大橋薫の妊娠生活........それは常に不安で心細くて孤独な戦いでした。 もう周りは全部敵だ!!なんて大袈裟だけど、あまり味方はいなかった。マミたんくらいかな。真剣に味方だったのは。 裁判終わったばかりでびくびくしてたし。だって素直に反省してくれるような人間じゃないもん。(だったら裁判なんてしない)逆恨みで何かされるんじゃないかって、常に危険感じてた。夜道はマジに警報機とか、カメラとか携帯電話手放せなかった。 編集部にも秘密で仕事してたし、両親も口開けば「仕事辞めろ!」って言うし、夫は単身赴任でいなかったし.......... とにかく神経質になってた。内緒だって言ったのに誰かに話す奴もいやがるし..... 言い訳は「おめでたいことなんだからいいじゃないか」ばかり。嫌なの!! どうせ言うなら自分の口から言うよ!軽い気持ちでぺらぺらと話題提供したり、酔っぱらって噂しないでほしい。私の知らない人がどうして私の超プライベートな人生の一大事知ってるの?いきなり久しぶりの人や知らない人から「妊娠してるって?」なんて言われるのはとても不愉快だわ。(しかも男)ぷんぷん。 はっ!思い出し怒りしちゃった。ふぅ。 一人で暮らすのも生まれて初めてだったしね。 気楽だったけど、何かあったらどうしようって寝る前の戸締まりに悩んだものだ。 内鍵をかけるかどうかでね。もし意識不明になんかなったら誰も入れないじゃン。 でも鍵一つじゃちょっと心配......阿呆みたいだけど毎晩真剣に悩んでた。結局かけたけどね。食べるものはとにかく手抜きしまくった。文句言われない生活っていいなぁ。 でもゴミ出しやお風呂掃除、重い買い物はつらかった。でかいゴキブリ出た夜には本当に泣きそうになっちゃった。ははは。今では良い思い出.......? 妊娠につきもののつわり。 私はコーヒー、インスタントカップ麺(とくに焼そば)、香水(とにかく化粧関係の良い匂い)、おでんとかのだし、イカ焼きとか......当然生ゴミもダメ。 あまり吐くことはなかったな。空腹がダメでいつもパンとかもぐもぐ口に入れてました。バターの匂いのする焼き立てパンが救世主だったわ。ひどいときはビニールに入れて匂い吸ってた。(笑) でもやっぱり仕事が効いた。原稿に没頭してると全然平気なの。不思議。 漫画描くことは私の精神安定剤でした。 こうしてみると、私のつわりはたいしたことなかったのかな? でも!! 男の人に「平気平気、病気じゃないんだから。」とは言われたくない!! いつも乗り物酔い状態で、身体だるくて重くて眠くて気持ち悪かったんだから!! 殿方って結構妊婦さんにきつい。 自分の奥さんでもないのに(きっと奥さんには言わないんだろうけど)やめてよ! 妊婦は本当に不安なんだから。無神経なことは冗談でも言わないように。 私、妊娠中言われたこと、多分一生忘れない。他の妊婦さまもそうでした。 ここで例をいくつか。 友人はやっと妊娠してそれを告げた時、夫の男友達から「他人の子供は責任ないから、楽しんで俺が躾けてやるよ。」と言われて激怒してました。 この友人は虚弱体質で、医者から二十歳まで生きられないとまで言われてたのに、頑張って出産を決心なさったの。無事に産めるかどうか、今でも不安だそうだ。 別の妊婦さまのお話。(もう御出産しました。)やはり夫の男友達の発言。「女の子ならいいだろ。(旦那さんは男の子を望んでいた)俺に調教させろ。」 知り合いから。やはり旦那さんの男友達が生まれる子供の名前を肴にお酒飲んでて、もう奥さんが聞くに耐えない名前だらけだったとか.......... そして私のお話。 確かに旦那も「蛙みたい」とか、「タヌキみたい」とか言ってむかついた。でもそれよりも、旦那の親戚の殿方が、もうすぐ生まれるねという会話をしてた時に、「分からないよ。生まれてこないかもしれない。」って言ったの!!どういう意味じゃ?200字以内にまとめて言ってみろ!! 悲しいかな、私も含めてどの妊婦さまもその時は何も言えないの。 ただショックで、悲しくて、かばってもくれない旦那を睨むだけ........... 男の人って本当にダメね。でも仕方ないか。男は黙ってたって父親になれるもんね。つわりも流産も陣痛も出産も後産も悪露も授乳もないもんね!! 確かにすごく優しい旦那さまもいるんだろうけど、少ないだろうな。 うちの父だって、私が妊娠中毒症で絶対安静なときに、「ただの運動不足だ。バケツに水汲んでそれ持って近所走れ!!」って言ったもん。入院寸前だったんだぞ。 ふんだ。 殿方は陣痛と出産の痛みに耐えられず、失神するとか。 もう少し妊婦さまに気を使ってね。独身の人には難しいかもしれないけど。 それに比べておばさまたちは優しかったわ。やっぱり同じ女よね。うんうん。 昔、会社通勤途中に妊婦さんが倒れて、それをまたいで急ぐ男の人たちにひどくショックを受けた。そして助け起こしてくれたのはやはり年輩の女性でした。 自分が妊婦になって初めて、私も妊婦さんやお子さん連れのお母さんに目を向けました。 それまではほとんど気にしてなかったけど、ちょっと優しい気持ちになります。 妊婦さん相手にふざけるのはやめましょう。叱るのもだめ。 ただ優しくしてあげてください。 確かに病気じゃないけど命落とすことだってあるんです。その時に後悔するのは嫌でしょ? 流産の危険だってあるし.....ね。 私も2回ほど出血して流産止めの注射や薬を飲んでました。 ちょっと座布団またいだだけで!びっくりした。ドラマとかだと妊婦走ってるのに。あと、お腹摩っちゃダメなんだって!知らなかった。 単身赴任中の旦那は結構優しくて、週末には必ず小田原から帰ってきてくれて、そして産婦人科へ付き添ってもくれた。出血した時にも付き添ってくれて、医者が旦那を見て一言。「セックスは激しいのは禁止ですよ。」 旦那は体型良いので誤解されたらしい。怒ってました。(笑) そうそう、妊娠中はおしゃれできなくて悲しかったな。体型も変わるし体重も増えちゃう。(胸は大きくなったぞ。)似た顔してるマミたんは婚約中でおしゃれ絶好調だったしね。産んだら絶対おしゃれするぞ!!って思ってたのに....... 髪も切って、Gパンばかりの現在の私。妊娠中の方がおしゃれだったかも。ちゃんと髪編み上げてマタニティとはいえ、スカートはいてたもんね。
今は無事生まれましたが....... こうして振り返ると、もう少し気楽に妊婦生活楽しめば良かったなんて思っちゃう。 でも生まれるまでは安心できないよね。案ずるより産むが安しとは言ってもね。 何かあったらたいてい母親の所為にされるし。 うちもアトピーとか喘息とか心配です。 他に、命に別状はないけど3歳までに手術を主治医から勧められています....... いろいろあるよね。これからも。 妊婦生活、私はどたばたしてたけど体験できて良かったかな? 皆様は無理せず楽しんで下さいね。
98年冬