EU プレス・リリース 2003年11月25日
欧州委員会 全てのバッテリーの収集とリサイクルを要求

情報源:EU press releases IP/03/1596 Brussels, 25 November 2003
Batteries: Commission requires collection and recycling of all batteries


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2003年12月1日


 欧州委員会は、EU 市場に投入される全てのバッテリーに対し収集とリサイクルを要求する、新たなバッテリー指令の提案を採択した。この提案は、使用済みバッテリーが最終的に焼却又は埋め立て処理されることを防ぎ、それにより、バッテリー中に使用されている様々な金属を回収することを目的としている。
 バッテリーは、その内部に含む金属のために、焼却又は埋め立て処理がなされると環境的な懸念を及ぼす。バッテリー製造には数千トンの様々な金属が使用されているので、その回収とリサイクルは天然資源の節約にも大いに寄与するであろう。
 提案された指令は、EU 域内各国のバッテリー収集とリサイクル計画のための EU 全体の枠組みを作り上げることを目指すものであり、域内市場の適切な機能を強化することになるであろう。
 この提案を準備するに当り、委員会によって実施された ”広範な影響評価” は、提案された措置が環境的、経済的、及び社会的観点から、最も持続可能な政策の選択であることを示している。

 「全ての使用済みバッテリーがもれなく収集とリサイクルのシステムで処理されることを確実にすることにより、この提案は、古いバッテリーが焼却されたり、埋め立てられたりすることにより生ずるリスクから我々と環境を守るであろう」 と環境委員マルゴット・バルストロームは述べ、さらに 「新たなバッテリー指令は数年間、検討されてきたが、本日、確固とした、よくバランスの取れた提案を発表した。実施にあたり、バッテリーのライフサイクルに関わる全ての関係者が環境に優しい振る舞いをすることを鼓舞するものである。最も重要なことは、消費者が使用済みのバッテリーを正しく収集場所に持っていくことにより、環境を守ることに貢献しなければならないということである」 と付け加えた。

問題

 毎年、約800,000トンの自動車用バッテリー、190,000トンの産業用バッテリー、及び160,000トンの小型バッテリー(消費者用乾電池)が EU 市場に投入されている。これらのバッテリーに使用されている金属は様々である。自動車用バッテリーは主に、鉛−酸バッテリー、産業用は鉛−酸バッテリーとニッケル−カドミウム・バッテリーである。小型バッテリーは、一般用途バッテリー(主に、亜鉛・炭素、及び、アルカリ・マンガン)、ボタン・セル(主に、水銀、亜鉛、銀酸化物、マンガン酸化物、リチウム)、充電バッテリー(主に、ニッケル−カドミウム、ニッケル−金属水酸化物、リチウムイオン、密閉鉛−酸) などである。

 水銀、鉛、カドミウムはバッテリー廃棄処理中で最も問題がある物質で、これらのバッテリーは委員会指令 2000/532/EC (1) で危険廃棄物として分類されている。しかし、その他の金属、亜鉛、銅、マンガン、リチウム、及びニッケルなども環境的に危険をもたらすかもしれない。焼却処理の場合には、バッテリー中の金属は大気に放出され、また焼却灰を汚染する。バッテリーが埋め立てられると金属が埋立地から漏れ出す恐れがある。
 さらに、資源管理の観点からは、バッテリーは 2 次金属資源と見なすことができる。ニッケル、コバルト、銀など貴金属を含む数千トンの金属は、もし焼却や埋め立てがなされなければ、回収できるはずである。

 既存のバッテリーに関する EU 法では、バッテリーを廃棄処理の流れの中で引き起こされるリスクを適切に管理すること、及び、バッテリー収集とリサイクルのための均質な枠組みを作り上げることの、2つががうまくいかなかった。既存の法律はカドミウム、水銀、及び鉛をある一定量以上含むバッテリーだけにしか適用されなかったので、年間、 EU 市場に投入される全ての小型バッテリーのわずか 7 %しかカバーされなかった。その限られた範囲のために各国のバッテリー収集リサイクル計画の実施は非効率的であった。さらに消費者は、何が収集されるべきで、何が収集されないのかについて混乱させられ、結局、各国の実施計画への参加が得られない傾向あった。その結果、今日、多くのバッテリーがいまだに環境中で処理されている。例えば、2002年には、EU 加盟 15 カ国で販売された小型バッテリーの総量の45%(すなわち、72,155トン)は、最終廃棄処理、すなわち焼却/埋め立て処理された。

提案措置

 提案の目的は2つある。
 第一は、使用寿命を終えたバッテリーの焼却や埋め立て処理を防ぐために、全てのバッテリーに対し ”密閉ループ” を確立することである。この密閉ループに基づき、全てのバッテリーは収集され、リサイクルされ、その金属は経済的サイクルの中で再利用されなければならない。
 第二は、域内市場の適切な機能強化を図り、バッテリーのライフサイクルに関わる全ての関係者のために土俵のレベルを同一にし、各国の収集とリサイクル計画に対する最低限のルールを用意することである。

 バッテリーが廃棄物処理の流れに入り込むことを防ぐために、提案指令はいくつかの異なる措置と目標を設定している。

■埋め立てと焼却の禁止

 主に鉛−酸、及びニッケル−カドミウムの自動車用と産業用バッテリーはすでに今日効果的に収集されている。それは回収される鉛の価値が高いことと、産業用ニッケル−カドミウムバッテリーの収集計画が有効であったためである。これらのバッテリーを100%収集することを確実にするために、その埋め立てと焼却処分を禁止することが提案されている。

