アルカンジェリはモランディを強く押し、モランディは全力を投入して対抗した。そこから得られる情報はアルカンジェリの論評以上の情報量を含み得る。岡田氏はアルカンジェリの論評を丁寧に読み、なぜモランディが激しく「否」と言ったのか、この二者の確執を軸に、その背後のさまざまな力動を丁寧に解きほぐしていく。筆致は論理的で、(自由な形で書かれた)美術論考にしばしば見られる独りよがりな展開への誘惑は注意深く避けられている。
もちろんモランディに対する論評を時代ごとにどのような変遷をとったかを、研究することは、なんら特別なアプローチではなく、邦文に翻訳されたものでも エレーナ・ポンティッジャによる「言語と視覚−バッケッリからアルカンジェリにいたる主要なモランディ解釈のテーマと方向(1918−64年)」という論考がある。