EurActiv 2019年4月19日(更新 4月30日)
欧州議会 内分泌かく乱物質に関する 決議を採択 今会期での議論に幕 ジェラルド・フォルトゥーナ 情報源:EurActiv, 19 April, 2019 (updated 30 April. 2019) Endocrine disruptors drop the curtain on this European Parliament By Gerardo Fortuna | EURACTIV.com https://www.euractiv.com/section/endocrine-disruptors/news/ endocrine-disruptors-drop-the-curtain-on-this-european-parliament/ 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2019年5月23日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/190430_EurActiv_European_Parliament_ Endocrine_disruptors_drop_the_curtain_on_this_European_Parliament.html 会期最終日の4月18日(水曜日)に欧州議会は、欧州委員会に対して2020年6月までに法案を策定することにより内分泌かく乱物質(EDCs)からのより高い保護を確実にすることを求める法的拘束力のない決議を採択した(訳注0)。 同決議は、賛成 447、反対 14、棄権 41 で採択されたが、これは事実上、今会期中に扱われる最後の法案であった。 欧州議会は、 EDCs 又は潜在的な EDCs を発がん性、変異原性、又は生殖毒性、すなわち EU 化粧品法で禁止されている、いわゆる CMR 物質として分類される物質と同等の基礎で取り扱うことを提案した。 EDCs は、子ども用品、食品容器、身体手入れ用品、農薬、及び家具中など我々の環境のいたるところで一般的に見出される化学物質のひとつのクラスである。これらの有害物質はホルモン系の機能を変更し、人間と動物の健康に有害影響をもたらす。 国連環境計画(UNEP)と世界保健機関(WHO)による 2012年版報告書(訳注1)によれば、800近くの化学物質が、ホルモン受容体、ホルモン合成、又はホルモン変換の干渉を可能にすることが知られている又は疑われている。 欧州連合(EU)は、1996年にはこの問題の議論を始めており、1999年12月に欧州委員会により採択された“Community Strategy for endocrine disruptors”(内分泌かく乱物質のためのコミュニティ戦略)(訳注2)の中で健康及び環境への有害物質として EDCs を認めた。 欧州委員会は、昨年11月に内分泌かく乱物質のための新たな戦略を発表し、フィットネスチェックを通じて EDCs に適用可能な法律の包括的な審査を立ち上げて、この問題への関心を刷新した。(訳注3) 立法者らによれば、11月に欧州委員会により提案された EDCs のための EU の枠組みは、EDCsへの暴露を最小にするための具体的な行動計画と前進するための次のステップのための予定表の両方が欠如していたので、その反応は健康への脅威に対して適切ではなかった。(訳注4:NGOs の反応)
議会での議論 議会を前に EU 指導部を代表してヴィオレタ・ブルツ(Violeta Bulc)は EU の取り組みを支持した。”我々はこれまでに成し遂げた進捗を誇ることができ、我々はこれらの物質を扱う世界の指導者のひとりであると認められている”。 ”しかし、これで十分というわけではない。 EDCs は今日、世界の課題を残しており、多くの市民の懸念の源である”と彼女は述べた。 彼女は、欧州委員会は EU のアプローチを促進させ、12週間のパブリック・コンサルテーションの後、分野横断的なフィットネス・チェック(訳注:ある政策分野の規制の枠組みが目的に合致しているかどうかを審査する包括的な政策評価。Fitness checks)を 2020年の前半に完了させるため、そのコミュニケーションを昨年11月に採択したと付け加えた。 欧州委員会はまた年末前に、コミュニケーション中に含まれる目的を達成するための包括的な一連の行動の一部として、第1回関係者年次総会の開催と新たなウェブ・ポータルの立ち上げを行なうであろう。 今回の決議は議会内の全ての政治会派によって支持されたが、欧州人民党(訳注:最大会派 中道右派)は EDCs に関する一種のヒステリーであると批判し、特に、疑われる EDCs 及び証明された EDCs を同一のレベルに置く試みを批判した。 ”これは、度が過ぎ、拙速に過ぎ、科学的証拠に基づいていない”と中道右派の英選出議員ジュリー・ガーリングは述べた。 グリーン及びリベラルの立法者らは、欧州委員会の戦略中に含まれる EDCs の定義を、農薬とその他の植物保護製品だけに適用するように見えるとして、強く批判した。 ”現在、我々は暴露の 80%は食品を通じて生じていることを我々は知っている。だから EDCs は食品と接触する全ての材料中で禁止されるべきであるが、化粧品や玩具中でも禁止されるべきである”とベルギーのリベラル派のフレデリック・リーゼは述べた。
強い政治的な信号 EURACTIV は、内分泌学会の内分泌かく乱化学物質タスク・フォースの議長であり、去る3月に発表された欧州議会 PETI 委員会委託研究である内分泌かく乱物質に関する科学的報告書(訳注5)の著者の一人であるバーバラ・デメネイクス教授に彼女の考えを尋ねた。 彼女は、我々の日常生活に広く行き渡っている内分泌かく乱物質を規制するために具体的な行動を起こす要求を歓迎した。 デメネイクス教授によれば、議会は明確な超党派的総意によりこの決議の採択をもって、欧州理事会と欧州委員会の両方に強い政治的な信号を送った。 ”明確で迅速な EU の行動のための彼らの要求は、公衆の健康へのダメージを増大させているという利用可能な科学に基づく証拠により完全に正当化され、それは最早、EU 及び他の諸国によって無視されることはできない”と、デメネイクス教授は述べた。 パーフルオロアルキル化合物(PFAS)について問われて、それら化合物は数千種類も存在するのに、わずか2種類しか禁止されていいないのだから、この議題は特に懸念があると、彼女は述べた。 ”これらの物質はが甲状腺ホルモン恒常性(ホメオスタシス)を干渉し、免疫反応に影響を及ぼすという事実は、疫学及びラボテストの両方により明白に示されている”と、彼女は結論付けた。 [編集:Sam Morgan による] 訳注:本記事関連情報
訳注3 訳注4:NGOsの反応 訳注5 |