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チャイコフスキー/交響曲第4番の場合


■ヘミオレ
ギリシャ語で「一つ半」というのが、もとの意味です。別の言い方をすれば2:3ということで、中世の定量記譜法で音符2つの長さの中に音符が3つ入った状態を指し示します。具体的には〔譜例1〕のように付点二分音符2つが3つの二分音符になる形です。さらに〔譜例2〕のように付点二分音符を3つの四分音符にわけると、〔小さな3拍子〕×2+〔大きな3拍子〕×1となります。これがヘミオレの基本形です。
このリズム・パターンは、中世、ルネッサンスから現代にいたるさまざまな曲の中に現れてきます。
   
〔譜例1〕 〔譜例2〕

実例その1 ルネッサンスのシャンソン
 クロード・ル・ジュヌ/“
Revecy venir du printans”(また春が来た)

実例その2 古典派のメヌエット
 モーツァルト/交響曲第39番のメヌエット

実例その3 ロマン派のワルツ
 ショパン/子犬のワルツ

実例その4 フリアント(チェコのダンス)=〔大きな3拍子〕×1+〔小さな3拍子〕×2
 ドボルザーク/スラブ舞曲作品46の1


実例その5 ウアパンゴ(中南米のダンス)=〔小さな3拍子〕×2+〔大きな3拍子〕×1
 バーンスタイン/アメリカ


実例その6 J−POP
 さだまさし/精霊流し
99/12/6追記
山田晃司さんという方からこの曲の記譜についてのご指摘をいただきました。
さだまさし本人のによる記譜は次のとおりです。もちろん、リズム構造自体には何の違いもありません。

■本題
お待たせしました。そこで、チャイコフスキーの交響曲第4番の第1楽章に登場する「ヘミオレ」についての話になるわけです。
第1主題は8分の9拍子、つまり小節内に3拍子のワルツが3つ入っていることになります。前半の2つの〔小さな3拍子〕が、1つの〔大きな3拍子〕となって、〔大きな3拍子〕×1+〔小さな3拍子〕×1というちょっとアンバランスなヘミオレを形成しています。
展開部の後半にはこれが逆転した〔小さな3拍子〕×1+〔大きな3拍子〕×1という形も登場します。

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