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マーラーの交響曲第1番の新校訂版

フルートソロ(3楽章、14番の4小節目)


 譜例を見てください。2拍目裏の八分音符が「新校訂版」のスコアではcesからesに変わっています。ところが、この変更は「正誤表」には記載されてはいないのです。もちろんパート譜もcesのままです。
旧版(1967)
新校訂版(1992)
というわけで、この変更はもしかしたらスコアのミスプリントという可能性も考えられなくはないのですが、「新校訂版」の印刷原版を作成する際には、旧版の版下をそのまま使用して、訂正箇所だけ書き加えたり書き換えたりするという方法がとられていますので、きちんとした意志がなければこういう改変は出来ないはずなのです。さらに、「正誤表」を翻訳していて気がついたのですが、「正誤表の正誤表」が必要になってくるほど、間違いが多いのです。(10箇所以上の誤りが発見できました。)ですから、やはりここはesに直すのが正解のような気がします。
私自身は、実際に吹いていて旧版のこのcesは非常に気持ち悪い感じがしています。最初に吹いた時はまちがったのではないかと思ったぐらいですから。

ちなみに、「新校訂版」が出版された後に行われたコンサートでこの2箇所がどのように演奏されているのか調べてみたところ、次の6つのケースは全て旧版のままでした。
9239日 ジュゼッペ・シノポリ指揮 ウィーン・フィル
94131日 ベルナルト・ハイティンク指揮 ベルリン・フィル
95526日 若杉弘指揮 NHK交響楽団
96118日 ズビン・メータ指揮 NHK交響楽団
96121日 ガリ・ベルティーニ指揮 シュトゥットガルト放送交響楽団
9728日 ピンカス・スタインバーグ指揮 NHK交響楽団
さて、末廣さんはいったいどのような選択をされるのでしょうか。

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