欧州委員会プレスリリース2006年10月26日
欧州委員会 EUの水銀輸出禁止を提案

情報源:EC Press release 26 October 2006
Environment: Commission proposes ban on EU mercury exports
http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/06/1481&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

抄訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年11月7日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/061026_eu_ban_mercury_exports.html


 欧州委員会は本日、2011年から欧州連合(EU)からの全ての水銀輸出を禁止する法案を発表した。この禁止は、人と環境に対して非常に有害な水銀暴露を世界的に削減するEUの戦略の重要な一部をなすものである。この輸出禁止は水銀の世界的な供給を、したがって、この重金属の環境中への排出を著しく削減するであろう。
 提案された規制は、塩素−アルカリ産業で最早使用されなくなった水銀、又は他の産業施設で生成される水銀は、輸出禁止が発効する2011年以降は安全な保管が求められる。
 欧州委員会は、人と環境の暴露を低減するために法的拘束力のある国際的な協定の開発を含んで、世界的な行動を推進するために10月26〜27日にブリュッセルで国際水銀会議を開催する。
 環境委員スタボロス・ディマスは次のように述べた。”この提案はこの非常に有害な金属への暴露から人と環境を守るためにの欧州委員会の決定を明確に示すものである。水銀の輸出を禁止し、その安全な保管を求めるにあたり、EUは排出を削減するための世界行動を起こすであろう。私は世界的な協定へ向けての動きを支援するよう他の諸国に要請する。”

水銀暴露の危険性

 水銀とその化合物は人、動物、及び生態系にとって非常に有害である。高用量では人を死に至らしめることがあるが、比較的低用量であっても神経系に影響を与えることがあり、心臓血管系、免疫系及び生殖系への可能性ある有害影響と関連がある。水銀は環境中に残留し、最も毒性の高いメチル水銀に変わることがある。メチル水銀は容易に胎盤及び脳血流関門を通り抜けるので、妊娠可能年齢の女性と子どもは特に懸念が大きい。

水銀の使用と輸出

 水銀使用はEUにおいても世界的にも減少している。世界の使用量は年間3,400トンであり、EU15カ国においては2005年で440トンであった。

 世界的には、水銀の主要な用途は小規模な金鉱山、塩素−アルカリ産業、及び塩ビプラスチックの基である塩ビモノマーの製造である。EUでは、塩素−アルカリ産業だけが大きな使用者として残っているが、塩素製造における水銀含有セルの使用の廃止が進んでいる。EUで次に多い使用は歯科用のアマルガムである。

 水銀の世界的な供給者はスペイン国営会社マヤサ(MAYASA)であり、年間1,000トンを供給している。

 マヤサは、水銀セルを廃止したEUの塩素−アルカリ産業から水銀を購入し、それを再販している。この廃止により今からから2020年までの間に約12,000トンの水銀が余剰水銀として排出される見積もられている。

提案

 水銀暴露の世界的な削減に寄与するために、提案された規制案[1]は、2011年7月1日からEUからの水銀輸出を禁止する。同日から水銀は、天然ガスの精製、又は非鉄金属製造から得られる水銀とともに塩素−アルカリ産業で最早使用されなくなった水銀は安全に保管されなくてはならない[2]

 欧州委員会はこの提案に関して広く関係者と協議を行い、最も直接的に影響を受ける利害関係者であるマヤサ、スペイン政府、及びヨーロッパの塩素−アルカリ産業界は提案どおりの期日で禁止することに合意した。欧州委員会は欧州化学工業協議会Ceficが2011年7月1日から塩素−アルカリ産業からの水銀の安全な保管を確保することについて自主的な約束をしたことに注目した。

 提案された規制は、共同決議手続き(co-decision procedure)のために現在欧州議会と閣僚理事会にに送られている。

国際水銀会議

 世界中での水銀暴露低減はEU自身の措置を補完するために国際レベルでの行動が必要である。EUはすでに国連環境計画(UNEP)の統治評議会で水銀に関する法的に拘束力のある世界的な法律文書の必要性を提起した。

 欧州委員会がブリュッセルで10月26−27日に開催する水銀に関する国際会議は水銀の供給と使用に焦点を向け、世界的行動のための選択肢を特定することができるようにする。この会議から4ヵ月後の2007年2月に開催されるUNEP統治評議会でも法的拘束力のある文書が再び議論されるであろう。

 この会議は水銀問題の国際的な理解を拡大し、製造/輸出国及び消費国間の接触を図ることを目的としている。中国、ロシア、インド、ブラジル、アメリカを含む30カ国以上の非EU諸国からの参加も期待されている。

背景

 2005年1月に欧州委員会によって立ち上げられたEU水銀戦略は、EU及び世界での水銀汚染に目を向けた包括的な計画である。それは水銀排出の削減、供給と使用の停止、及び特に魚に含まれるメチル水銀への暴露の防止などのための20の措置を含んでいる。余剰水銀の輸出禁止と安全な保管はこの戦略の主要な場面である。

下記を参照:
http://ec.europa.eu/environment/chemicals/mercury/index.htm
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[1] COM(2006) 636.
[2] For instance in underground salt mines adapted for waste disposal
  例えば、廃棄物処分用として採用されている地下の塩鉱。


化学物質問題市民研究会
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