Environmental Health News (EHN) 2018年9月10日
ジェリー・ハインデル: FDA は BPA のリスクを理解するための 大きな努力を避けているのか? FDA は、BPA 研究に関する”異質の二つのもの(リンゴとオレンジ)”を 統合する必要があると、元アメリカ国立衛生研究所(NIH)の部門管理者が言う。 情報源: Environmental Health News (EHN), September 10, 2018 Jerry Heindel: Is the FDA short-circuiting a large effort to understand BPA risk? The agency needs to integrate both "apples and oranges" on BPA research, says former NIH official By Jerry Heindel https://www.ehn.org/fda-rushing-to-judgement-on-bpa-2601945116.html 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2018年9月26日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/180910_EHN_Jerry_Heindel_ Is_the_FDA_short-circuiting_a_large_effort_to_understand_BPA_risk.html 長年、アメリカ食品医薬品局(FDA)及びアメリカ環境保護庁(EPA)は、ビスフェノールA(BPA)は独立系の研究科学者らが実験室の動物に害を引き起こすことを発見している用量で安全であると裁定してきた。 疫学者らもまた、人々の体内で測定された BPA を広範な人間の疾病及び障害−これらは FDA と EPA の安全用量の見積もりが正確なら起こるはずがない−に関連付ける研究を発表している。 私はこの状況を、アメリカ環境健康科学研究所(NIEHS)の外部研究管理部門(Extramural Division)の科学プログラム管理者としての職務で長年、見守ってきた。私は、連邦規制機関が NIEHS が助成金を授与した BPA に関する全ての先端科学を拒絶したことは苛立たしいことであった。 彼らは、我々が資金助成した科学者らはアメリカで最善であったにもかかわらず、それらの研究は、規制のためのテストのガイドラインに合致していないと述べた。 その時に私は画期的な考えを持った。すなわち、それは BPA 問題を解決するかもしれないのみならず、規制上のテスト(リンゴ:異質のものの一方)と独立系の研究(オレンジ:異質のものの他方)を最大限に活用するためのモデルとすることができるのではないかということであった。 CLARITY-BPA(BPAの毒性に関する学問的及び規制上の見識に関連するコンソーシアム)(訳注1)として知られるようになったその考えは次のようなものである。FDA が通常行う方法で BPA の標準”ガイドライン”評価を実施できるよう十分な動物を飼養し処理することについて、 FDA に主導権を与えるが、その動物の必要量(及び組織/器官)を独立系研究科学者らに送り、彼らが科学文献中で報告していた影響を評価する−というものである。 このデザインは、独立系科学者の研究をガイドライン研究中に埋め込んでいるので、FDA はその結果を拒否できないであろう。かくして、BPA がどのように毒性を持つかの全体的評価を得るために、二つのデータセット(リンゴとオレンジ)をひとつの研究に統合する。 この研究を設計することは簡単ではなかったが、それは、FDA、国家毒性計画(NTP)及び NIEHS からの財政的支援、並びに、CLARITY-BPA に参加するために必要な研究助成を得るために競争したアメリカのあちこちにある14の大学の科学者らの参加をひとつに合わせた。 関連記事:FDA statement on BPA's safety is premature / Frederick vom Saal, Jodi A. Flaws, Ana Soto and Gail S. Prins, Environmental Health News, Mar 05, 2018 (BPA の安全に関する FDA の声明は早計である) 立ち上げられてから 6年以上経過し、数十回の会合と議論が持たれた CLARITY-BPA は、その長い道程の終りに達しつつある。我々は、FDA からの”リンゴ”と独立系科学者らからの”オレンジ”を、調和がとれ、理路整然としたデータセットに併合するという目標を達成することになっている。 しかし、FDA が手続きを短絡しているという最近の展開に私は懸念している。合意に反して、FDA は初めから、リンゴとオレンジ両方のデータセットを十分に統合することなしに判定を急いでいるように、我々全てには見える(訳注2)。 それどころか彼らは、独立系研究者らの結果を検討せずに、研究のガイドラインの一部に基づき結論に達しようとしている。彼らは、学究的科学者らの参加なしに、研究のうちの彼らの部分について今月発表しようとしている。 それは、我々が CLARITY を立ち上げた時の意図と精神に反し、深く失望するものである。 それはアメリカ納税者の税金を無駄にし、我々を BPA の有害性の理解になんら近づけるものではない。 私が間違っており、 FDA は全ての参加者によって意図され、合意されたように、FDA は彼らの結果を独立系科学者のそれと統合する最終報告書をすぐに発表することを望む。 私は、ガイドライン研究と学究的研究の両方に BPA の低用量影響があることを確信する十分なデータを見てきた。 ガイドライン研究からの報告だけに基づく FDA 及び世界の他の規制機関による性急な BPA の有害性判定は、 CLARITY-BPA 研究の意図と目標を無効にするものである。 我々は”リンゴ”と”オレンジ”を統合するというどのような進展をも成し遂げていないし、公衆の健康は害を被るであろう。 ヒンデルの論議に対するより深く、より技術的な考察についてはここをお読みください。 カリフォルニア州ボリナスにある環境団体コモンウィール(Commonweal)の内分泌かく乱戦略プログラム(Program on Endocrine Disruption Strategies)の創設者であるジェロルド・ハインデルは、大学の研究者らに対する内分泌かく乱研究の助成金授与の管理を20年間行ってきた国立環境健康科学研究所を最近退職した。 編集者注: FDA は CLARITY 及び彼らの現状の BPA 研究に関する動画配信を今週の木曜日(9月13日)に行う。 加えて、ジェリー・ハインデルを含む独立系学究的 BPA 専門家らは 9月12日(水曜日)11時(東部時間)に CLARITY についてのウェブナーを開催する。同ウェブナーは、カーネギーメロン大学と環境健康科学(Environmental Health Sciences)の共催である。EHS のピート・マイヤーが議長を務める。 ウェブ上の関連記事: FDA science statement on BPA flawed 訳注1:CLARITY-BPA(BPAの毒性に関する学問的及び規制上の見識に関連するコンソーシアム)
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