BAN 2007年7月11日
アメリカの電子廃棄物が
中国から輸入される子ども用宝石などに含まれる
有害物質の供給源であるらしい

米アッシュランド大学とBANの調査

情報源:Toxic Trade News / 11 July 2007
Research Identifies U.S. Electronic Waste as Likely Source of Toxic Jewelry Imports from China
Exported Waste Computers and Old Car Batteries May Come Back to Poison our Children
by Ashland University and Basel Action Network
http://www.ban.org/ban_news/2007/070711_toxic_jewelry_imports.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年7月14日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/070711_toxic_jewelry_import.html



溶融ハンダのたまりの上で電子回路基板を加熱処理する女性。中国ではこのようにして毎日、数千人の男や女、子どもが北アメリカや日本から輸入さた電子廃棄物を処理している。
Taizhou, China 2007

電子回路基板の処理
Taizhou, China 2007

電子回路基板を加熱処理して集められたハンダ。中国で毎日数千のバケツで収集されるひとつ。
Taizhou, China 2007
Images c2007 Stuart Isett
http://www.isett.com
 【2007年7月11日アッシュランド、オハイオ】オハイオ州アッシュランドにあるアッシュランド大学化学教授ジェフリー・ワイデンハーマー博士にとって、彼のクラスが分析する宝石サンプルを買うために地域の1ドル・ショップに行ったことが有害製品の世界貿易に関する1年にわたる研究プロジェクトのきっかけであった。ジャーナル”Chemosphere”に間もなく掲載されるふたつの論文の中でその研究は、電子廃棄物及び車の古いバッテリーが中国から輸入されるおもちゃの宝石から最近発見された鉛の供給源であるらしいことを示した。

 2002年、シアトルを拠点とするバーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)はその報告書、”危害を輸出する(Exporting Harm)”の中で、アメリカでリサイクルとして回収される電子廃棄物の80%が実際にはアメリカでリサイクルされることなくアジア、特に中国に輸出され、そこで原始的で環境を汚染するような状況の下で、大量のコンピュータ電子回路基板が加熱処理されているということを明らかにした。

 ワイデンハーマー博士の分析研究は、電子廃棄物がアメリカの市場に出ている有毒な中国製の子ども用おもちゃの宝石という形でアメリカに戻ってきて我々の子どもたちに害を与えている鉛の供給源であることを示唆している。中国で見られる電子廃棄物の多くは北アメリカから来るものである。

 ”残念ながらこれは、我々がまいた種である”とワイデンハーマー博士は述べた、”最近のニュースは中国があらゆる種類のひどいものを我々の所に輸出しているということで一色であるが、我々の研究は、我々が有毒物質の循環の一部を担っているということ、すなわち、我々自身の有害廃棄物が中国人を害しているだけでなく、アメリカに輸出される製品中にリサイクルされており、アメリカに戻ってきて我々の子ども達を害していることを示唆している。もしそうなら、これらの有害廃棄物の輸出を止めるよう責任を果さなくてはならない。”

 鉛入りの子ども用宝石は、2006年にミネソタ州の少年が後に重量で99%以上の鉛を含んでいたことが分ったハート型の飾りを飲み込んで鉛中毒で死んで以来、アメリカでは厳しい監視の対象となっている。本年1月1日以来、その多くが中国から輸入されている宝石、おもちゃ及び衣類で鉛汚染された800万以上のアイテムに及ぶ26件の製品回収(リコール)があった。米消費者製品安全委員会は、現在、重量で0.06%以上の鉛を含む子ども用宝石を禁止することを検討中である。この提案に対する決定は2008の早い時期になされることが期待されている。

 ワイデンアハーマー博士、彼の学生及び同僚のミカエル・クレメンテは彼らが分析した宝石のあるものは主に鉛とスズ(電子ハンダの主要な要素)が主成分で銅が少し含まれていることを発見した。彼らは、電子回路基板のもうひとつの要素である銅は溶解すると鉛−スズのハンダ中に急速に溶け込むことも分った。彼らはさらに、重量で90%以上の鉛を含む鉛濃度が高い39の宝石を分析し、これらが、鉛・酸バッテリー中の鉛合金の主要成分であるアンチモニを大量に含んでいることを発見した。

 生態学者でもあるワイデンハーマー博士にとって、鉛含有の有害廃棄物は鉛製品にリサイクルされるという仮定はごく自然な関係であった。宝石を分析する前に、彼のクラスは電子回路基板の鉛含有量を分析し、また世界規模の電子廃棄物貿易の勉強していた。彼のクラスが、輸入される中国製宝石の多くに高い濃度の鉛を見いだした時に、このような関係を疑うことは合理的であるように見えたので、彼は、アメリカの電子廃棄物が中国で有害な状況でリサイクルされていることをすでに報告していたBANに連絡した。

 ”中国では、電子回路基板を加熱処理している数千人の作業者によって毎日、バケツで収集される古いハンダは何になるのであろうかと不思議に思った”とBAN代表のジムパケットは述べた。ジェフは、仮説を実証した後に私に電話をかけてきたのはもっともなことだ。グローバル化された世界では、汚染には国境がないので、アメリカ政府の有害廃棄物の自由貿易を許す政策により、有害物質が我々のところに戻ってきて我々を害することになる。”

 アメリカは、世界中の170カ国によって批准されており有害廃棄物の輸出入を厳格な管理の下に置くバーゼル条約を批准していない世界で唯一の先進国である。実際、アメリカは、電子回路基板やほとんどの電子廃棄物を自身が持っている有害廃棄物の輸出を管理する不十分な法律から適用を免除してきた。さらに、彼らは、有害廃棄物の先進国から途上国への輸出を禁ずるバーゼル禁止条項にあからさまに反対してきた。

 鉛は、行動障害や学習障害からの脳卒中や死に至るまで広範な健康影響を引き起こす毒性の高い金属である。小さな子どもたちは、鉛が脳や神経系に与える影響への感受性が大人に比べて高いので、リスクが高く、最近の研究はたとえ少量の鉛でも神経系に著しい害を及ぼすことを示している。アメリカでは鉛入り塗料が子どもたちとって大きな危険としてあるが、鉛の毒性は高いので、特に子どもたちにとって不必要な全ての暴露を排除すべきである。

更なる情報のための連絡先
  • Dr. Jeff Weidenhamer, Ashland University, Ohio, +1 (419) 2895281 (office), +1 (419) 6060174 (mobile), jweiden@ashland.edu
  • Jim Puckett, Basel Action Network, from London +44 7857 242949 (mobile), jpuckett@ban.org
記事
写真: Available at Top Story: www.ban.org



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