「隊長。誰ですかそれは?」
ユラン伍長はオスカルが見ていた小さな絵を覘きこんで尋ねた。
「ああこれか。これは・・・・」
「こ、子供ですか!」
その時ユランと一緒にいたジャンが大声で叫んだ!
その言葉を聞きつけて、わらわらと他の兵士たちが彼女の側へやってきた。

「結婚してたんですか!」 「た、たいちょう〜嘘でしょう!!!」 「いつ生んだんですか?」 「18歳で?」 「相手の男は!」 「嘘だ!そんなの嘘だ〜」 「あまり似てませんね」

「黙れ!」
オスカルは一喝した。
それから
「私は結婚していない。確かに・・・このぐらいの子供がいてもおかしくない年ではあるがな・・・」
苦笑いしながら付け加えた。
「では誰ですか?」
兵士の一人が尋ねた。
彼女は少し考えて、フッと笑うと 「 My sweet memory 」 と答えた。
「マイスゥイートメモリさん、ですか?」
一人がおずおずと尋ねたので彼女は 「英語だ。」と答えた。

「英語・・・ですか?」 「すると・・・イギリス人ですね。」 「そうか?俺は違うと思う!」 「じゃあアメリカ人だ」

「フランス人だ。・・・誰だか分からないのか?」
彼女は不思議そうに言った。

「黒い髪に黒い目なんてよくいますからね。」 「俺達が知ってる奴で・・・年は13?14歳ぐらい?」 「目の大きなかわいい子ですね。」 「あいきょうがあるな。」 「優しそうな笑顔が女の子らしい。」 「男だろ?」 「女だって!誰だか分かんないけど・・・」

しかし、彼女の問いに誰も答える事は出来なかった。
「・・・私からすると、少しも変わっていないのだがなあ。」
オスカルはとても優しい目をしてくすくすと笑った。
「まあいい。ダグー大佐!」
「はい!隊長!」
「そろそろ整列の準備を。」
「わかりました!整列!着剣準備!各自武器の確認!急げ!」
兵士たちは慌しく動き始めた。
オスカルは絵を大切そうに軍服の内ポケットにしまった。
「着剣完了、整列終わりました!」
オスカルは頷いた。

オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ准将は兵士達に向かって言った。
「はじめにいっておく。なにがあっても、必ずわたしについてきてくれ!いいか・・なにがあってもだ!」