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00/9/30 作成)

00/10/12掲載)

[ヴェルディの全オペラ]


ドン・カルロの肖像画
 オペラの世界に色恋はつき物、どんなオペラだって、元を正せば単なるラブストーリーです。いや、「単なる」などと一まとめで片付けることが出来ないほど、恋愛業界には多くの商品が出回っているからこそ、あれだけ多種多様の物語が展開されるのだと言うべきかも知れませんね。
 今回のアイテム「ドン・カルロ」では、さまざまな愛の形が繰り広げられます。それを「相関図」にしてみました。

ただの直線は血縁や婚姻関係、矢印は特別な感情の方向を示します。

 ここでのポイントは、ドン・カルロとロドリーゴの間の「友情」。第2幕(5幕版の場合)第1場の最後に歌われるこの二人の有名な二重唱の歌詞から単なる友情以上のものを感じてしまうのは、間違ったことでしょうか。
神はわれらの心に同じ炎をともされた
同じ自由へのあくなき愛を
同じく自由への高められた愛を
二人の誠実な愛を兄弟の愛に変えた神よ
二人は愛しつつ死ぬという誓いをどうぞお受けください。
 同じメロディーを、2回目にSotto Voceで歌うところの細やかな感情表現には、「友情」を超えた切ないものがあると思うのですが。
 ところで、最初このオペラは、パリで上演するために台本はフランス語で書かれ、様式も「グランドオペラ」でした。したがって、タイトルもフランス語表記で「ドン・カルロス」。のちにヴェルディはイタリア語の「イタリアオペラ」にするために、大幅な改訂を行います。それが、現在普通に演奏される「ドン・カルロ」です(「ヴェルディの全オペラ」を参照してください。)。
 最近の原典版見直しの時流に乗って、この作品も最初のフランス語版についての研究も進み、1996年にはパリのシャトレ座で、この初演の形にかなり近い形に復元されたものが上演されて、それをビデオで見ることが出来ます。もちろんCDも出ています(EMI CDS 5 56152 2)。そのビデオで、この「友情の二重唱」を聴いてみると、メインの部分は殆ど変わっていないようですが、二重唱に入る前のシェーナでのソリストのメロディーやオーケストラがずいぶん違っています。(その辺の改訂の詳細に関しての説明は、とても私の手には負えませんので、もっと高いオタク度の方面にお任せということで。)
 ちなみにこの上演、演出はリュック・ボンディという方ですが、ドン・カルロとロドリーゴのとらえ方が私と同じYMCA、あるいはBlue Oyster系。ロドリーゴ役のトーマス・ハンプソンなどは、いかにもという妖しい雰囲気がありましたっけ。


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