私が、毎年苦労するのは、樹液がでているコナラの木を探す事です。
クヌギの木は、樹皮のメクレがあるのを探しておけば、枯れない限りほぼ毎年のように
樹液をだすので時期がくればそれほど苦労はしません。ボクトウガも環境が変わらない限り
きっと同じ木をえらんでるのかもしれません。
でもコナラは、毎年のように樹液をだす木が変わったりします。
とくに樹皮の傷が大きかったりすると、翌年は枯れてしまったりしていることが多々あります。
なのでシーズン前の下見はかかせません。

毎年、4月の終わり頃から雑木林を観察していると、最初に樹液が出るのはコナラの木です。
クワガタムシを飼育産卵させた事があるかたでしたら、コナラとクヌギの樹皮の厚さの違いに気がつくと思いますが
コナラの樹皮はクヌギの樹皮の厚さとは比べものにならないぐらい薄いです。
そのせいか雑木林では、コナラの木がいち早く樹液を出し始めます。

樹液が出始める一つの要因としてオオスズメバチ、キイロスズメバチなどが関わっています。
彼らは何を基準にコナラの木を選んで囓るのかさっぱりわかりませんが、この木と決めるとただひたすら一点を囓り始めます。
シラカシの樹液も大抵はスズメバチが関わっています。

写真右上のコナラ
こんな普通のコナラの木が2.3日で突然樹液酒場になったりします。
スズメバチなどの外からの単純攻撃だけでは考えにくく
キクイムシ類の中からの作業がないと樹液がでる状況がすぐにできる
ということはないと考えられます。

写真右のコナラは、右半分に樹液 左半分が白いおがくずみたいなのが
ついていて根元に大量の木くずがたまってます。
このコナラの左側は、キクイムシよってナラ枯れを起こしていると思われます。
木にキクイムシ(カシノナガキクイムシ?)が穿入し樹液内部で
ナラ菌を培養・繁殖することで樹を枯れさせる現象です。
半分が枯れ、半分が生きてることを見ると、コナラが侵入してきた菌に
懸命に抵抗しているようにも見えます。
菌に打ち勝ってる所から樹液がでてる状態と考えられます。
残念ながらこういう状態になるとその年の夏は、短期営業の甲虫酒場が
オープンしますが、翌年には枯れており閉店状態になってしまいます。
しかし、毎年同じ森で昆虫採集してる方ならわかると思いますが、翌年には
必ずその木の近くでまた同じ状態のコナラを木を見つけることができる
と思います。それは、飛び立ったキクイムシが、近くのコナラに穿孔した
のではないかと考えられます。
 
 
 囓り始め  きれいに傷が・・・
2009年4月 スズメバチが雑木林に現れ、最初にし始めた事は樹皮をかじる事でした。 
ほぼ1日で樹液がしみ出るくらい深く囓ります。以前は、スズメバチも樹液を吸ったり分泌物を囓っているだけかと思ってました。

2010年、今年もやっとスズメバチが現れました。樹液が一切でてないコナラにポイントをしぼり一心不乱に囓り始めました。
   
 2010/5/4 12時頃  2010/5/5 1時頃

   
   2010/5/5 8時頃  2010/5/6 8時頃
樹液がしみ出てきました。どこから嗅ぎつけてきたのか ヨツボシケシキスイが集まりはじめ、コクワガタまでも登場。コナラの樹液にはケシキスイも一役かっています。

   
 2010/5/8 8時頃  2010/5/9 10時頃 
樹液が出始めている場所にスズメバチの仲間たちも集まるように・・・。 
   
  2010/5/10 8時頃   2010/5/11 8時頃
完璧なな樹液酒場のできあがりです。ただ、クヌギとは違いオープン期間は短いです。樹木の自己修復機能が働き傷がすぐにふさがってしまいます。 

樹皮に傷がつくと必ず樹液がでるのだろうか? 
  左の写真は、誰かが意図的に傷をつけたコナラ 5月

傷がつけられてから2週間ぐらいたちましたが、いっこうに樹液はでません。
外樹皮が剥がれ、材まで見えてるのですが樹液はでていません。
雑木林では、よくこのような光景はみかけるのですが、なぜ出ないんでしょう?
5月ですから葉もしっかり開き、養分も作られている時期だと思います。
材が見えてるということは、形成層、師官まで届いているはずですから
葉からできた糖分も降りてきていると思うのですが・・・
少なくともシミチョロぐらいでても・・・。
それとも樹液は完全に導管まで傷が達してないと出ないのだろうか?
でもそう考えるとスズメバチが傷をつけたくらいで樹液が出るのはおかしい事になる。
スズメバチは、樹液がでるコナラの木がわかってるということなのだろうか・・。
またはコナラの樹皮の内側に潜む潜行虫の存在場所でもわかってるのだろうか?
コナラの木とスズメバチの組み合わせ まだまだわからないことだらけです。


師官・・・・葉で作られた栄養分がおりてくる道
導管・・・・根からすいあげられた水分類の道

その他、スズメバチに関係なく樹液を出すコナラの木もあります。 
   
昨年の樹液痕が残ってるのでこういう感じのコナラは、わかりやすいですね。 黒いシミらしき痕があったらちょっとたたいて、軽い音がしたら可能性大
中を潜行する昆虫がつけた傷からでたりします。
   
カミキリの産卵痕、脱出痕がある樹木は、枯れてなければでることがありますが、表に出ず中側だけに出てることもあります。

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