『文学賞メッタ斬り』ができるまで


大森望、豊崎由美という組み合わせで文学賞について語ってもらったらさぞ面白かろう。そんな発想で、2003年6月、読書サイト「エキサイトブックス」の「ニュースの本棚」というコーナーで、「文学賞メッタ斬り!」という企画をやりました。正直、文学賞にまで興味をもつ人ってどれだけいるのかな? と不安もあったのですが、フタをあけたら、「よくぞいってくれた!」と数々の有力読書系テキストサイトのみなさんを中心に大歓迎され、未曾有のアクセス数を記録しました。まずはここを読めば、本書のノリをわかっていただけると思います。
エキサイトブックス2003.6/12ニュースな本棚「文学賞メッタ斬り!」

なによりふたりの語り口が冴えておりました。文学、文壇、文学賞を支えているなんだかよくわからない「権威」(抵抗勢力といってもいい)。そこを明るく蹴っとばし、選考委員システムの是非をシビアに問い、本当に価値のある賞を、小説という表現をこよなく愛する読書家のたしかな目で、読者のために判定する。その態度が強い支持を得たのでしょう。そんな反響の大きさにPARCO出版のM川さんから単行本化の声がかかり、ぜんぶ新しく語りおろして、約半年をかけて完成したのがこの本『文学賞メッタ斬り!』です。

ひとめでわかる文学賞マップを地道に作成中(所要時間4時間)

エキサイトブックス掲載時の方針をそのままに、言いたい放題は更にパワーアップ! 原稿まとめながら何度もわらったりうなづいたりしました。392P(これで1600円は安い!)、どこを切っても痛快です。

芥川賞や直木賞のような有名な文学賞を検証する章はもちろん、ふたりが評価するメフィスト賞や日本ファンタジーノベル大賞の章の語りの熱さも読みどころです。対談が終わってもまだまだ話したりなくて、註欄でも舌戦が繰り広げられてたりするのも楽しい(まさに場外乱闘)。

対談はのべ百時間、準備した資料の量については、考えただけではきそう(笑)

そして、なんといっても圧巻は、巻末の「文学賞の値うち」。2003年〜2004年の文学賞受賞作品を100点満点で大胆に採点しました。 これは必見! もちろん『蹴りたい背中』『蛇にピアス』も採点。何点でしょう、当てられたら、エライ!
編集担当/アライユキコ

もくじ


じめに・ひと目でわかる文学賞マップ 大森望

ROUND1 純文学新人賞の最高峰は、本当に芥川賞なのか?
ROUND2 エンターテインメント対決!直木賞VS山本賞
ROUND3 文芸誌主催の新人賞、えらいのはどれ?
ROUND4 選考委員と選評を斬る!
ROUND5 傾向と対策の砦、江戸川乱歩賞
ROUND6 ミステリ系老舗新人賞はどうなっている?
ROUND7 ホラー小説大賞とホラサスの底力
ROUND8 注目度NO.1 メフィスト賞から《ファウスト》へ
ROUND9 続々登場! 新興エンターテインメント新人賞の勝ち組は?
ROUND10 世界文学に最も近い? ファンタジーノベル大賞
ROUND11 ようやく夜が明けてきた? SFの賞事情
ROUND12 ベテラン作家対象の文学賞の違いって何?
ROUND13 新文学賞の提案、地方賞で文学賞甲子園!
ROUND EX.第百三十回芥川賞・直木賞受賞結果を緊急対談

対談を終えて 豊崎由美

巻末特別付録 '03〜'04年版・文学賞の値うち

COLUMN1 海外文学賞事情〜主流小説編
COLUMN2 海外文学賞事情〜ジャンル小説編
COLUMN3 授賞パーティってなにやってるの?
COLUMN4 ライトノベルの賞事情
COLUMN5 海外のおすすめ受賞作品

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