内分泌学会プレスリリース 2017年4月1日
よくある難燃剤への暴露は
甲状腺乳頭がんのリスクを高めるかもしれない


情報源:Endocrine Society Press Release, April 01, 2017
Exposure to common flame retardants may raise the risk of papillary thyroid cancer
http://www.endocrine.org/news-room/current-press-releases/
exposure-to-common-flame-retardants-may-raise-the-risk-of-papillary-thyroid-cancer


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年4月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/170401_Endocrine_Society_
Exposure_to_common_flame_retardants_may_raise_the_risk_of_papillary_thyroid_cancer.html


【オーランド】 フロリダ州オーランドで開催される(た)内分泌学会の第99回年次総会で発表される(た)新たな研究によれば、多くの家庭用品中で使用されているある難燃剤は、最も一般的な甲状腺がんである甲状腺乳頭がん(PTC)(訳注1)に関連しているように見える。

 ”甲状腺がんは、アメリカで最も急速に増加しているがんであり、最も増えているのは甲状腺乳頭がんである”と、研究の主調査者であり、ノース・カロライナ州 ダラムにあるデューク大学医学部の外科・内科教授ジュリアン・ソーサ博士(M.D., MA)は述べた。”最近の研究は、一部には環境的要因がこの増加の原因であるかも知れないことを示唆している”。

 多くの動物研究が、くつかの種類の難燃剤は、甲状腺ホルモンと同じような化学的構造を持っているために、内分泌かく乱化学物質として作用し、甲状腺ホルモンをかく乱することを示しているとソーサは述べた。そこで、彼女と同僚らは、甲状腺乳頭がん(PTC)との可能性ある関連を調べるために、これらの難燃剤に注目した。

 ”我々の研究結果は、家庭の環境中にあるいくつかの難燃剤への高い暴露は、観察される甲状腺がんの増加のあるものを潜在的に説明しつつ、甲状腺乳頭がん(PTC)の診断と激しさに関連しているかもしれないことを示唆している”とソーサは述べた。この研究は我々が個人の家の室内塵を難燃剤への暴露の測定として収集し分析したという点で新奇である”。

 室内塵中の難燃剤のレベルは、個人の暴露と著しく関連していると彼女は説明した。研究者らは140人の調査対象者の家からダストのサンプルを収集した。甲状腺乳頭がん(PTC)患者が70人、コントロールとして甲状腺がん又はがんの病歴のない人が70人である。コントロールは、年齢、性別、人種/民族、体重指標、収入及び教育レベルを含んで、重要な特性を合致させた。ソーサは、研究者らはこれらの環境的化学物質への長期的な平均暴露を評価することができたと述べた。彼らはまた、ポリ臭素化ジフェニルエーテル類(PBDEs)として知られるいくつかの難燃剤への暴露の生物指標を分析するために参加者の血液サンプルを収集した。

 甲状腺乳頭がん(PTC)は男性より女性に影響するので、ほとんどの調査参加者(79%)は女性であり、彼らの平均年齢は48歳であった。調査者らは二つの難燃剤の室内塵中のレベルが高いことは、居住者が甲状腺乳頭がん(PTC)である確率が高いことに関連していたと報告した。これらは、最も激しく使用されているポリ臭素化ジフェニルエーテルのデカブロモジフェニルエーテル(BDE-209)と、それほどではないが、有機リン酸系難燃剤であるリン酸トリス(2-クロロエチル) (TCEP)である。室内塵中の BDE-209 レベルが高かった参加者らは、 BDE-209 濃度が低かった人々より、2倍、甲状腺がんになるようであった。

 その研究によれば、室内塵中の TCEP レベルが高かった参加者らは、4倍以上、甲状腺を超えて周辺に広がる、より大きく、より浸潤性の腫瘍を持つようであった。対照的に、室内塵中の BDE-209 レベルが最も高い参加者らは、14倍、一般的な遺伝子変異(BRAF V600E)を持たない甲状腺乳頭がん(PTC)患者になるらしかった。この遺伝子変異は、もっと侵襲性をもって振る舞う傾向のある甲状腺乳頭がん(PTC)に関連している。”この差異を説明するためにはもっと調査が必要である”とソーサは述べた。

 この研究は、フレッド/アリス・スタンバック、研究所デュークセンター、及びデューク大学ニコラス環境校による支援を受けた。

出典:
Exposure to Flame Retardant Chemicals and the Occurrence and Severity of Papillary Thyroid Cancer: A Case-Control Study. Presented at ENDO 2017. SAT 248.


訳注1:甲状腺乳頭がん



化学物質問題市民研究会
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