著者紹介


崎由美
とよざき・ゆみ
森望
おおもり・のぞみ
1961年生まれ。ライター。『GINZA』『本の雑誌』『レコレコ』などに書評連載多数。「ダ・ヴィンチ」では岡野宏文氏と対談形式のベストセラー解剖「百年の誤読」を連載。『役者通信』の連載コラム「それ行けトヨザキ!! 観て逃げ日記」など、劇評も多い。著書に『それ行けトヨザキ!!』(文藝春秋)など。池袋コミュニティ・カレッジでこの4 月から「年収600 万円の万能ライター養成講座」を開講。

1961年生まれ。翻訳家。最近の編訳書にシオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出書房新社《奇想コレクション》)コニー・ウィリス『犬は勘定に入れません』(早川書房/4月刊行予定)など。『本の雑誌』『週刊新潮』『小説すばる』などの書評欄も担当。『SIGHT』では北上次郎氏との対談書評を連載。「このミステリーがすごい!」大賞選考委員のほか、各種小説賞の選考にも多く関わる。個人サイトの日記にも文学賞ネタがたくさん!


こんな感じで対談してます
(本文からちょっとだけ)

ROUND1 
純文学新人賞の最高峰は、本当に芥川賞なのか?>

豊崎 わたしは、吉村萬壱さんは二〇〇一年に文學界新人賞をとった「クチュクチュバーン」(92回)のほうが断然レベルが上だと思いますね。でも、これだと前衛過ぎて芥川賞は狙えない。日本ファンタジーノベル大賞でもおかしくないような作風ですからね。
大森「クチュクチュバーン」ならSF新人賞でもおかしくない。まあSFとしてはそう高い点はつけられませんが……。「ハリガネムシ」は嫌いじゃないんだけど、「こう書けば文学?」みたいなところがちょっといや。黒沢清の最近の映画といっしょで、メタファーが露骨すぎる。文章の密度は前作より向上してるけど。
豊崎 ここまでわかりやすくすりゃあ、いくらなんでも宮本輝でも読めるだろうみたいな。とにかく今、芥川賞の行方を左右してるのは宮本輝なんですよ。とりあえず、テルちゃんに読ませなきゃいけないわけ。テルちゃんでもわかる日本語、テルちゃんでもわかる物語、それが芥川賞への近道(笑)。
大森 いきなりそこから行きますか!

ROUND2 
エンターテインメント対決!直木賞VS山本賞


豊崎 しかし村山由佳の『星々の舟』(130回)が受賞するとは! ねえ、なんで今さらああいうものにやるの、ねえねえねえ?
大森 村山由佳に授賞すること自体はいいと思うけど、なんでわざわざこういう作品に……。
豊崎 ひとつの家族の歴史を構成員それぞれの視点で綴った短編を連作にしてまとめてる作品です。これまでに幾度も、しかももっと高度な形で提出されてるありふれた手法をじぶんは使ってる、だから厳しい目で読まれるんだぞっていう畏れや緊張感が稀薄過ぎですね。文章も歌謡曲みたいっていうか……。
大森 ものすごくベタ。出来の悪いテレビドラマみたい。
豊崎 恥ずかしくなるくらい手垢まみれのな比喩を使ってるんですよね。こういうのに受賞させちゃうってどうなのかなあ。前回受賞作なしだったからどうしても二つやらなきゃいけなかったとか?

ROUND3 
文芸誌主催の新人賞、えらいのはどれ?

大森 綿矢りさは「蹴りたい背中」で大化けした。デビュー作であれだけもてはやされて、写真もばんばん出て、大学も入って、順風満帆な人生なのに、それであんな意地悪な小説を書けるのは立派としか言いようがない。ただものではない。
豊崎 下手な書きかたしちゃうと、低レベルのいじめ話か、つまらない恋愛小説みたいになって閉じちゃいそうな話を、絶妙に開いたまま上手に物語を手放してる器量には舌を巻きます。
大森 ふつう、いじめてるうちにだんだん好きになるっていうラブストーリーになりそうなのに、ならないんだよね。とてもとても、容姿に恵まれた人が書ける小説じゃないよ(笑)。(作品は)すごく性格が悪い感じで末頼もしい。
豊崎 大森・豊崎共に花マル印の綿矢りさは、将来有望です(笑)。古谷実の「稲中卓球部」みたいなノリの作品でデビューした鹿島田真希さんも好きなタイプなんですけど、こういう特殊な作風の人は舞城くんみたいに波状攻撃を仕掛けて認知度を高めないと。寡作じゃ忘れられちゃう。中編でも短編でもいいから、三ヶ月に一編くらいは発表しないとダメ、ていうか出版社も責任をもって発表させないといけない。
大森 綿矢りさも二年間なにも書いてなかったじゃん。
豊崎 あれは受験勉強してたからしょうがないんだよー。
大森 受験勉強中のほうがふつう書きたくなると思うけどなあ




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