オスカルを見送って、アンドレは扉を閉めた。
それからワインクーラーから壜を取り出すと机の上に置いて、溜息をついた。
「まったく!底なしだな。」
アンドレは呟いた。
結局、あれから二人でストレートで飲んで−大方、オスカルが一人で飲んだのだが−ジンはほとんど空になっていた。
本当に強い酒だ、それなのにオスカルの奴・・・・・・
おれはそんなに飲んでないのに結構きたぞ!
アンドレは頬杖を付きながら、ジンの壜を見つめて溜息をついた。
まあ・・・・寝酒にはよかったのかもしれない。
おれも、今日はここで寝るしかなさそうだし・・・・
アンドレはベットで眠る祖母を見た。
いつも手間ばかり掛けさすが、今夜はいてくれて・・・感謝すべき、かな?

ふと、先ほどの感触が蘇る。
髪に差し入れられた指のひんやりとした冷たさ。
そして息がかかるほど近く、耳元で囁かれた、低くて・・・深い・・・そして、響く・・・・声。
超辛口のマティーニ?
クスリと彼は笑った。
「辛口どころか・・・・・超甘口だぞ。」

アンドレは残ったジンを全部、自分のグラスに注いだ。
グラスの半分も満たしていない液体を見つめる。
“惚れたものに対していくらでも滑稽になれる”
オスカルの言う通りだ。
他から見たら滑稽だろう。
愛しているから。それだけで酔い痴れることが出来るなんて!

マティーニにベルモットは、絶対に必要。
だけど・・・・・
「おれには必要ない。」
ベルモットなどいらない、マティーニなど愛してない!
おれが愛しているのは・・・・
「おまえなんだぞ、オスカル。」
そう言うと、アンドレはジンを飲み干した。