ChemSec プレスリリース 2024年1月31日
血液検査で EU 高官らが
PFAS に汚染されていることが判明


情報源:ChemSec, Press Release, 31 Jan 2024
Blood tests show high-level EU politicians are polluted by PFAS
https://chemsec.org/blood-tests-show-high-level
-eu-politicians-are-polluted-by-pfas/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2024年2月8日
このページへのリンク:
https://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/ngo/240131_ChemSec_
Blood_tests_show_high-level_EU_politicians_are_polluted_by_PFAS.html


【プレスリリース】ケムセック(ChemSec) と欧州環境局(EEB)は本日、EU の主要な指導者らが体内のいわゆる”永遠の化学物質”の検査で陽性反応を示したことを示す血液検査結果を発表した。 検査を受けた全員から最大 7種の PFAS が見つかり、そのうち 5人は既存の懸念レベルを超えていた。 検査結果は、欧州の高官であっても、PFAS の存在に影響を受けない人はいないことを示している。

 欧州の幅広い国々から集まった欧州委員会の副委員長3名、環境委員、欧州環境庁長官、及び欧州議会議員 6名が、13種類の PFAS(ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質)の体内での存在を検査した。

 これらの結果は、欧州における化学物質管理の失敗という憂慮すべき現実と、これらの有害物質を規制する緊急の必要性を明らかにした。欧州人口の広い範囲を代表する全ての対象者が PFAS に汚染されていた。 分析された 13 種類の”永遠の化学物質”のうち、半数以上、つまり PFOA、PFNA、PFDA、PFUnDA、PFHxS、PFHpS、PFOS が検出された。 ある場合には、暴露レベルが既存の懸念レベルを超えていた。

 PFAS 化学物質は、がん、不妊症、先天性欠損症、免疫系かく乱など、さまざまな深刻な健康問題と関連している。 これらの結果は、政策立案者や政治指導者らに厳しい現実を突きつけることになる。

 ”PFAS 汚染に差別はない。 我々は皆、等しく被害者である。 どこにどのように住んでいるかに関係なく、化学物質汚染の影響を受けない人はいない”と EEB の化学物質政策責任者であるタチアナ・サントスは強調している。

 欧州委員会の執行副委員長兼競争担当委員であるマルグレーテ・ベステアーは次のように述べている:
 ”6月に遡り、血液中に有害化学物質が存在する可能性を調べるために血液検査を受け、数週間後に結果を受け取った。分析された 13 種の PFAS のうち 7 種が私の血液から検出された。 PFAS (または”永遠の化学物質”) は、水、食品包装、フェイスクリームなど、我々の身の回りのほとんどに存在している。欧州はその先頭に立って、その使用を制限し、それに代わる研究と解決に資金を投資している。 私がこのテストを受けたのは、PFAS が完全に置き換えられるまでにはまだ時間がかかるかもしれないが、正しい方法であるという単純な事実の認識を高めたいと思ったからである。”

 欧州グリーンディール欧州委員会の元第一執行副委員長であるフランス・ティマーマンスは次のように付け加えている:
 ”有害な永遠の化学物質はどこにでも存在している。 それらは我々の環境、自家栽培の野菜、魚、そして我々の体内に侵入し、そこで永遠に残留する。 我々市民はそれらから守られなければならない。 我々はこの合法化されたゴミの排出を全て止めければならない。 我々は欧州当局に対し、これらの化学物質の使用を完全に禁止するよう求める。 オランダにおける化学物質製造者であるケマーズ社は近隣諸国や環境への汚染をやめなければならない。(訳注:オランダの検察当局は19日、米化学会社ケマーズ(Chemours)がオランダ南西部ドルトレヒト(Dordrecht)で有機フッ素化合物(PFAS)汚染を行った可能性があるとして、捜査を開始すると発表した。NNA EUROPE, 2023/10/20) 彼らが必要な措置を講じなければ、我が国におけるこの会社の未来はあり得ない。”

欧州の化学物質汚染危機

 政策立案者らに見つかった 7 つの PFAS のうち PFOA と PFOS は欧州ではすでに禁止されている。 一部の用途は規制されているが (PFNA、PFDA、PFUnDA、PFHxS)、PFHpS は EU 市場で依然として許可されている。 EU は世界で最も強力な化学物質管理システムを持っているが、全ての欧州の人々が”驚くほど高レベル”で化学物質汚染にさらされている。 欧州の化学産業が数十年にわたって PFAS の健康被害について(隠蔽された)知見を持ちながら、PFAS の生産、使用、排出を続けていることは、現在の規制措置が不十分であることを浮き彫りにしている。 PFAS による大規模な汚染スキャンダルは、暴露量が平均より約 100 倍高く、イタリアのヴェネト州での、 フランスのリヨン近郊の”化学の谷”での、 オランダでの、 ベルギーのフランダースワロン地域での事例など、 EU 全土で文書化されている。被害者らは法廷闘争を開始しており、”住民は飲料水を介してPFASにさらされた結果、血液中の PFAS 濃度が高いこと”及び、”会社は人身傷害を補償する責任があること”が最近のスウェーデンのロンネビー判決で例示された。

 それにもかかわらず、業界と政治の圧力により、欧州委員会は、人間の健康と安全を守るために 2006年に策定された時代遅れの EU 化学物質管理法である REACH(化学物質の登録、評価、認可、制限に関する規則)の切望されていた改革を遅らせている。 加盟5カ国は2023年1月にPFAS禁止を提案したが、そのプロセスに時間がかかるため、これらの有害化学物質が欧州全土で段階的に廃止されるまでには何年もかかることになる。

 ”これは深刻な公害と公衆の健康問題である。 それは高度に汚染された地域だけに限定されるものではない。 PFAS は我々が食べる食品に、我々が飲む水に、さらには日用品を通じて我々の家にまで侵入する目に見えない脅威である。 当局は事実上、公共の福祉よりも業界の貪欲さを優先している。 EU当局が行動を起こし、将来の世代を守り、汚染者が引き起こした危害の責任を問うべき時が来た”とサントスは警告する。

PFAS禁止に対する企業の支持

 産業界の一部は、PFAS禁止案に反対して”積極的なロビー活動”を行っている。 しかし、一部の企業は、包括的な禁止への支持を公に表明し、提案された制限を心待ちにしている。 この制限案は、業界内で多くの革新も引き起こしている。 将来の市場の需要を満たすために、PFAS のより安全な代替品が常に開発されている。

 欧州の高官らの PFAS 汚染レベルを検査するという EEB と ChemSec による共同イニシアチブは、彼らの意識を高め、化学物質政策の改革を阻止しようとする勢力を急いで排除し、PFAS に関する包括的な禁止を支持することにより、この蔓延する脅威から公衆の健康と環境を守るよう促すことを目的としている。

 ”この危機に対処する唯一の方法は、これらの化学物質をグループとして規制することであり、これは現在の EU の規制案で実現できるはずである。 幸いなことに、PFAS のほとんどの用途には、より安全な代替手段がすでに存在している。 それはまさに彼らに機会を与えることである”と ChemSec のエグゼクティブ ディレクター、アンネ ソフィー ベッカーはコメントしている。



化学物質問題市民研究会
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