SIN_Reporter/SIN_Reporter_1.html 論 説 大海に乗り出した揺れるボート パール・ロザンダー、ケムセック代表 (Per Rosander, Director ChemSec) SIN Reporter 第1号にようこそ。 昨年の9月にブリュッセルで発表されて以来、SIN(Substitute It Now!/今すぐ代替を!)リストは、建設的な議論だけでなく、建設的な行動を鼓舞する大海に乗り出した揺れるボートである。 SINリストは、EUの新たな化学物質法であるREACHによって確立された基準に基づき、非常に高い懸念のある物質(SVHC)として特定されれた267種の化学物質からなる。我々のコンセプトは明快である。危険な化学物質をより安全な代替物質に換えることである。 急いで推進すべき 力強いREACHの枠組みは1年以上前に決まった。この間、わずか15物質だけが高懸念物質をリストするEUの候補リストにあげられた。消費者は初めて、これらの有害物質が製品中に含まれているかどうか知る権利を得た。最も重要なことは、候補リストはこれらの化学物質をきっぱり廃止するための第一段階であるということである。SINリストは、候補リストに含まれるべき広範な化学物質をハイライトすることにより、法制定プロセスの迅速化をはかるものである。 有害物質には国境はない SINリストへの関心は現在、ヨーロッパの外に拡大している。我々の招待寄稿者であるワシントンの国際環境法センターの上席顧問であるダリル・ディッツは、SINリストの”海を越えて”世界に広がる関心と、アメリカ、カナダ、及び日本における最近の報告書、会議及びその他の取り組みの中で注目されていることについて述べている。例えばイノベスト社(Innovest)は、SINリストを用いてREACHの財政的リスクと機会を評価しており、サンフランシスコ市も最近このトピックについてワークショップを開催した。SINリストはまた、権威ある科学誌「Scientific American 」の中でとり上げられ、米国防総省すらそれを使用し始めている。アメリカは現在、SINリストへの準備ができているのではないか? ビジネスが先行 おそらく、最もすばらしいことは、先進的な会社が、企業の社会的責任 (CSR)や持続可能な取り組みの中で、SINリストを使用し始めたことである。ソニー・エリクソン、サラ・リー、スカンスカなどを含むケムセックのビジネス・グループが推進している。法制化される前に措置をとることにより、これらの会社は他の会社に対して従うよう範を示している。 すぐに代替を! ビジネス、地方及び国家政府、及びNGOsは、SINリストを立法に向けて適用し働きかける新たな利用法を特定している。我々はこの報告書でこれらの取り組みのいくつかをハイライトする。私は、SINリスト上の267物質がもはや我々の健康と環境に深刻なリスクを及ぼさないよう、それらの全てについてEUが措置をとるまでに長い時間がかからないことを望んでいる。 SIN Reporter 今号の内容 California dreaming meets the SIN List Carrefour substitutes Playing with chemicals CEFIC feels the heat EU Member states discuss SIN List ![]() SINリストは、ヨーロッパの外で注目を浴びている ダリル・ディッツ ケムセックから私にSINリストプロジェクトの助言委員会に参加してほしいと要請があった時に、私は”非常に高い懸念のある物質(SVHCs)”の基準に合致する化学物質を特定することによって、REACHの実施に再起動をかけるという目標に引き込まれた。作業が進展するにつれ、たとえ非公式な優先化学物質リストであっても、どの化学物質をプロセスや製品中で使うべきかについて日常的に決定している会社にとって、それらの会社がたとえ欧州連合域外で操業し販売しているとしても、価値があるということが明白になった。 2008年に発表されて以来、SINリストへの関心はREACHの法的管轄区を越えて拡大している。今、SINリストはEUの国境をはるかに越えて政策及びビジネスに価値があることが明確になった。
イノベスト社 リスクと機会を評価 ケムセック代替会議と時を同じくして、2008年9月の報告書で、国際的な投資コンサルタント会社であるイノベスト社(Innovest Strategic Value Advisors)は、世界の73の化学会社のためにREACHによる財政的リスクと機会を評価した 。イノベスト社は、ヨーロッパにおいてSINリストにある化学物質に頼っているために特に脆弱な会社と分野を具体的に特定した。これらの会社のそれぞれは世界の化学物質市場で商売しているので、SINリストの影響は国際的に広がっている。現在の景気の落ち込みに照らして、SINリスト化学物質に頼っている会社にとってその重要性はもっと大きくなるであろう。
