国際化学物質事務局(ChemSec) ニュース
2005年11月17日 欧州議会 REACH 第一読会での投票
採択された修正案のリスト

情報源:The International Chemical Secretariat http://www.chemsec.org
EP vote on REACH, first reading on 17 Oct 2005: A list of adopted amendments
http://www.chemsec.org/documents/051117%20REACH%20EP%20Vote%20-%20main%20points.pdf
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年12月8日

 このリストは、読者のより良い理解のために国際化学物質事務局(ChemSec)が編集し提供するものである。多くの修正案の中から選択した修正案に我々のコメントをつけた。修正案の完全なリストについては欧州議会のウェブサイトを参照いただきたい。
訳注:議会内会派勢力
 2005年11月9日、欧州議会で保守グループ(EPP-ED)とREACH推進派と見られていた社会主義グループ(PES)との間で妥協があり、11月17日の議会投票はこの妥協に基づいて行われた。下記は妥協前の議会内色分けである。
REACHに対する各会派の色分け(従来)
企業寄り 欧州人民党−欧州民主党(EPP-ED) 268議席
中道又は環境寄り 欧州社会主義グループ(PES)
緑グループ(Greens/EFA)
欧州統一左派(GUE/NGL)
200議席
42議席
41議席
キャスチングボート 欧州自由民主連盟(ALDE) 89議席


■主題6:認可

出欠確認投票(RCV)によって採択された PSE/ALDE/Greens/GUE 妥協案:
賛成:324 (38 EPP を含む)
反対:263 (多くのドイツ PSE を含む)
棄権:13

主要な点

 期限を付ける(修正案235 最大5年)など、認可付与の基準が強化され、適切な代替があるなら代替すべきとする原則が導入された(修正案232 第57条)。

  1. 認可の目的 第52条は、非常に高い懸念のある物質はより安全な物質又は技術によって代替されると記述され、域内市場の機能に関する文言を置き換える。さらに、認可に関する規定を強化するものとして、予防原則が条項に記述される。修正案214

  2. 認可の基準は、代替社会経済的便益及び、物質が適切に管理されるかどうかである!
     欧州委員会の提案では、認可は物質が適切に管理されるなら与えられるとしている。第57条2、修正案232

  3. 認可リストの生成は、Annex XIII a + b、第53条a に規定される。・・・人又は環境に深刻で不可逆的な影響を引き起こすことに取って代わるものである。

  4. 全ての認可に対し最長5年の期限と検証期間が導入された。第55条、57条、58条。

  5. タバコに関する多くの修正案が通過した。

■主題3:登録

出欠確認投票(RCV)によって採択された EPP/PSE/ALDE 妥協案:
賛成:438
反対:144 (例えば、48 PSE, 8 ALDE, 1 EPP)
棄権:15

主要な点

 サッコーニ−ナッサウア妥協案は、低生産量化学物質に求められる基本的健康安全情報を著しく後退させた。さらに、中及び高生産量化学物質に対しても大幅な後退を許すこととなった(テスト要求免除)。供給されるべき情報の量を決定するに当り、crude曝露カテゴリーの使用を重視することとなった。

  1. 年間生産量 1-10トン 第11条。登録者には物理化学的特性に関する情報及び入手可能な情報だけが求められる。しかし、当該物質が段階的導入物質でないなら(すなわち、新規物質なら)、又は、新たな Annex 1b に示される基準のひとつに合致するなら、Annex V の全項目が供給されなくてはならない。
    Annex 1b 基準:CMR, PBT, 又は vPvB の特性を示す物質、又は危険物質としての分類基準を満たしそうな物質であり、且つ、消費者又は事業者の使用に作られた物質、又は成形品中に放出されることが意図された物質

     もし、Annex 1b 中の基準 1a が満たされるなら、化学物質安全報告書(CSA)が作成されなくてはならない。

     しかし、製造者又は輸入者の化学物質安全報告書(CSA)に含まれるべき特定された用途に対しては、年間製造量1トンの閾値が導入された。修正案 436、第13条。修正案 865、Annex XIも参照のこと。

  2. Annexes VII 及び VIII、さらに指定があった場合のVIにおける情報要求に対する曝露ベースの免除
    上記Annexesのテストは、当該物質がある基準を満たすなら免除される。登録者は曝露に関する下記情報を供給すること。
     (@)環境区画のタイプ
     (A)曝露を受ける人の集団
     (B)リスク管理措置
     (C)曝露経路
     (D)動物の生命の保護
    欧州委員会は免除妥当性の基準を決めること。

  3. 物質の製造量/輸入量は3年間の平均で決定される。第11条2.a.

