●スヴァルxサリサ学園版● なんと、サリサの方が片想いしています。(逆なんです)
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「白き面影」 あっという間に夏休みが終わり、高校の二学期が始まってしまった。 9月最初の日曜日、私の部屋には他校の友人、椎葉がケーキ持参で遊びに来てくれている。 「夏休み、いかがでしたか?いいことありました?昴さんと」 いわゆるお嬢様学校で過ごす彼女は、丸テーブルに持参のケーキを広げ、紅茶にミルクを溶かしながら品良く訊ねる。 「いいなー、椎葉は。彼氏がいて・・・・」 「二人で旅行に行きました」 きちんと正座した行儀のいい彼女は、実は大胆な付き合いをしている。 「・・・・・・。お、大人だね…。スゴイね」(汗) 「梨咲から誘ってみればいいのです。映画やお買い物ですとか」 「誘いたかったよ!誘いたかったんだけどね〜!!」 傍のクッションを掴み取り、体育座りで抱きしめる。 「いつも先を越されちゃうんだ。舞弓ちゃん、行動が早すぎるよ〜!」 友達を呼んだのは、 私は数ヶ月前から、大学生の昴さんに片想いをしている。 彼には家庭教師している中学生の女の子がいて、その子も昴さんのことが好き。 それだけならいいのだけど(本当は良くない)、彼女 「聞いてよ。舞弓ちゃんずるいよ。映画もね、だいたいいつも先回りして約束つけちゃってるんだ。夏休みに家の人と昴さんで海に行ったって言うし。家族ぐるみなんてヒドイよ〜!それでなくても、週二回も家庭教師してるのにー!」 「梨咲も昴さんに教えて貰うというのはどうでしょう」 「うーん…。教えて欲しいよーーー!でも、さすがにもう手いっぱいじゃないかなぁ…なんて・・・・」 「梨咲は、少し遠慮しすぎなのかも知れないですね」 「わがまま言える舞弓ちゃんが羨ましいなぁ…」 「一日だけ、梨咲とだけ過ごしてくれないかと。頼んでみましょう」 大胆な行動で恋を掴んだ彼女が言うと頼もしい。本気で有言実行してしまうのが彼女なのである。 私の知らぬ間に昴さん本人に直談判して、しっかり約束をつけてきてきれる彼女は素晴らしき友人でした。 |
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かくして、『舞弓ちゃんには内緒で、一日私と一緒にいてくれませんか』と言う、非常に我侭で勝手な願いの叶う当日。 私は朝早くから気合を入れてお弁当を作り、お洒落をして、髪形もいつもポニーテールなので今日は下ろして、アクセントに髪飾りをつけてみる。 軽くメイクもして、めずらしくマニキュアまで塗って彼のお迎えを待つ。 携帯電話にメールが届いて、すぐさま私はアパートの駐車場へと急いだ。 「お、おはようございます昴さん。今日はよろしくお願いします」 車まで走り、窓の下ろされていた運転席の彼にドキドキしながら丁寧にお辞儀する。 「おはよう。珍しい格好だな。そういうのも似合ってる」 「そそそ、そうですかっ?」 いつもミニスカートなどの元気な格好なので、今日は路線を変えて女の子らしいロングスカート。カラーも白やピンクで大人しくまとめていたのが好評で嬉しかった。 助手席に座り、コンパクトカーがゆっくりと公道に出てゆく。 チラチラと想い人の横顔を見るだけで幸せ気分でいっぱいになった。 「あの、お弁当作ったんです。後で食べましょう…」 「それは楽しみだ」 ちょこっと助手席を振り向いて微笑む、やはり、かっこいいです。 この方は全く鼻にかけてもいませんが、街角でモデルにスカウトされるほどの美男子、大学でも街角でもどこでも女性にモテモテ。 普段寒色系の服を好んで着ているのですが、今日も黒を中心とした服装でした。 でも恋人はいません。意中の人が居るから…という訳ではなく、彼は自分の境遇から、人を近づけないようにしているのでした。 そんな中で女の子として割と近くにいるのが、私と、教え子の舞弓ちゃん。 舞弓ちゃんは父親が昴さんの恩師ということで、無下にできないという事は分かっているのだけど……。 優しい人だけど、これ以上進めない壁が見えて……。傍に居てもすごく遠い感覚に襲われる。 