米国防総省に受けとめられる 驚くべきことに、SINリストはまた、米国防総省によって十分に受けとめられた。国防総省の化学物質リスク管理プログラムが、軍の使命や人の健康と環境に有害影響を及ぼすことができる”新たに出現する汚染”を特定し、先を見越して管理するためにSINリストを使用している。国防総省は、軍に対するるREACHの可能性あ影響を評価し管理するためにSINリスト化学物質の軍での使用を見直している。さらに、彼らは在庫品における潜在的な代替の優れた指標としてSINリストを見ている。もし、独特な使用条件と長寿命防衛装備があるなら、サプライチェーンでの変化を予測し、機能要求が合致することを確実にすることが重要となる。 報告書がアメリカにおけるSIN化学物質をハイライト ケムセックのリストはREACHの政治的影響を評価するベースを提供する。大西洋を越えて、非営利団体エンバイロンメンタル・ディフェンス・ファンド(EDF)による報告書がSINリストを製造と輸入に関する米政府公式データにつき合わせた。EDFは、REACHの下での認可対象基準に合致する化学物質の多くがアメリカで広く使用されており、あるものは非常に多量であることを確認した。産業化学物質に関するアメリカの最新のデータを反映する2009年1月の更新は、アメリカ連邦法の下で収集される情報の質と公衆のアクセスに引き続き問題があることを明らかにした。 カナダで有用な参照基準 他の国の環境推進者らはケムセックのSINリストに精通するようになり、彼らの仕事に役に立てる方法を探し始めた。例えば、カナダのNGOは、カナダ環境政策法の下で、”CEPA有害物質”とみなされる数千種の化学物質についてのカナダ政府の分類に強い関心を持っている。アメリカにおけると同様に、SINリストはこれらの決定に有用な参照基準を与える。また、市民はカナダ政府に、現在はまだ検討されていないSINリストの化学物質のような特定の化学物質を見直すようカナダ政府に請願することができる。SINリスト化学物質に対するより安全な代替物質を会社が開発するときに、この情報はまた、より安全な代替物質の利用可能性を実証するのに非常に有用である。 日本の化学物質政策を強化 ケムセックのリストは日本語に翻訳され環境団体のウェブサイト及びニュースレターを通じて発表されている。REACHは公衆に広く知られているわけではないが、日本のNGOは、これらやその他の消費者のための新たなガイドブック中の優先化学物質について公衆の認識を高めるための計画を検討中である。日用品中の優先化学物質を特定することに加えて、この取り組みは日本の化学物質政策を強化することの必要性についての認識を高めるであろう。いくつかの日本の会社はSINリストについてよく知っており、購買と製造に関するビジネス決定にそれを反映し始めている。
ヨーロッパの外でのケムセックSINリストの利用についての簡単な適用例は始まったばかりである。民間のコンサルタント会社やソフトウェア会社はSINリストを、購買におけるスクリーニング・ツールのようなサービスの一部に取り込み始めている。SINリストは進化しその影響力はヨーロッパで増大しているので、世界のサプライチェーン、政策改革、有害物質のない将来を求めるキャンペーンを通じて、もっと大きな影響を私は期待している。 ■ダリル・ディッツ(Daryl Ditz): 国際環境法センター、化学プログラム上席政策顧問、SINリストNGO助言委員会メンバー イノベスト報告: http://www.innovestgroup.com/index.php?option=com_content&task=view&id=190&Itemid=61 エンバイロンメンタル・ディフェンス・ファンド報告: How Europe's New Chemical Rules Affect U.S. http://www.digitaljournal.com/article/260535 ![]() カリフォルニア SINリストに出会う
先の1月、サンフランシスコ環境局はカリフォルニア大学バークレー校労働安全衛生センターとともにSINワークショップ、”すぐに代替を! ケムセックの悪役化学物質についての力強いリストの由来と潜在能力を理解する”を開催した。このイベントは100人以上の参加者を魅了し、SINリストはアメリカにおける化学物質の規制と管理にどのように利用できるかを検討した。 参照:http://coeh.berkeley.edu/greenchemistry/sin.htm
