欧州委員会 プレスリリース 2018年11月7日
内分泌かく乱物質:
EUの市民と環境を守る将来のための戦略


情報源:European Commission - Press release, 7 November 2018
Endocrine disruptors: A strategy for the future
that protects EU citizens and the environment
http://europa.eu/rapid/press-release_IP-18-6287_en.htm

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年11月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/181107_EC_Endocrine_disruptors_
A_strategy_for_the_future_that_protects_EU_citizens_and_the_environment.html




 本日、欧州委員会は、有害化学物質から市民と環境を守るための約束を確認しつつ、コミュニケーションを採択した。そのコミュニケーションはまた、EUの取り組みが世界で最も現代的であり、目的に合致していることを欧州委員会がどのように確実にしようとしているかの概要を述べている。

 そのコミュニケーションは、殺虫剤と殺生物剤の範囲での内分泌かく乱物質を同定するための基準に関する加盟国とのワーキング・グループ会合が持たれた昨年、欧州委員会によってなされた約束に関して伝えるものである。それは欧州議会及び理事会の懸念に目を向け、第7次環境行動計画に従うものである。

 環境・海事・漁業担当委員カルメヌ・ベラは次のように述べた:”このコミュニケーションは、欧州委員会が内分泌かく乱物質を非常に深刻にとらえており、これらの化学物質への市民と環境の暴露を最小にするためにその取り組みを強化しようとしていることを確認するものである”。

 ”その新たな戦略は、その領域のより広い範囲において包括的にかつ一貫して、内分泌かく乱物質に目を向けるという我々の決意を示すものである。私は、世界保健機関の定義に基づき殺虫剤と殺生物剤に関する規則の下に、内分泌かく乱物質の同定基準に関して、すでになされた作業に基づいて進めていることを喜ばしく思う”と、健康・食品安全委員ヴィテニス・アンドリュカイティスは強調した。

 域内市場・産業委員 エルジビエタ・ビェンコフスカはつぎのように述べた:”我々はすでに、包括的な化学物質法及び化粧品法を通じて内分泌かく乱物質及びその他の有害な物質への市民の暴露を著しく低減している。本日、我々はこれらのリスクを最小にし、我々の市民の安全を確保するための更なる措置をとろうとしている”。

 欧州委員会は、内分泌かく乱物質に関するEU戦略の採択以来20年間に増大した知識、得られた経験、及び達成された成果に基づき、そのやり方を今後ずっと更新していく。

 内分泌かく乱物質に対するEUの戦略的な取り組みは、科学と予防原則の適用に強固に基づき続けるであろう。それは次のことを目指している。
  • 妊娠や思春期のような人生の重要な時期に特別の注意を払いつつ、我々の内分泌かく乱物質への全体的な暴露を最小にすること
  • 既存の研究に基づき、知識のギャップが存在する領域に特別な注意を払いつつ、ホライズン・ヨーロッパ訳注:2021年〜2027年の7年間を対象とするフレームワークプログラム(研究開発戦略センター(CRDS))の脈絡の中で、効果的で前向きな意思決定のための徹底的な研究の基礎の開発を加速すること
  • 全ての利害関係者が意見を聴取され、一緒に活動することが可能な、積極的な対話を促進すること。この脈絡の中で、欧州委員会は毎年、内分泌かく乱物質に関するフォーラムを組織し、国際的組織の活動への支援を強化するであろう。
 欧州委員会は初めて、既に収集され分析されているデータに基づく、フィットネス・チェック訳注:ある政策分野の規制の枠組みが目的に合致しているかどうかを審査する包括的な政策評価。Fitness checks)により内分泌かく乱物質に適用可能な立法の包括的な審査を立ち上げるであろう。一般的な科学に基づくEUの化学物質管理への取り組みを問題にすることなく、フィットネス・チェックは、人の健康と環境を保護するという目的を果たしているかどうかに関しての現在の立法の評価を含むであろう。そのフィットネス・チェックはまた、公衆協議(パブリック・コンサルテーション)を含むであろう。

 本日採択されたコミュニケーションはまた、内分泌かく乱物質に関する既存の政策の実施が最大の可能性を達成することを確実にするために、欧州委員会により現在検討されている取り組みを概説している。これは、REACH の下に確立されたように、安全データシートを使用することにより全サプライチェーンを通じての情報伝達を改善しつつ、そして更なる規制行動をもって内分泌かく乱物質の科学的評価を進めつつ、内分泌かく乱物質を同定することを含む。

背景

 内分泌かく乱物質はホルモン系の機能を変更し、その結果、人と動物の健康に悪影響を及ぼす化学物質である。

 内分泌かく乱物質に関する懸念は1990年代以来、増大している。1998年に欧州議会により採択された内分泌かく乱物質に関する決議に従い、欧州委員会は 1999年12月に内分泌かく乱物質のためのEU戦略を導入したが、それ以来、研究、規制、及び国際的な協力の分野での行動を通じて進められている。

 EUはすでに、内分泌かく乱物質に関する研究を幅広く支援している。EUは、研究と革新のための様々な枠組みプログラムの下に、1億5,000万ユーロ(約190億円)以上をもって50プロジェクト以上に資金提供をした。さらに5,200万ユーロ(約67億円)がテストとスクリーニングに関するプロジェクトのためのホライズン 2020 (訳注ホライズン 2020 は、全欧州規模で 2014年より2020年までの7年間にわたり実施される最大規模の研究及びイノベーションを促進するためのフレームワークプログラム)の下に準備されている。

 EUはまた、科学的評価に基づき、そして関連する法に規定されている様々な要求に沿って、内分泌かく乱物質から市民と環境を守るための強い規制措置をとっている。特にどのように内分泌かく乱物質に対応するかに関する特定の条項が殺虫剤及び殺生物剤、一般化学物質(REACH 規則)、医療機器、並びに水に関する法律に含まれている。さらに、食品接触材料、化粧品、おもちゃ及び職場における労働者保護に関して言えば、内分泌かく乱性を有する物質は、有害特性を持つ他の化学物質のように個別的に規制措置の対象となる(訳注欧州化学物質庁における内分泌かく乱化学物質に対する規制の動向)。その結果、内分泌特性を持つ多くの物質は禁止されているか、それらへの暴露は技術的に又現実的に実行可能な範囲で最小になるようにされている。

 欧州委員会はまた、関連する国際的組織、特にテスト手法の領域で経済協力開発機構(OECD)、の活動を支援しており、また国際的なパートナーと双方向の交換を実施している。

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訳注:関連情報



化学物質問題市民研究会
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