■収集目標

 サイズが小さいことと使用者(産業用と消費者用)の範囲が広いために、小型バッテリーについては禁止を徹底することは難しい。したがって、加盟各国は、消費者が使用済みバッテリーを無料で戻すことができる収集システムを設定することが求められる。各国の収集システムの効率がきちんと評価されるという前提の下に、提案する収集目標値は年間、居住者当たり 160 グラムとしている。この目標値は、 ”広範な影響評価” によって最もコスト効率のよい目標値として特定されたものであり、概略、年間 1 人当たり、4〜5 個のバッテリーに相当する。

 小型ニッケル−カドミウム・バッテリーは、カドミウムを含んでいるので特に懸念される。これらの収集は 160 グラムの目標でカバーされる。しかし、それらのバッテリーがゴミ入れに投棄されることがないよう、さらに追加的収集目標値を設定することが提案されている。この追加目標値は、小型ニッケル−カドミウム・バッテリーの年間生産量の 80%となるよう加盟各国が設定する。これは、収集される小型ニッケル−カドミウム・バッテリーの量に自治体の固形廃棄物処理の流れの中で見出される小型ニッケル−カドミウム・バッテリーの量を加えたものである。
 加盟国は、自治体の固形廃棄物処理の流れの中の小型ニッケル−カドミウム・バッテリーの量を監視する義務がある。これらの監視の結果に基づき、委員会はもし必要があれば、将来、追加的なリスク管理措置を提案するかもしれない。

■リサイクル目標とリサイクル効率

 原則として、収集後全てのバッテリーは、 ”密閉ループ” を保つために、リサイクル施設に送られなくてならない。提案では高いリサイクル目標を設定しているが、それでも収集された小型バッテリーの中には技術的にリサイクルできないものもあるという事実を勘案している (自動車用及び産業用バッテリーは 100%、小型バッテリーは 90%) 。

 さらに、リサイクル工程の歩留まりに着目して、最小リサイクル効率を提案している。鉛−酸バッテリーのリサイクル工程は全ての鉛とそれらのバッテリーの平均重量の 65%を回収しなくてはならない。ニッケル−カドミウム・バッテリーのリサイクル工程は全てのカドミウムと少なくともそれらのバッテリーの平均重量の 75%を回収しなくてはならない。その他のバッテリーについては、リサイクル工程は平均重量の 55%を回収しなくてはならない。

 域内市場の適切な機能に寄与するために、国外での処理も輸出する加盟各国のリサイクル要件の達成の数に入れることになる。
 全てのタイプのバッテリーについて、製造者は、収集、処理、及びリサイクルに関わるコストを負担する。使用済みの小型バッテリーについては、収集コストは国、地域、あるいは地方当局が共同で負担してもよい。使用済みの自動車用及び産業用バッテリーについては、製造者はコスト負担について使用者と協議して決めてもよい。
 加盟各国はバッテリー製造者の登録名簿を保持しなくてはならず、製造者は製品を市場に出す前に、使用済みバッテリーを管理できることの金銭保証をしなくてはならない。さらに、製造者は新製品のバッテリー販売に関し、発売後最長 4年間、 ”様子見料(visible fee)” を設定することができる。

コスト

 委員会は、提案する収集リサイクルにかかるコストは 1 世帯当たり 1〜2 ユーロ (120〜240円) と見積もっている。

背景

 この新たな EU イニシアティブの主な背景は、 ”第6回共同体環境行動計画 (2)” 、及び、 ”バッテリー及び蓄電器に関する現在の EU 法(指令91/157/EEC) (4)” を早急に改正する必要があると要求している ”廃棄電気電子機器に関する指令 2002/96 (3)” である。

 EUの法律の簡素化と改善を支援するための ”よりよい法律パッケージ(Better Regulation Package)(5)” の精神に基づき、新たな提案は既存のバッテリーに関する指令 (6) を廃棄し、単一の簡単な法体系に改める。

 委員会は、この新たな提案の最も持続可能な政策の選択肢の評価のために ”広範な影響評価(Extended Impact Assessment (ExIA) )” を実施した。その主要な要素の一つは関係者への公開コンサルテーションであり、それには 149 の関係者(国、地方、及び地域の当局者、産業界、バッテリー協会、通商協会、NGOs、消費者及び小売業者組織)が関与した。

 この提案及びこの提案に関するもっと詳しい情報は委員会のウェブサイトで入手できる。
http://europa.eu.int/comm/environment/waste/batteries_index.htm

(1)OJ L 226/3 of 06.09.2000.

(2)OJ L 242, 10.9.2002, p. 1.

(3)OJ L 37/24 of 13.02.2003, recital 11.

(4)OJ L 78, 26.3.1991, p. 38, amended by Commission Directive 98/101/EC, OJ L, 5.1.1999, p. 1 and supplemented by Commission Directive 93/86/EC, OJ L 264, 23.10.1993, p.51.

(5)See COM(2002) 728final and COM(2003)71final.

(6)Directive 91/157/EEC, OJ L 78, 26.3.1991, p. 38, amended by Commission Directive 98/101/EC, OJ L, 5.1.1999, p. 1 and supplemented by Commission Directive 93/86/EC, OJ L 264, 23.10.1993, p.51.



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