サンフランシスコからの反響 キャロライン・スクラッグス 1月27日のサンフランシスコでのSINワークショップはアメリカにおける特別な出来事であった。それはアメリカとEUで化学物質政策に関心をもち、事実と考え方について充実した討議を行うために参集した人々にユニークで必要性の高い機会を提供した。 ワークショップは、カリフォルニア全土から参加した異なる議題、様々な背景、及びREACHとSINについての異なる知識を持った広範な聴衆を魅了した。REACHは多くのアメリカ人にとってまだ比較的新しい概念なので、このワークショップはある参加者たちに対してこの新たな法を紹介し、SINリストがいかに適合するかを実証する理念フォーラムであった。一方、ある人々はREACHによく通じており、SINリストの詳細と、それを仕事の上でどのように使い始めればよいのかを理解したがった。 参加者らはいくつかのビジネスが自身の化学物質管理システムを構築しSINリストを検討していることを知って興奮し感銘を受けた。全日を通じて、学界、州及び地方機関、法律事務所、産業及びNGOsからの参加者によって発表された様々な見解は、ほとんど全ての人々に対して健全な化学物質管理システムを構築することの課題と利益に関する新たな展望を与えた。 これは、新たなグリーン・ケミストリー・プログラムのための枠組みが確立されたカリフォルニア州の政策策定者にとって重要な時間であった。SINリストは、他の人々がいかに前進しているかの確固とした事例を提供し、カリフォルニア州の政策策定者らに作業を前進させるためのインスピレーションを与えるこるが望まれる。
スタンフォード大学博士課程、新規出現汚染物質の専門家、化学物質問題に積極的に取り組んでおり、ケムセックの良き友人である。 ![]() カルフール 納入業者に 代替を開始するよう求める! ヨーロッパ随一の小売点であり、ウォルマートに次ぐ世界第二のスーパーマーケット・チェーンであり、フランスを拠点とするカルフール(Carrefour)は、代替の取り組みのためにSINリストを使用している。 ケミカルウオッチ(Chemical Watch)によれば、カルフールは非常に高い懸念のある600物質の”プレリスト”を作成し、納入業者が”代替の取り組み”ができるようSINリストとともに彼らに送付した。 参照: http://chemicalwatch.com
サラ・リー 成分を見直し サラ・リー(Sara Lee)は、全ての家庭用品及び身体手入れ用品について重要成分プログラム(CIP)を実施している。このプログラムは、様々な成分と製造に使用される成分の組み合わせのレビューを定常的に体系的に行うものである。それは、例えば香料製品中のあるムスク(じゃこう)物質の代替をもたらした。サラ・リーはSINリストを彼らの重要成分プログラム(CIP)の進展に役立つ自然な適合であるとみなしている。 スカンスカ 従うべき事例を確立 建設産業の中で、スカンスカは建材中に含まれる化学物質透明性と開示を増すことを公的に主張している。スカンスカはケムセック及びケムセック・ビジネス・グループとの連携を通じて、積極的に化学物質政策の課題に取り組み、SINリストの実施を推進している。自身の自主的化学物質制限リストを継続的に更新することによって、持続可能な商業的に入手可能な代替物質が存在する時には、スカンスカはそのプロジェクトでSIN化学物質のような有害物質の使用を制限することを目標にしている。
![]() 化学物質で遊ぶ
WECFは、ケムセックのSINリストに基づき、おもちゃの中の有害物質をなくすために、より強いヨーロッパのおもちゃ安全立法を求めるオンライン署名キャンペーンや、ミュンヘン、ユトレヒト、パリでのおもちゃテストを求めるイベントを含む野心的なキャンペーンを打ち上げた。彼らはまた、どのような化学物質が6種のタイプのおもちゃに含まれていそうかを示すポケットガイドを作成した。それは最近、ドイツのニュールンベルグおもちゃフェアーで発表された。 詳細:http://www.wecf.eu/
REACH ヒューストンに REACHに関するビジネス対応(B to B)会議が最近、テキサス州ヒューストンで開催され、SINリストがしばしば言及された。ケムセックからの代表はREACH実施に関し、化学物質管理を情報に基づいた選択により時代を先取りしようと取り組む会社のためのツールとして特にSINリストに焦点を合わせてNGOの見解を示した。 このイベントはヨーロッパを拠点とするプラスチックとゴムに関するコンサルタント会社 Smithers Rapra によって主催された。この会議への参加会社には、エクソンモービル、ロールスロイス、BASFが含まれる。 詳細:http://www.ismithers.net/conference-archive.php ![]() 欧州化学工業協会(CEFIC) 激怒 欧州化学工業協会(CEFIC)はSINリストについて明確に懸念を持っている。『化学産業は、最近ぎくりとさせるようなのREACH ストーリーを無視する』と題するプレスリリースでCEFICは、”化学産業の売り上げはケムセック・リストの発表されて物質が禁止されることにより大きな打撃を受けるであろう”と主張している。彼らはまた、SINリストは、バリューチェーンと市場のすみからすみまでを混乱に陥れるだけの”願望リスト”であると述べている。彼らは将来の顧客の要求を満たすためのガイドとしてSINリストを見るべきである。 EU アップデート EU加盟国 SINリストを討議 多くのEU加盟国が、認可候補として現在リストされている物質の数が少ないことについて懸念している(現在、わずか15物質であり、そのうちEU化学物質庁(ECHA)によって示唆されている半分が今年中に認可対象物質のリストに加えられることになっている)。 