(01/8/14作成)
(01/8/28掲載)
レーベル(英:label)
牛肉をさっとゆでて、冷やして食べる料理(それは冷しゃぶ)ではなく、その牛の首にかかっている鈴(それはカウベル)でもなく、それだったら、えーいっ、スイスの牛飼いの歌だぁ〜っ(それはヨーデルだって)。
あいにく、「レーベル」というのは、牛には全く無関係、しいてつながりを見つけるとすれば、「牛缶」でしょうか。今の缶詰は、缶の表面に直接印刷されていますが、かつては印刷した紙が貼り付けられていたものでした。紙ラベルというやつですね。そう、「label」というのは、まさにこの「ラベル」と同じものなのです。
もともとは、エミール・ベルリーナが発明した平板レコードに、録音内容を記録するために貼り付けられた丸い紙です。78回転盤からLPへとフォーマットが変わっても、外見上は全く同じものでした。その役割も同じ、曲目、演奏者、レコード番号などが記入されています。そして、これが最も重要なことなのですが、この「レーベル」が発信するもっとも大きな情報は、そのレコードの録音を行った会社の名前だったのです。多くの場合、レーベルにはその会社のシンボルとなるマークが大きくデザインされていて、パッと見ただけでどこの会社の製品かがすぐ分かるようになっていたのです。
これが転じて、物体としてのレーベルではなく、そこに包含される情報として「レーベル」という言葉が使われるようになってきます。つまり、そこにマークが印刷されているレコード会社自体のことを「レーベル」と言うようになったのです。
やがて、レコード産業が拡大してくると、この「レコード会社=レーベル」という構図は、もっと複雑な様相を呈してきます。1つの会社でも、ジャンルやターゲットによって複数のレーベルを持つ場合(例えば、ドイツ・グラモフォンの中のアルヒーフ)、会社の合併、吸収などで、同じグループ内に異なるレーベルが混在する場合(そのドイツ・グラモフォンがおかれている、ユニバーサル内の立場)、あるいは、それらとは逆に、別々のレーベルだったものを統合して、大きなレーベルとするような場合(EMIですね)など、実に様々なパターンが存在しているのです。
現在、世界の録音産業と言うのは、5つの大きなグループと、それ以外のものとの2種類で構成されています。大きなグループを構成しているレーベルのことを「メジャーレーベル」、それ以外を「マイナーレーベル」と言ったりしていますが、それも便宜的なものに過ぎません。例えば、WARNERグループに属しているFINLANDIA、NONESUCHなどは、もともとはマイナーだったものがメジャーに吸収されただけで、現在も独自のレパートリーを持っているわけですから、実態はマイナーレーベルと言えるでしょう。
ちなみに、「5大メジャー」というのは、次の5つです。
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(06/5追記)
現在では、BMGとSONYは事実上合併してSONY/BMGとなっています。従って、「4大メジャー」ですね。
(11/12追記)
その後、SONYはBMGを買収、さらにUNIVERSALがEMIを買収するという事態になり、現在では「3大メジャー」となってしまいました。
LPからCDに変わり、「レーベル」は文字通り実体を無くし、抽象的な概念に過ぎないものになってしまいました。そのあたりの経過を、クラシックの代表的なレーベルである「ドイツ・グラモフォン」を例にとって、検証してみましょう。
これが、本来のレーベル。「Deutsche Grammophon」というロゴが、大きく印刷されています。
LPのレーベル
CDに変わって、とりあえずLPと同じコンセプトをCD面いっぱいに盛り込んでいます。ロゴマークの大きさは23mmx40mm。
第1期CD(1983-1986)
ロゴマークが少し小さくなりました(19.5mmx34.5mm)。
第2期CD(1986-1999)
ロゴマークがさらに小さくなって14.5mmx25.5mm。
第3期CD(1999-)
この頃になると、統一されたデザインではないピクチャーCDが出始めます。こうなると、ロゴマークの大きさは12mmx21.5mm。ほとんど目立ちません。
初期ピクチャーCD
ロゴマークは9.5mmx17.5mm。もはや、ほんのワンポイントです。
現在のピクチャーCD
いかがですか。「紙ラベル」であった「レーベル」が実体を無くすと同時に、デザイン面では、より自由度を高めるためにロゴマークが縮小の一途をたどるという、極めて分かりやすい相関関係が見て取れるのではないでしょうか。
最後に、1995年からリリースされた、「オリジナルス」というリマスター盤です。最初に発売された時と同じレーベルが復刻されています。一番上のLPより前の時代のデザインで、ロゴも「Deutsche Grammophon Gesellschaft」と、1行多かったのですね。「DG」ではなく「DGG」と言っていた頃のLPの現物をお見せできればよいのですが、ご存知のようにまだ私は生まれてなかったものですから、そんなものは手元にはありませんでした。残念ですね。
オリジナルスCD