ハードウェア ディジタル回路の基礎
digital (橋本さんの原稿を鈴木がHTMLにしました)
1.アナログとディジタル
(1) 信号の形

電気で情報を記録・伝達する方法にはアナログとディジタルの2方式がある。
・アナログ信号 データを連続した量として扱う。
例 電話(アナログ回線) ・・・ 電気信号の波の形
アナログレコード ・・・・ 刻まれた溝の形
カセットテープ ・・・・・ 磁気の強弱の変化
・ディジタル信号 データを数値化(普通は2進数)して扱う。
例 電信(モールス信号) ・・・ 短点と長点の組合せ
CDやDVD ・・・・・・ ピット(光を反射する)の長短の組合せ
FDやHDDやDV ・・・ 磁石のNSの向きの組合せ
(2) AD変換とDA変換
適当な方法を用いるとアナログ→ディジタル、ディジタル→アナログの変換ができる。
@AD変換
a)標本化
・グラフ(アナログデータ)を「適当な」時間間隔ごとに読み取り、
「適当な」桁数の数値(ディジタルデータ)にする。
・数値化する時間間隔によってデータは大きく変わる。
1秒間に標本化する回数をサンプリングレートという。(単位Hz)
サンプリングレートが大きい方がデータの質は高い。だが、それだけ多くの手間がかかり、処理が難しくなる。
やってみよう
上の図の標本化されたデータ(棒グラフ)の頂をつなぎ、それぞれ元の曲線が再現できるか試してみよう。
注) グラフは折れ線でなく、なめらかな線で結ぶ。
・標本化されたデータを数値(2進数)化すると、

ディジタルデータとなる。
何Bitの2進数にするかが、重要になる。
やってみよう
下の図は、前のページで標本化したデータを拡大してある。
各データを3bitの2進数に量子化してみよう。
注) 目盛の間にくるデータは、近い方の値とする。
4,5,6番目のデータは、実際には少し差があるのに、同じ【 】(2)となる。
すなわち、元のアナログ信号と、ディジタル信号に違いが生じていることになる。
量子化の際に生じるこの差を量子化雑音という。
縦軸を細かく区切れば(bit数を多くする)、量子化雑音は減少する。
・サンプリングレートが大きく、量子化bit数が多いほど、質の高いディジタルデータになる。
しかし、処理が大変だ。機械の値段も高くなる。
実際の例(音の信号)
サンプリングレート 量子化
電話回線(ISDN・携帯) 8kHz 8bit
衛星放送(Aモード) 32kHz 12bit ただし4ch送信できる
CD(音楽用) 44.1kHz 16bit
DAT・衛星(Bモード) 48kHz 16bit
電話回線でいえば、8bitのデータを1秒間に8000回送っていることになる。
すなわち、1秒間に「0」か「1」を【 】×【 】=64000個送る速さである。
↓
64kbps(64キロビットパー秒)
ADA変換
・数値(ディジタルデータ)を方眼紙にプロットするとグラフ(アナログデータ)ができる。
これは量子化の逆の操作である。
やってみよう
次の2進数データを3bitずつに区切り、10進数に直してグラフ化してみよう。
「001000001011110111100010011101」
(3) 信号と雑音(ノイズ)
あらゆる信号は、ノイズにより変形させられてしまうものである。
・ディジタル信号は修復が可能 ←信号の形そのものの意味は小さい。
情報の中身は変化しない。
・アナログ信号はもとの形に修復できない←信号の形そのものが意味を持っている。
(4) コンピュータと信号形式
コンピュータ(ディジタルコンピュータ)の中では、命令やデータはディジタル信号(0と1)で表される。なぜならば、電気の世界ではアナログ信号の形を正確に伝える回路をつくることは大変に難しい。例えば、オーディオアンプは高級なものほど正確な信号を伝えるように設計されているので、とても高価なものになる。アナログコンピュータをつくったとしてもとても高価になり、性能はディジタルコンピュータに及ばないだろう。
ではディジタル信号の場合はどうかというと、上にあるように多少の雑音でも情報は伝えられる。信号の1と0を電気では、電球の点灯・消灯、電圧の高い・低いなどスイッチのonとoffに対応させられる。スイッチ1つを1bitの情報に対応させるのである。ただ、このスイッチを人間が手で操作していては大量のデータを高速に処理することはできないので、電気的に動作するスイッチを使う。多くのスイッチを使い(8bit→16bit→32bit)、それらをものすごく速く動かす(数MHz〜数百MHz)ことで、ディジタルコンピュータはデータを素早く処理している。つまり、コンピュータ(の心臓部)はスイッチの集まりなのである。
コンピュータに使われてきた電気的スイッチの歴史
・リレー(継電器)
・真空管
・トランジスタなどの半導体部品
問 コンピュータができる以前から、人間はいろいろな計算器を利用しており、それらにも
アナログ方式とディジタル方式があった。『計算尺』はアナログ式の計算器で、桁数は
少ないが平方根(root)・対数(log)などの計算もできる。では、紀元前より存在していて
数桁〜20桁くらいまでの10進数の計算ができる、ディジタル式手動計算器といえば、
一体何のことであろうか。