内分泌学会プレスリリース 2018年3月18日
消費者製品中の化学物質への出生前暴露は
将来世代における男性の生殖能力に
影響を与えるかもしれない


情報源:Endocrine Society Press Release, March 18, 2018
Prenatal exposure to consumer product chemical may affect
male fertility in future generations
https://www.endocrine.org/news-room/2018/prenatal-exposure-to-
consumer-product-chemical-may-affect-male-fertility-in-future-generations


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年3月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/180318_Endocrine_Society_Prenatal_exposure_
to_consumer_product_chemical_may_affect_male_fertility_in_future_generations.html


【シカゴ】 日常的に使用されている様々な消費者製品中で見いだされる化学物質(DEHP)は、最近の数十年間、男性の精子数と質がかなりの低下していることに寄与しているかもしれないと、マウスの新たな研究が示唆している。

 その研究は、内分泌かく乱化学物質と呼ばれる体のホルモンをかく乱する化学物質の影響は、一世代以上に及ぶかもしれないことを発見した。その研究結果は、イリノイ州シカゴで開催される内分泌学会の第100回年次総会 ENDO 2018 で3月19日(月)に発表されるであろう。

 ”男性の精子数は過去20〜30年間にかなり低下したが、そのような驚くべき現象の理由はわからない。これらの結果は、母親が妊娠中に内分泌かく乱物質に暴露すると、その息子及びその息子の将来の世代が繁殖能力の低下又はホルモン欠乏を悩まされる部かもしれないことを示唆している”と、主著者であるイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、獣医学部門の修士/学士であるラドワ・バラカトは述べた。

 研究者らは、最も広く使用されている内分泌かく乱化学物質のひとつであるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)の影響を調査した。それは、塩化ビニル(PVC)パイプやチューブ、化粧品、医療機器、プラスチック製おもちゃなどを含んで、広範な産業用及び消費者用製品中で見いだされる。同研究は、出生前に DEHP に暴露させられた雄のマウスは血液中のテストステロン(訳注:男性ホルモンの一種)が著しく少なく、精液中の精子の数が少ないことを発見した。その結果として、通常、繁殖力を持つべき時期になっても繁殖力は十分ではなかった。

 ”最も驚いたことには、 DEHP に暴露させられた雄マウスから生まれた雄マウスもまた 同様な繁殖能力の異常を示し、DEHP への出生前暴露は一世代を超えた子孫の繁殖及び生殖能力に影響を与えることができることを示した”とバラカトは述べた。”したがって、DEHP は、以前の世代に比べて低下している現代の男性の精子数と精子の質への要因かもしれない”。

 バラカトと同僚らは妊娠マウスに DEHP の 4種類の用量のうち1種類を、、又はコーンオイルを、妊娠後11日目から出産日まで投与した。

 これらのマウスから生まれた雄の仔マウスが成獣になると 暴露していない雌マウスと掛け合わされ、第二世代のマウスが作り出された。この第二世代からの若い雄マウスは暴露していない雌と掛け合わされて第三世代のマウスが作り出された。各世代のマウスが生後15か月になったときに、研究者らは性ホルモンのレベル、精子濃度、及び精子の運動、または動きを測定した(潜在的な不妊の兆候)。

 第二世代の雄の中で、最も高い DEHP 暴露グループのマウスの系統だけが異常な生殖結果−低いテストステロン濃度、精子レベル及び精子運動を示した。DEHP 暴露マウスの系統の第三世代の雄もまた、より低い DEHP の投与を受けたマウスでさえ、生後15か月で生殖異常を示した。研究者らは、最も低い用量グループが最大の生殖異常を示したことを見つけて驚いた。

   ”この研究は、この化学物質への暴露を低減するために最大の努力をすることを公衆に教えることの重要性、及びこの化学物質をより安全なものに代替することの必要性を明確にしている”と、バラカトは述べた。

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