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(01/10/24作成)

(01/11/6掲載)


オリジナル楽器(英:original instruments
 最近は、お年を召した方が楽器を始めるということが盛んになっています。音楽教室にも、そういう方のための専門のクラスがあるそうで、若い頃に果たせなかった音楽への夢を実現させようというおとうさんたちで、にぎわっているということです(オヤジナラウ楽器)。これはなかなかほほえましいことなのではないでしょうか。どんな形であれ、実際に楽器に触れる機会があれば、それだけ、音楽の楽しさを体感できるのですから。ただ、管楽器などで下腹部に異常な圧力を加えると、「オレジニナル楽器」になってしまいますから、その辺はご注意を。

 バカな話はそのぐらいにして、本題に入りましょう。オリジナル楽器というのは、「作曲家がその曲を作ったときに使われていた楽器」という意味です。ですから、厳密なことを言えば、バッハの時代のオリジナル楽器とモーツァルトの時代のオリジナル楽器とでは異なったものになってくるわけです。オリジナル楽器のことを別の言い方で「古楽器」とか「ピリオド楽器」と呼ぶことがありますが、そういう意味で、私自身は「古楽器」というおおざっぱな言い方にはちょっと抵抗があります。「ピリオド楽器」ならば「その当時の楽器」という意味なので何の問題もありませんが。

 では、具体的に、ヴァイオリンの場合、オリジナル楽器が現在使われている「モダン楽器」と比べてどのように違っているのか、見てみましょう。左がオリジナル、右がモダンです。
 外見で分かる相違点は、
 1.指板の長さ
 2.駒の高さ
 3.テールピースの形
 4.顎当ての有無(モダン楽器には、さらに肩当てが付きます。)

ぐらいでしょうか。
 さらに、分かりづらいかも知れませんが、オリジナル楽器では指板は本体にほぼ平行になっていますが、モダン楽器では、駒が高くなった分、指板に角度がついています。そのほかにも、弦の材料が、オリジナルは裸のガットですが、モダンはその上に金属を巻きつけてあります。
 外見だけでなく、楽器の内部構造も異なっています。まず、G線の下のあたりを裏側から補強しているバスバーの長さ、それから、魂柱の太さ、これらが、モダンではオリジナルより大きくなっています。
 ちなみに、そばに置いてある弓を比べてみても、その違いが大きいことに気付かれることでしょう。

 これらの変化というものは、かつては宮廷のサロンなどでごく限られた聴衆を相手にしていた音楽が、次第に大きなコンサートホールで演奏されるようになっていく過程で生じたものです。弦の張力を上げてより大きな、遠くまで届く音を出すために、駒が高くなり、それに応じて指板に角度が付きました。それに伴い、バスバー、魂柱のサイズも大きくなりました。また、音域を広げるために、指板の長さが長くなったのです。
 現在名器と呼ばれているアマティとかストラディヴァリといったヴァイオリンも、作られた当時は「オリジナル」でしたが、時代の要求に沿って、後世の職人の手によって「モダン」に改造されていました。近年のオリジナル楽器復興の波に乗って、これらの楽器の一部は再度改造されて、「オリジナル」となったのです。

 管楽器の場合も、オリジナル楽器はピストンやキーを使わない単純なものでしたが、均質な半音階や大きな音を得るために、改良が加えられて、現在の楽器になったというわけです。

 楽器の改良というものは、音楽の様式とは不可分のものでした。したがって、作品が生まれたのと同時代の楽器を用いて演奏するということは、ある意味では理にかなったことです。しかし、本来数十人の聴衆を相手にすればよかった楽器が、2000人収容の大ホールで使われるような状況は、オリジナル楽器にとってはつらいものがあります。楽器と同様、オリジナルなアコースティックスというものも、これからは求められていくのかも知れません。

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