  4. 動物テスト
    (Q)SARS が優先される。第11条2.b.
    脊椎動物テスト以外の方法が可能ならその情報。第12条1.
    代替テストが有効なら、動物テストにとって替わること。第12条2.1a.

  5. 適切な場合には用途と曝露カテゴリーが導入された。第13条4.2、第9条、第3条12 a+b、第26条、Anex IV

  6. 川下ユーザーへの、及び上流供給者への情報は要求があり次第。人又は環境への物質又は調剤の影響を評価するために必要な情報・・・物質の操作又は使用の脈絡の中で・・・。
■OSOR 一物質一登録

第23条(1)新、第10条
 会社はデータを、例え動物テストデータであっても、共有しないことが許される。登録料を払う登録者は、化学品機構に対し、データを共有しない理由が正当かどうか検証するよう要求することができる(中小企業の登録料削減)。

 共同提出から抜けること(opt-out)ができるのは:
  • 情報が物質に関連しない
  • 不釣合いなコスト
  • 情報が商業的に機密であり、登録者がビジネス上の損害を被ると考える場合
  • 他社より早く、又は遅く、登録したいと望む場合(第10条のみ)
  • 物理化学的データを共有しないことについては正当性の説明不要(第23条(1)、第10条)
 データの所有権を10年から15年に延長する(第23条 修正383)。
これは中小企業にとって不利である。

■主題11:リスク・コミュニケーション

主要な点

 リスク・コミュニケーションが強化された。製造者は川下ユーザーの要求があれば人と環境に与える物質の影響に関する情報を提供する義務がある。さらに、安全データシートは、たとえサプライチェーンで成形品に導入された後でもその物質をフォローする。オーフス条約(Aarhus convention)に従った消費者の情報への権利が導入される。

訳注:
 オーフス条約(正式名称 「環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセスに関する条約」 )、1998年6月にデンマークのオーフス市で行われた国連欧州経済委員会(UNECE)で採択され、2001年10月に発効。国内関連サイト:オーフス・ネット

  1. 修正案112、第13条7.a+b:物質の健康影響に関する情報
    • 要求の中で川下ユーザーによって示される運転又は使用に関連して、川下ユーザーの要求で人の健康又は環境に及ぼす物質又は調剤の影響を評価するために必要な情報を提供する義務。
    • この義務はまた、サプライチェーンの上流にも適用する。
  2. 修正案366、第31章a:成形品中に含まれる物質に関する情報を伝達する義務
    • 川下ユーザーの要求に示される運転及び使用に関連して、人の健康又は環境環境に与える物質の影響を評価するために必要な成形品に含まれる Annex XIII (すなわち認可リスト) にリストされる物質(調剤と成形品)に関する情報を伝達する義務
    • サプライチェーンにの上流に対しても同様!
    • 成形品又はその誘導品の受納者に渡されるべき成形品中の物質の安全データシート。
    • 消費者は製造又は輸入される成形品中に存在する物質に関する情報を製造者又は輸入者に求める権利を有する。
    • 製造者又は輸入者は、要求により15労働日以内に、個々の消費者が無料で、彼らが製造又は輸入した成形品中に存在する物質に関する安全及び使用情報の完全詳細を入手できるようにしなくてはならない。
  3. さらに、リスク・コミュニケーションは多くの詳説で、消費者へのリスクコミュニケーションの重要性が述べられている。修正案 29-33、 44-45
■主題10:一般注意義務

 一般注意義務は、全ての製品に対し法的に拘束力のある義務として、law-proposal 中のひとつの条項として導入されている。修正案364 第1条。法律中に書き込まれるこの”一般注意義務”は、製造者と輸入者に”合理的に予見される”化学物質の有害影響に対し責任を負わせる。

■成形品中の物質

 成形品中の物質に関する条項は大幅に強化された。
 製造者又は輸入者は、ある基準に従い、成形品の全ライフサイクルの期間にもたらされる曝露を含んで、製品中に含まれる有害な物質について化学品機構に届け出なくてはならない。
 しかし、”成形品毎に” という言葉遣いは削除され、登録は有害で意図的な放出に対してのみ適用される。第6条。


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