運転する横顔を盗み見ながら、今日もやはり胸は軋んだ。 隣町の映画館に入り、ジュースとポップコーンを買って席につく。 彼と映画を見るのはこれが二回目。『デート』とはっきり銘打っては初めてなので緊張してしまうな……。 隣に座って、いちいち彼の仕草に過剰反応する私。ポップコーンを食べるために彼が手を伸ばしてくるだけで、鼓動がはみ出しそうになっていたのだった。 本日選んだ映画は(やはりムード重視で)青春恋愛ものにしてみた。 正直言って、見た後でどういう感想を聞けるのかすっごくドキドキするんだけど…。恋愛の話なんて聞いたことがないし、恋愛観も全く分からない。 何か話が聞ければもうけものって所かな…。 「あの…、私の趣味で選んでしまって、ごめんなさいです。いつもはどんな映画を見るんですか。友達と来たりしますか?」 「今日はお前のための日だからな、気にせず見たいものを見ればいい。…そうだな。こないだ和久と「ペンギン皇帝」を見に行った」 「えっ!?い、意外…!」 「自然ものはいい勉強になるんだ。いい映画だった」 「…なるほど…。昴さん美術系ですもんね。(ペンギンさん可愛い〜!とかって言うのじゃないんだ)」 照明が落ちて、映画の予告編が始まった。 スクリーンに見入り、クライマックスではしっかりハンカチを握る。 感動してしまって、私は何度も何度も涙を拭った。 「はぁ…。泣いちゃいました…。良かったですね…!」 「そうだな。いい映画だった」 館を出て、近くの公園へと足を伸ばしてお弁当にすることに。簡単に感想を言い合いながらホールを後にする。 恋愛ものと言う事で、映画館を出る人ごみにはカップルが多く、手を繋いでいる組もちらほら。 「………」 羨ましいな、やっぱり…。 「…あの、…舞弓ちゃんとは、手を繋いだり、腕を組んだりしていますよね…?」 何度か見かけては、羨ましさと悲しみと、さまざまな感情が私の中で嵐となった。恋敵は簡単に彼に抱きつくような子だったから。 「……アイツから、無理やりな」 翳った私を気遣い、数歩先に在った彼の足は私を待つ。 無理やり…。私がそうしても、振り払われたりはしないのかな…? 何度も考えたことがある。 考えるだけで 過去の失恋の傷みが、私を小さな臆病者に変えていた。この人を失うことは、とても、とても怖くて いつも夢見るだけで勇気はスルスルとしぼんでしまった。 「…そんな顔をするな、梨咲。行こう」 「あ…。…え……!」 私の手を大きな手が掴んで、緑広がる公園へと連れて行く。 じわじわと全身が熱くなって、アスファルトを渡るはずの足が覚束ず、何も無いところで転んでしまいそうになる。 夢みたい……。彼の方から、手を繋いでくれるなんて…。 横断歩道を渡りながら、歩道を進みながら、彼の後姿をまじまじと遠慮もなく見つめた。気持ちの上では、今にもその身に抱きついてしまいたい。 私が落ち込んでいたからかな…? これは仕方のない、「付き合い」なのかどうか…。 これは好意なのか、優しさなのか、どう思われているのか分からなくて、聞きたいけれど聞くこともできないんだ……。 景色のいい場所を見つけて、昴さんは「ここでいいか」と促した。 ベンチに座る私は耳まで真っ赤に染まっている。 「え…、えっと…。あのっ。カツサンドです。他にも玉子とか、ツナとか、色々…。デザートには寒天ゼリーを作ってきました」 恥ずかしいぐらい頬が火照るのをごまかしつつ、お弁当を広げ、お茶を勧める。私がこんなに動転しているにも関わらず、昴さんはさすがいつも通りの涼しげなまま。 初秋の風に揺れる樹木を眺めつつ、彼はお弁当に手を伸ばす。 「…美味いな。さすが梨咲だ」 「………」 褒められて照れながら、私もサンドウィッチを口に運んだ。 それからは随分と私も夢心地で、買い物、カラオケ、夕食と楽しい時間はあっと言う間に過ぎていった。 ドライブしながらの帰り道、流れる対向車のライトや夜景を眺めながら、私は彼との出会いを思い出していた。 |
