HEAL News 2011年11月9日
フランス当局
食品接触材中のBPA禁止を促す報告書を発表
報告書を受けて フランス下院 食品接触材中のBPA禁止を採択

情報源:Health and Environment Alliance (HEAL News) 9 November 2011
French national authority report prompts BPA ban in food contact materials
http://www.env-health.org/spip.php?article1303

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年11月21日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/111109_HEAL_Frecnch_BPA_ban.html


 環境と健康に取り組む諸団体は、フランス議会の食品接触材中でのビスフェノールA(BPA)を2014年から禁止することについての採択を歓迎した。現在フランス上院に送付されているこの決定はフランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の報告書に続くものである。この報告書はBPAへの低用量曝露は感受性の高い集団に健康影響をもたらすと述べている。

 3歳以下の子ども用食品容器は、2013年の初頭までにBPAをなくし、全ての製品には、感受性の高い集団のこの物質への曝露による潜在的な危険を警告するラベル表示が求められる。

 BPAの健康影響に関する ANSES 報告書は2011年9月27日に発表された。重要なことには、ANSES は、いわゆる優良試験所基準(GLP)の下に作成された報告書のレビュー(訳注1)に限定するのではなく、広範な研究論文の調査を行なったということである。

 この報告書は、たとえ低用量レベルの曝露であっても動物で立証され、人間でも疑われる健康影響に光を当てている。これらの影響はまた、個人の発達の異なる段階の曝露に大きく依存するかも知れず、このことは、ビスフェノールAに特に感受性の高い集団を特定することが可能かもしれないことを示唆している。

 ANSES は、現在、胎児、小さな子ども、妊婦、及び授乳中の女性のような、最も感受性の高い集団の曝露を防ぐことを最優先する十分な科学的証拠があると考えている。その目標は、ビスフェノールAへの曝露を低減することであり、主にこれらの集団の主な曝露源である食品接触材中のBPAを代替することにより実現する。この文脈において、ANSES はこの研究の成果をパブリック・コメントにかけ、どのような関連する特定のデータ、特に利用可能な代替物質及びそれらの安全性と効果に関するコメントを2011年11月末までに求めている。

 フランスにおける HEAL のメンバー組織である環境衛生ネットワーク(Reseau Environnement Sante / RES)はこの問題に関して人々の意識向上に貢献し、議員に対し重要な非 GLP 研究に注目するよう働きかけたことについて広く称賛された。環境衛生ネットワーク(RES)のプレスリリースをお読みください。(フランス語)

 HEALは、健康保護の第一歩としてフランス下院の決定を歓迎した。EUレベルの合意なしに長期間国家禁止を保持することは難しいので、もしこの決議がフランス上院で支持されるなら、食品接触材料の BPA の問題は EU レベルで扱われるに違いない。

 欧州委員会の報道官は、欧州食品安全機関(EFSA)は現在、ANSES の報告書を検討中であり、EFSA は今年末又は来年初頭までに、この問題に対応することが予測されると述べた。


訳注1:いわゆる優良試験所基準(GLP)の下に作成された報告書

 これは、2008年8月14日に米・食品医薬品局(FDA)が発表した”消費者製品からのビスフェノールA(BPA)への暴露は安全であると主張するBPA 評価レポートが、産業側から資金の出ている研究に基づいていることを指すと思われます。

 FDAは評価にあたり、厳格なレビューを受けているにもかかわらず、サンプル数が少なく優良試験所基準 Good Laboratory Practices (GLP) に従っていないとの理由で、”BPAの低用量影響がある”と報告する米国立健康研究所(NIH)の資金提供を受けた研究を排除し、サンプル数が多く、GLPに準拠しているとの理由で、”BPAの低用量影響はない”と報告する産業側資金提供を受けた科学者らの研究結果を採用しました。これらの経緯については下記の記事をお読みください。



化学物質問題市民研究会
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