ヘルシンキにおける1月の会議で、REACHは物質の認可と制限に関してもっと前進するためにどうすべきかについて加盟国は討議した。非公開会議で参加者は認可と制限、及び候補リスト指名について討議した。広く支持を得られたひとつのアイディアは、候補リストにあげることのできる物質を特定するために、すでにEUの法の下で発がん性、変異原生、生殖毒性(CMR)として分類されている物質のリストを検証することである。 SINプロジェクトは、経験と経験を引き出す霊感を与えるモデルとして、参加者の脚光を浴びた。候補リストは自主的な代替と消費者の情報へのアクセスに拍車をかけるので、一般的に加盟国は現在のものよりもっと長い候補リストにすべきことに賛同している。プロセスのスピードと範囲を増大する方法を提案するための作業グループが設立された。 オランダ政府 代替シンポジウムを開催 オランダ環境省は4月1後にハーグで代替シンポジウムを主催する予定である。討議されるであろうトピックスのひとつはSINリストである。このシンポジウムには、ヘルスケア・ウイズアウト・ハーム、共通の将来のためのヨーロッパの女性たち(WECF)、ケムセック、オランダ化学産業協会(VNCI)、欧州労連(ETUC)などの広範な組織が参集する。サラ・リー、フレッド・バトラー、ソニーエリクソン、フィリップスなどの一流会社が彼らの代替への取り組みについて発表するであろう。 ”この機会をつかめ”と欧州議会 欧州議会の雑誌の中の討論記事で欧州議会議員アンダース・ウイジュクマンは予防原則と厳格な認可プロセスを主張している。”EUとその加盟国は、先を見越した行動(pro-action)、予防(precaution)、革新(innovation)を通じてより安全な化学物質への道に導くこの機会をつかまなくてはならない”。 彼は続ける。”SINリストの打ち上げで目をみはることは、・・・参加したNGOs間の一致だけでなく、このプロジェクトが享受した多数の多国籍企業による支援である”。彼らの目的を達成するために、これらの会社はガイダンスの必要性を述べた。厳格なREACH認可プロセス、高懸念物質に対する先を見越した行動がヨーロッパ産業の基準を高め、彼らの供給者の要求と連携してEU域外の供給者が呼格の要求を満たすことができるよう支援するであろう。 詳細: www.theparliament.com/parliament-magazine/parliament-article/newsarticle/precautionary-principle ![]() SIN リスト ウェブサイト SIN リスト ウェブサイトは、このリスト、その方法論、及び完全なリスト・データベースについて、もっと多くの情報を提供する。また下記に示す二つのドキュメントのような出版物をダウンロードできる。 www.sinlist.org SIN リストが日本語に! SIN リストと物質選択の方法論が今、日本語で利用可能である。それは、日本のNGOである化学物質問題市民研究会の安間武氏によって翻訳された。それは日本語で有害物質を特定するのに役に立つ。翻訳で失われたものは何もない。 日本語版リスト: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ChemSec/SIN_List/SIN_List_jp.html
SIN List 有害物質のない世界への迅速な道 16頁のポケットガイドがSINリストについての全貌を提供 短くて機能的
Substitution 1.0 有害物質を含まない製品を生み出す技術 この報告書は代替の様々な面を注意深く観察し、 先進的な会社は有害物質を代替するために 何をしているかを述べている。 SIN List (Ssubstitute Iit Nnow!) 1.0 は、2008年9月に発表された。SIN Listは、EUの新たな化学物質法であるREACHで規定されている非常に高い懸念のある物質のための基準を完全に満たす267種の有害化学物質を掲載している。SIN Listは、発がん性、変異原性、及び生殖毒性(CMRs)、難分解性、生体蓄積性、及び有毒性(PBTs)、非常に高い難分解性及び非常に高い生体蓄積性(vPvB)、及び同等の懸念を有する物質からなる。 SIN Listの狙いは、法律を前に推し進め、有害化学物質の代替を率先して行おうとする先進的なビジネス及びその他の当事者に指針を与えることである。SIN Listは下記の団体からなるNGO助言委員会と密接に連携してケムセックによって開発された。
The Chemical Ssecretariat www.chemsec.org P.O. Box 7005, SsE 402 31 Goteborg, Ssweden Phone: +46(0)31 711 04 95 E-mail: info@chemsec.org |