「甘さじゃ 誰も 救えない」   それが、ボクの 「正義」。











「よく・・・、ここがわかったね」

「まさかわざわざ会いにきてくれるなんて思わなかったよ。葉くん」

ボクは、彼の持ち霊に呼び出され、船の外にパジャマ姿で出ていた。本当は勝手に一人で船の外へ出てはいけないのだけど・・・・。

「ずっと、君に謝りたいと思ってたんだ」

会いにきてくれたことは嬉しい。ずっと思っていた言葉を君に言える。

「ボクは・・・。君達といると、揺らぎそうになってしまう自分の弱さが怖かったんだよ」

「・・・・・」

葉くんは、何事も無く、気にした風もなく、ボクを責めはしない。
そう。君はそんな奴だった。

「オイラは、おめぇが「選んだ場所」で、楽に、元気でいてくれれば、それだけでいいと思うんよ」

「葉くん・・・」

「でも、一言いうならな、リゼルグ」

ボクに体ごと向き合った葉くんは、いつものやわらかさを残しつつも、瞳は真摯にボクを照らした。

「おめぇは、まだ揺らいでる気がする」

「!」
何を言うのだろう。思わずボクは瞬きをして彼を見つめた。

「おめぇはオイラを裏切ることはできなかったんよ・・・。オイラの甘さを否定しても、おめぇはオイラを完全に断ち切ることはできなかったんだろうなぁ・・・」

彼は「ウェッへッへッ」と笑った。
「オイラは信じてた。嬉しかったぞ。おめぇはやっぱり友達だ」

「正義」の名の元に、「死」と言う裁きを行使できなかったボク。それは、でも、モルフィンがそれを拒んだからで・・・。決して君を・・・・・。
それは違う。違うよ、葉くん。葉くんを裏切れなかったわけじゃないんだ。

「だから、おめぇは謝る必要ないんよ。よかったな。オイラも、おめぇを「許さない」なんて思いたくねぇもんな」

君に例え責められても・・・。
ボクは間違ってると責められても・・・。

「でも、オイラはどんなことがあっても「殺し」はしねぇ」

「・・・・。ハオでも・・・・?」

「もちろんハオでもだ」

どうしてそこで笑うの君は。・・・だからなんだ。
君の優しさ、それとも甘さ?そのユルさ?にボクは自分を見失いそうになる。

今まで、そう、あの日から、ハオを倒すためだけのためにボクは生きてきた。それなのに・・。

「おめぇは「死」の悲しみをちゃんと知ってる。だから「殺せない」んよ」

「ボクは・・・!」

違う!反論しなければ・・・!
それは、そんなことじゃ、X−LAWSにはいられない。ボクにはこんな場所無理だと・・・。




・・・・・・。
まさか。

葉くん、まさか。
ひょっとしたら、ボクを、迎えに来てくれたの・・・。




ボクは言葉を失い、俯いて押し黙った。


でも、「帰ってこい」なんて、君は言わないね。
わかるんだ。ボクが何をしても、何を言っても、きっと葉くんはこう言うんだ。

「そうか」

と・・・。



どこかに寂しさを覚えるのは何故。
ボクは言葉を待ってるの?そうしたらボクは帰れるのかな・・・?

どうして葉くんは何も言わないのか。

それはきっと、これは僕自身が決める事だからなんだ。
ボクの心で、誰に言われるでもなく。帰りたいのなら皆に謝って帰らなければ。そう言っている気がする。

・・・・・・。

ただ海辺の夜風に吹かれ、また葉くんは何も言わない。何も聞かない。ありのままのボクを待っている。

辛いよ。

「帰って来い」と言われたなら。
「あんな正義は間違いだ」と言われたなら。ボクは「楽」になれるだろうか。

「おめぇはオイラを裏切れない」
「殺せない」
・・・否定してしまえないよ。ほらまた心が揺れている。


「ボクは君に会えてよかった」
その言葉は嘘じゃない。今も。

でも、どうしてかな。ずっと、苦しいんだよ、葉くん。

君に会ってから。







「オイラは、おめぇの悲しみはわからん。そして、おめぇの言う、おめぇの「強さ」も「弱さ」もようわからん。「強さ」ってのは殺すための力のことか・・・?」

「・・・・・」

ハオを倒すための力。ボクにとっての「強さ」とはそうだった。
じゃあ「弱さ」は?葉くんといて揺らいだこの心は?

「殺さなくても、人は守れるんよ」


ボクは、何故、君だけを否定したのだろう。
そして、何故、君だけに罪悪感が消えないのだろう。


「お前は、今は、誰と戦っているんだろうな・・・」

夜空を見上げ、葉くんは独り言のように呟いた。
彼と出会ったときに言われた事を。


復讐にかまけ、相手のことなど考えていなかった僕を、すんなり許し、仲間にしてくれた君は。
あの時は怒ってボクを殴った。

嬉しかったんだよ。


・・・・ねぇ、もしかしたら。
またボクが誰かを傷つけようとしたら、怒って殴ってくれるのかな。

また話をいくらでも、聞いてくれるのかな。


でも、話さないのはボクだね。ボクが君から離れたんだ・・・。



だから待っているの?
ボクが気持ちを話し出すのを。
「いつでも待ってるぞ」 そう言われてる気がするよ。


何も口にしなくても。

ただ君がいるだけで、どこかで必ずボクは救われている。必ずボクを君は許してくれるなんて、思っているのかも知れない。甘えているの・・・・?

こんな悪あがきも、全ては君に甘えてるだけなのかも知れない。

君は必ずボクのそばにいる。ボクを見ている。

・・・・・・ううん。違うね。

ボクが君を見ているんだ。



ボクが戦っているのは誰なの。
そして帰りたいのは何処なの。


あの頃のまま、ボクが一番弱いのかも知れない。自分の居場所に迷い続けるボクが。
何処に行けばいいのかな。

いつまでも、悲しみが消えない。
いつまでも、苦しみが消えない。

いつまでも、君だけが消えない。




「明日も早いし、そろそろ帰るわ」
笑って帰って行った葉くんの後姿は、今日もボクを許し、そしてまた問いかけを残す。












「甘さじゃ 誰も 救えない」 それが ボクの 「正義」。

ならどうして、あの時お前は泣いていたんだ・・・?

リゼルグ。




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初めて書いてみました。葉xリゼ、です。
ラブくなくてすみません。(いや、充分かな;)こんな感じのシリアスっぽいのがネタであったので書いてみた次第ですv
普通にラブいのも書けるかも知れないけど。

WEB小説あんまり読んでない方で世間はどうかわからないのですが、こんな感じのものをまたちらほら書きたい思ってますv
(葉xリゼらぶですv原作エピローグ編などの話も書きたいですねv)