BAN プレスリリース 2011年4月13日
国連専門家会議
電子製品中の有害化学物質への対応を前進させる

電子製品の全ライフサイクルに目を向けた歴史的な会議

情報源:Basel Action Network, Press Release, 13 April 2011
UN expert meeting charts the way forward on hazardous chemicals in electronic products
Historic meeting addresses entire lifecycle of electronics
Re:UN meeting in Vienna on Hazardous substances within the life-cycle of electrical and electronic equipment
https://app.e2ma.net/app/view:CampaignPublic/
id:1400891.7028836314/rid:726a3188bbfe909f4952039cd2fa045c


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年4月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/COP9/COP9_BAN_Amendment.html

【サンノゼ、カリフォルニア 2011年4月13日】電子機器中の設計、製造、廃棄の全ての段階での有害化学物質の削減と廃絶に関する国連のプロセスへ勧告するために、初めて世界中から100人以上の専門家がオーストリアのウイーンに集まった。電子機器の製造、使用、リサイクルの過程で有害化学物質に曝露することについての懸念が、世界中の政府、民間企業、公益NGOsに対して2009年の世界会議の開催させた。

 ”この会議への期待は大きく、このウイーンでのワークショップは行動に移されることが今必要な包括的な道筋を示した”と、IPENのジョー・ディガンギは述べた。

 代表者らは、次のことを含む重要な勧告を策定した。設計の段階で化学物質の危険性を取り除くこと;現在使用されている有害物質を廃止すること;情報の透明性とその流れを改善すること;労働者、地域社会、消費者に対する平等な保護を確実にすること;有害な電子廃棄物の先進国から途上国への輸出を防ぐこと;廃棄物に近い機器の輸出と輸入を規制すること;小島嶼(しょうとうしょ)開発途上国の特定の必要性を考慮に入れること。

 160か国以上の政府が、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の地域会合で、グリーンな設計、情報の透明性、労働者と地域社会の健康保護、拡大生産者責任、汚染サイトへの対応、能力向上などの勧告を織り込んだ本ワークショップの議題に関する決議を承認していた。

 新製品の設計における改善を通じて多くの課題が解決されることが必要であるいうことを認識しつつ、懸念ある化学物質の廃絶、全成分の開示、代替戦略の特定と実施、グリーン調達、そして拡大生産者責任に関する勧告がなされた。

 ”ウイーン勧告は、本質的に安全でサプライチェーンの最初の時点から害を防ぐ良い設計を求める警鐘である”とクリーン・プロダクション・アクションの研究ディレクターであるマーク・ロッシは述べた。”消費者はよりグリーンな設計求め、賢い会社はそれに耳を向けるであろう”。

 韓国労働安全衛生研究所(韓国)及び国際労働機関(スイス)は、電子機器製造労働者と近隣の地域社会が現在どのように有害化学物質に曝露しているか、懸念を引き起こす化学物質のタイプ、有害影響の認識、曝露の管理、そして、いかにSAICM合意がこれらの問題に対応する必要があるかに関する情報を発表した。

 ”生産中に人の健康を保護することは、ポスターやデータシートだけではできない”とカリフォルニア州オークランドに拠点を置くワークセーフのアマンダ・ホウズは述べた。”これらの新たな勧告は、大企業や協力会社により緊急に実施されることが必要な真の防止と予防の新たな生産パラダイムに向けて動き始めるべきである。我々は、労働者と地域の住民を真に保護する新たなモデルを必要とする”。

 ワークショップの更なる勧告には、汚染防止(有害化学物質の使用の廃絶を含む);協力会社は労働者と周囲の地域社会の保護を確実にすること;汚染報告書の作成;労働者と住民の健康監視を強化すること、などを含む。

 地球環境戦略研究機関(IGES)(日本)、シャントウ(汕頭)大学医学部(中国)、バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)(アメリカ)が電子廃棄物に関する発表を行なった。論点には次のようなことが含まれていた。電子廃棄物中の有害物質;先進国及び途上国の両方で電子廃棄物リサイクルによる有害物質、金属、及び難燃剤への曝露;焼却及び埋立の危険性;廃棄物生成における製品の陳腐化と消費;コストの外部化;先進国から途上国への廃棄物の投棄;バーゼル禁止令。

 ”10年以上にわたる有害電子廃棄物の投棄は止める必要がある”とワシントン州シアトルにあるバーゼル・アクション・ネットワークのジム・パケットは述べた。”ウイーン勧告は、不法な取引に対する取り締まり強化、汚染サイトのクリーン・アップ、世界中の消費者に利用可能な持ち帰りプログラム(free take back programs)を含む解決一式を提供している”。

 電気・電子製品のライフサイクル内有害物質に関する国際ワークショップはバーゼル及びストックホルム条約事務局及びウィーンでこの会議のホスト役を務めた国際連合工業開発機関(UNIDO)によって主催された。このワークショップは、2020年までに有害な化学物質と廃棄物の適切な管理を確立するための世界戦略と政策の枠組みである”国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)”の一部である。