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失恋して落ち込んでいた私は、近所の川辺で夕刻過ぎても家に帰らず、ずっと膝を抱えたままでいた。たまたま近くでスケッチブックに写生していた大学生が、脈絡もなく私に絵を一枚残した。 茜色の夕焼け景色の中に、膝を抱えた私の後姿がお邪魔している、温かく優しい印象の一枚。 「いい絵が描けた。お礼だ」 たった一言、目を見張る容姿で告げた大学生、それが昴さんとの出会い。 今でも大切な一枚です。 お礼を言うために川辺や大学を覗いたり、その後も彼を知る度に気持ちは少しずつ確実に膨らんでいった。 「あの…。また、一緒に出かけて下さいね。今日はすっごく楽しかったです」 自宅が近付き、めいっぱい明るく伝える。返事は意外にも苦い。 「…俺でいいならな…」 「…っえ?そんな…、昴さんで、いいです…」 なんとなく意図を察して、私は慌ててフォローする。 「私は、昴さん、…差別したりしないですから……。一緒にいるの、好きですし…。あの…、えっと……」 信号待ちの間、重い緊張が車内に満ちる。彼の視線も前方から動くこともない。 「………」 膝元のバックの紐をいじっては、どうしようかと言葉に迷った。 「…。ありがとう」 沈黙を破ったのは彼だったけれど、それでその話題は打ち切り。 駐車場で別れて、彼の車に小さく手を振った。 |
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数日後、昴さんを探していた私は、大学傍の公園で彼の友人和久さんと出会う。 「昴さんをお探しですか?今ちょっと煙草を買いに行ってる所です。待ってればすぐに来ますよ」 「そうですか。じゃあ…。待たせて貰いますね…」 和久さんは、昴さんと昴さんの姉と親しく、私ともおかげさまで顔見知り。勘良くすぐに私の気持ちにも気づいていたので、恋の協力者でもあった。 「こないだのデートはどうだったのですか?何か進展ありました?」 「いえ…。あったようで、ないような…」 簡潔に報告する私がしょんぼりしていると、「おやおや」と和久さんは残念そうに口元に手を寄せ、悩むポーズを作った。 「そうそう。こないだ、素敵な作品を見つけたんですよ。彼は隠していたんですけどね。うっかり見てしまったことにしましょう」 「うっかりって…。あ、そんな勝手に……」 彼の荷物を漁って、和久さんは嬉しそうに一枚のラフ画を取り出す。 「彼は殆ど人物を描かないのですが…、課題で人物が出されたと言うことで、練習に描いたものだと言っていたんですけどね。どう見ても梨咲さんですよね」 「…そうですか…?」 鉛筆のラフ画に、軽く水彩で色を付けただけの一枚。白いワンピースの女の子は青空を見上げていて、顔は手の影になって描かれていない。 「でもポニーテールじゃないですか」 「………。今は切っちゃってますけど…」 なかなか納得しないながらも、ラフ画を見つめる私の胸は高鳴っていた。あまり期待はできないけれど、あの人の景色に私は入ってもいい存在なのかな、と…。 青空の下、白い面影の少女は眩しそうに微笑んでいました。 「…。何してるんだ」 「おっと。すみません。突然の強風に荷物が乱れてしまいまして」 「嘘をつくな」 「梨咲さんも来ましたし、お邪魔なので私退散しますね。それではまた〜」 相変らず、言い逃れの巧い(?)人でした。 二人きりになって、さすがにモデルの真相を聞く勇気は私には無かった。 「…いいお天気ですね。あの、私もここにいていいですか?」 でも、同じ景色を見るために、私もここに残ることにする。 「差し入れにクッキーもあるんです」 「それはいいな」 秋空の下、ベンチの上の私も微笑む。 |
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*後書き*
190,000HITキリ番リクエスト 花鈴様よりスヴァサリ現代学園版でした。
現代版だとサリサが片思いなんですよね。現代版にすると昴の家庭事情がますますヘヴィなんで、どうにも人に壁があります。
何処に行ってもワグナスってこーゆーキャラ(笑)
思いの他切ないお話になりましたが、以前別の方に「スヴァサリで甘い話が読みたい」と言われた記憶があり、その辺も意識して書いてみました。お気に召せば嬉しいですv(甘くない?)
リクエストありがとうございました(*´∀`*)ノ