 電子機器製造国及びその廃棄物で影響を受ける国からの30以上政府の代表が民間分野及び公益NGOsの代表とともに参集した。ワークショップの勧告は、SAICM地域会合、8月の作業部会会合、及び2012年の第3回国際化学物質管理会議での検討に提供されるであろう。

 国連の主催者は、代表者らに現状の問題を知らせるために会議でプレゼンテーションをする主要な人々を招聘した。まもなく勧告とともにプレゼンテーションが下記に掲載されることになっている。
http://www.basel.int/meetings/wrks-eew-unido/index.html

連絡先:
Ted Smith, International Campaign for Responsible Technology +1-408- 242-6707; tsmith@igc.org

Jim Puckett, Basel Action Network +1-206-652-5555; apex@seanet.com


電気・電子製品のライフサイクルで内での有害物質に関する
国際ワークショップの基本メッセージ

ウイーン 2011年3月29日〜31日

 ”電気・電子製品のライフサイクルで内での有害物質に関する国際ワークショップ”の任務は、電気・電子製品の使用寿命中に生ずる化学物質の適切な管理に関連する問題を特定し評価すること、及び、SAICM 作業部会(OEWG)および第3回国際化学物質管理会議に検討用に、そして可能性ある協力活動用に提供されるであろう将来の活動のための一連の選択肢と勧告を開発することである。

 ワークショップでは、サプライチェーンの上流、中流、下流における一連の勧告が策定された。このワークショップの参加者は、次の項目を承認した。

  1. 電気・電子製品のライフサイクル中の有害物質から人の健康と環境への害を防ぐことが重要である。

  2. 電気・電子製品中で見出される化学物質の適切な管理におけるライフサイクル・アプローチは最も重要である。

  3. 電気・電子分野における期待される成長と長期的な持続可能性は、環境、健康、安全、社会の正義特性の並行した均衡の取れた改善を求めるであろう。

  4. 上流での解決が最も効率的で効果があり、上流で問題に対応することがライフサイクルの他の部分に大きくそして積極的に影響を及ぼす。

  5. グリーン設計と電気・電子製品中に含まれる有害物質の廃止を実施する速度を上げることが求められる。

  6. 電気・電子製品中で使用されている有害物質に関する情報について、消費者、労働者、及び製造と処分サイト周辺の地域社会を含むライフサイクルに関わる全ての利害関係者のために透明性を改善する必要がある。

  7. 電気・電子製品のライフサイクルを通じて消費者、労働者、地域社会の健康をを平等に保護することが重要である。

  8. 製造、貿易、廃棄物取扱、管理を含んで電気・電子製品のライフサイクルの有害な段階の過程で、途上国が直面する不均衡な負担を公平にする緊急の必要性が認識されている。

  9. 先進国から途上国及び移行経済国への有害な電気・電子廃棄物の輸出を防ぐことが必要であり、廃棄物に近い電気・電子製品の輸出と輸入は管理されるべきである。

  10. 電気・電子廃棄物の安全で環境的に適切な管理のための効果的な政策と規制の枠組み及び技術の開発と実施が促進されるべきである。

  11. 現在はリサイクルされていない又はそのための能力が不適切である部分を含んで、安全で環境的に適切なリサイクルのための最良の慣行と能力の開発及び実施が必要である。
  12. 例えば、小島嶼(しょうとうしょ)開発途上国のような特定の地域の異なる必要性が考慮されるべきである。

  13. 諸国はストックホルム条約、ロッテルダム条約、バーゼル条約、バーゼル禁止令(Basel Ban Amendment)、ILO条約、及びその他の関連文書を批准し、それらを国内法に反映し、それらを実施すべきである。

Asia Monitor Resource Centre
Basel Action Network
Citizens of the Earth Taiwan
Clean Production Action
Environment and Social Development Organization
European Trade Union Institute
IPEN
Island Sustainability Alliance
Korean Institute of Labor Safety and Health
Toxics Link
International Campaign for Responsible Technology
Worksafe

訳注:
 このワークショップに参加したNGOメンバーによれば、基本メッセージの「13.諸国はストックホルム条約、ロッテルダム条約、バーゼル条約、バーゼル禁止令(Basel Ban Amendment)、ILO条約、及びその他の関連文書を批准し、それらを国内法に反映し、それらを実施すべきである」 に日本政府が抵抗した。これは、先進国(OECD)から途上国へ、いかなる有害廃棄物も輸出することを禁止する」 というバーゼル禁止令(Basel Ban Amendment)に反対する勢力の先頭にたつ日本政府としては当然、予想されたことである。今後日本政府が、この基本メッセージにどのように対処するのか注目しなくてはならない。



トップページに戻る